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「女友達となんかあったっぽいって吉川が言ってたけど?」
話を誘導するように健弘に話すと、健弘は「あ〜。」と相槌を打った。
「同中の子か?よく真桜に構いたがってる。」
「あーそうそう。そいつらからの遊びの誘いとか最近断ってたからさ、友達って思ってくれてないの?とかいろいろ言われたんだよな。」
話の誘導に成功し、健弘はそう話してくれた。
「あー…、なるほど。俺もちょっと前似たようなことあったし分かるわ。」
「あれだろ?良平。」
「そうそう。まあ和解したけど。」
「でもそっち男だからまだ良いじゃん?こっち女だから。俺も彼女できたしさぁ、いつまでも仲良く連み続けるのもなぁ、とか思うわけよ。」
「あー…まあな。」
それを言ったら俺と吉川とかどうなんだ?って思ったけど、ひとまず健弘の話に頷く。せっかく健弘が話してくれているところで水をさしたくはない。
「…ってのは別に俺の中でそこまで重要なことではないんだけどな。モヤモヤしたのは友達って思ってくれてないの?って言われた時、逆にそっちが俺のこと友達って思ってくれてる?ってふと疑問に思ったんだよ。」
「…え、なんで?」
いっつも『タケタケ』と親しまれている様子を傍から見ていた俺としては、健弘のそのモヤモヤはちょっと理解できない。
「俺と遊びたい、じゃなくて、あいつらは真桜と遊びたいだけなんだよ。だから俺は真桜を連れてくるだけの存在なんだろうな。とか考え出したら、俺の存在意義なくね?って思い始めた。」
「いや、それはちょっと健弘が自虐しすぎ。確かに真桜目的ってのも否定はできねえけど健弘居なかったら場の空気成立しなかったりするからな?傍から見てて健弘どう見ても中心人物だし、そこは自信持った方が良い。」
健弘の話を聞いてみれば、聞いてみないと分からない悩みをやっぱり胸に抱えていた。けれどそれは、一人で考えれば考えるほどドツボにはまってしまいそうだなと思った。話を聞けて良かったと思う。
「一人で考えてるからモヤモヤ抱えることになるんだよ。誰かに話せよ。なんのための友達だよ。」
そこまで言った時、健弘の目がチラッと俺の方を見る。
「ふはっ、確かに。柚瑠はもう友達だな。」
「は?今更か?」
「いや、俺の中で柚瑠はずっと真桜の“想い人”ってイメージだったし。」
「はあ?なんだそれ。俺はもうお前のこと仲良い友達だと思ってたのに。」
それこそ、バスケ部の友人が嫉妬するほど仲良くなった関係だ。教室に向かいながら今二人で喋ってる時点でそうじゃねえのかよ?って健弘と目を合わすと、健弘は「そうだったそうだった。」と俺の背中を叩きながら楽しそうに笑った。
「でも最近思ったけど、友達関係ってのは男同士しか成立しねえわ。俺からしたら。」
たった今浮かべていた笑みはすぐに引っ込めて、健弘は真面目な顔をしてそう口にする。
「やっぱ彼女第一だし、できれば向こうから遊ぶの遠慮してほしいと思うくらいだし。だからあいつらと仲良くすんのはもう無理かも。真桜との繋ぎ役ももうそろそろ勘弁してほしいしな。」
「あー…まあなー。」
…って、俺他人事みたいに健弘の話聞いてるけど、もしかして俺と真桜の周りに言えない関係が健弘を困らせてしまっているかも。
俺と真桜のことさえ言えてしまえば、健弘の女友達がいつまでも真桜に執着することもなく、健弘が繋ぎ役をさせられる必要も無くなるかもしれないのに。
「…その子らに言えたらいいんだけどな、俺と真桜のこと。」
「いや、言わなくていい。言ったら何言われるか分からん。」
「…え。」
……いや、言わねえけどさ。健弘のことを思って願望を口にしただけなのに、健弘はきっぱりと強い口調でそう返してきた。
「あいつら星菜のことディスりやがったし。イメージ悪いとか知らねーよ、俺にとったら女神なんだよ。」
そしてそんな話題から、健弘はベラベラと愚痴を言い始めた。どうやらその女友達に、めちゃくちゃ吉川を悪く言われたらしい。
「あー、まあ女子からしたら印象は最悪だろうな、吉川は。」
「お前まで言うか!?」
「ごめんごめん、“女子目線”で考えたらだって。お前と付き合ってんのに真桜とも仲良いし、気に食わない気持ちにはなるんじゃねえの?」
「…チッ。真桜め、あいつもういっそのこと他校に彼女いることにでもしとくか!?」
「…ハハ、まあそれも有りだな。」
さっきまで真面目な話をしていたのに、教室に到着する頃にはいつもの調子で健弘は真桜への文句をぶつぶつと言っていた。
イケメンモテモテ真桜の親友というポジションは苦労が絶えないようだけど、健弘の場合は自分からそのポジションを掴み取りに行ったようなものだから別に悪い気はしないらしい。
でももう女友達からの頼みにはうんざりだ。と言っていたから、「どっちなんだよ。」と笑いながら突っ込んだ。
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