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「真桜お姉さんと激似だな。近くで見た瞬間姉弟って確信持てたわ。」

「…もしかして疑っただろ。」

「うん、ごめん。最初見た時誰だよ?って思った。」


柚瑠を部屋に入れ、電気は付けずに薄暗いまま、柚瑠の身体を抱きしめた。念のため楓ちゃんがこっちに来ても聞かれないように小声で話すと、柚瑠からも小声で返事が返ってくる。


チュッ、と柚瑠の唇に口付けると、柚瑠は俺の腰に手を添えて、目を瞑る。


チュッ、チュッ、チュッ、と何度もキスを続けているうちに、だんだん下半身がムズムズしてきてしまい、そっと柚瑠の身体を押し返した。


「あ〜くそ〜。…やりたい。」


下半身を落ち着かせるためにボフッとベッドの上に飛び乗った。ボフ、ボフ、ボフ、と布団を足で蹴っていると、そんな俺を見て柚瑠がクスクスと笑っている。


「ちょっとぉ〜真桜く〜ん!久しぶりに帰ってきたのに楓ちゃんを一人にしないで〜!!」


1階から楓ちゃんが大声で叫んでいる声が聞こえてきて、その声を聞いてまた柚瑠は、クスクスと笑っていた。


俺の部屋に来られても困るから楓ちゃんが来る前に部屋を出ようとベッドから立ち上がる。

やっぱりもっかいキスしたくて、最後にもう一度だけチュッ、と柚瑠の唇に触れてから、また1階に降りた。


「も〜、なにやってんの〜?早く見なよー!七宮くんもこれ見てるー?」

「え?…あー…アニメは見てないっすけど漫画なら読みましたよ。真桜全巻持ってるよな。」

「うん。」

「え!?真桜くん全巻持ってるの!?ぃよっしゃぁ、あとで読も。」

「お姉さんも漫画好きなんですか?」

「寧ろお姉さんから真桜くんに漫画好きが移った感じ?」

「うん、そう。楓ちゃん少年漫画いっぱい持ってたから。」

「七宮くんバスケ部だよね。……スラムダンクは読んでいるのかい?」

「あー…と、思いますよね。実は俺、読んでないんすよ。」

「えええーーーー!!!!!!」


漫画の話で盛り上がり始めた楓ちゃんは、楓ちゃんの好きなバスケ漫画を柚瑠が読んでいなかったことに驚きまくって、大声を上げながら絨毯の上にひっくり返った。


「嘘でしょ!?バスケ部で読んでない子いるの!?あっあれかな!?ジェネレーションギャップかな!?」

「あひるの空っていうバスケ漫画なら友達に借りて30巻くらいまで読みましたよ。読む機会あれば普通に読んでたと思います。」

「えっあひるの空!?私も読んでるよ!!黒バスは!?」

「…は読んでないっすねぇ。」

「ズコー!!!」


バスケ漫画で盛り上がり始めたと思ったらまたすぐに盛り下がり、楓ちゃんは絨毯の上にごろんごろんと転がっていた。


「くっそぉ…スラムダンク今の家に持ってっちまったぜ…。七宮くんに読ませたい…。」


テレビ画面に流れているアニメそっちのけで楓ちゃんは柚瑠に漫画を読ませたがっており、床に這いつくばってクッと悔しそうに唇を噛んでいる。

恥ずかしい姉の姿を柚瑠に見られてしまい、俺が恥ずかしいけど、柚瑠はそんな楓ちゃんを見てずっとクスクス笑っていた。


その後楓ちゃんはアニメを一から巻き戻して真剣に見始めた。そんな真剣な顔をして無言で見ているのなら、一人で見ればいいのに。


「あー!えっ?やだぁ…!私の推しが…!」


…あ、静かにしてたのにいきなり騒ぎ始めたと思ったら楓ちゃんが好きだと言っていたキャラが敵に倒されてしまったシーンだ。


「え?死んだ???もう見るのやめるぅ〜。」

「死んでないから。ちゃんと見ろよ。」


漫画を読んでいて先の内容を知ってる俺は、簡単に見るのやめるなんて言い出した楓ちゃんにそう吐き捨てると、楓ちゃんは渋々またアニメを見始めた。



アニメが終わるとすぐに楓ちゃんは俺の部屋にある漫画を取りに行き、漫画を抱えてまた降りてきた。


もうリビングで大人しく漫画読んでてくれ、と俺は静かに柚瑠と一緒にまた2階に上がる。


徐々に日が暮れて、さっきより部屋の中が薄暗くなってきたけど電気は付けず、また薄暗い室内で柚瑠の身体を抱きしめる。


柚瑠のTシャツの中に両手を突っ込みながら肌を撫でると、「お姉さん来たらやばくねえか?」と手首を掴まれ、シャツの中から出されてしまった。


「んん…、したい…。」

「また今度な。」


グシャグシャと俺の髪を撫で、チュッ、と軽く柚瑠からキスをしてくれる。尚更したくなってきてしまい、また柚瑠のTシャツの中に手を突っ込んで撫で撫でと肌を撫でてしまった。


せめてキスくらいは、とチュッ、チュ、と自分から柚瑠の唇に何度もキスを繰り返していると、タン、タン、タン、と2階に上がってくる足音が聞こえて来る。


俺は慌てて柚瑠から離れて、ピッとリモコンで部屋の電気を付けた。


シーンと静かだった空間に、バン!と部屋の扉を開けられる音が響く。勿論楓ちゃんが部屋に入ってきた音だ。


柚瑠はベッドに凭れかかり、ボフッと顔を隠すように布団の上に突っ伏した。


「今度はなに?」

「なんで上行くのー!?一緒に遊ぼうよ!」

「漫画読むんじゃねえの?」

「あーだこーだ感想言いながら読みたいの!姉ちゃん久しぶりに帰ってきたんだよ!?一人にしないでよ、寂しいじゃん!」


楓ちゃんはそう言って、1階に連れ戻そうとグイグイ俺の手を引っ張ってきた。


「もう分かったって!行くから!!先に下行ってて!!!」


楓ちゃんを部屋の外に追い出しながらそう言うと、楓ちゃんは渋々下に降りていく。


「はぁ…。ゆずるぅ…。」

「くくっ…お預け食らった犬みたいだな。」


顔を上げ、笑いながら俺を見上げてきた柚瑠に、俺はエネルギーチャージするようにぎゅっと柚瑠を抱きしめて、またキスをしてから、柚瑠と一緒に再び1階に降りた。


一体いつまで楓ちゃんが家にいるのかは不明だけど、あの荷物の量からして1週間くらいは居るつもりなのかもしれない。


決して久しぶりに実家に帰ってきた家族に『さっさと帰れ』なんてひどいことは言わねえけど、柚瑠との二人の時間をどうにか確保したい、と願う俺であった。


秋の訪れ、姉の登場 おわり


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