12 柚瑠と楓の恋話@ [ 21/50 ]

『ちょっと真桜くん!?

なんでそれを早く言わないんだよ!!!!!』


俺がお姉さんに正直に真桜との関係を話すと、お姉さんは顔を真っ赤にして真桜を責め立てた。

隠していたことを怒ってるのか…?と一瞬思ったが、なんとなく怒ってる…というよりは予想外な展開にお姉さんを驚かせてしまい、興奮していると言った方が正しい気がする。

何で早く言わなかったか、っていうとそれは俺が渋ったからで、どちらかと言えば真桜はさっさとお姉さんに言ってしまいたかっただろうにお姉さんに話さなかったことを責められていて俺はなんだか申し訳ない気持ちになってきた。


「それは俺が渋ったからっす、すみません。」


横から俺が口を挟むと、お姉さんはチラッと俺の方を見てから黙り込み、大人しくなった。


「お姉さんが真桜の気持ち知ってるってことは真桜から聞いてたんですけど。…でも付き合ってるとかそういうのを家族の人に知られるのはやっぱちょっと恥ずかしかったんで。」


お姉さんの顔をジッと見て正直に話せば、お姉さんは目線をキョロキョロとさせながら真っ赤な顔でうんうんと軽く頷いてくれた。これは完全に動揺している態度だな。

俺たちの関係をお姉さんに知られた時、こんな反応を見せられるとは少し予想外だ。てっきりテンション高くソーラン節でも踊るような人かと思ってたのに。

それともやっぱり、かっこいい自分の弟と付き合ってるのがこんな男でお姉さんからしたら複雑な気持ちか?人の反応を見るのは毎度怖いな。


「やっぱ嫌なもんですか?弟が男と付き合ってたら。」


俺はストレートにお姉さんにそんな問いかけをしてみたら、お姉さんは聞かれた内容にびっくりしたように「えっ!?」と声を上げて目を見開いた。


「そんな風に見えちゃった!?ごめん、全然違うからね!?寧ろ嬉しいよ!!真桜くんの恋がちゃんと叶ってて!!!」


うん、やっぱそうだよな。このお姉さんならそんなふうに言ってくれるんじゃないかと思った。そこに嘘はまったく無さそうでホッとする。


「でも違うんだよ、私が納得いかないのはね?真桜くんの恋が成就する過程を一緒に追いながら見届けたかったの!真桜くんの恋が叶って嬉し〜っ!てなってる瞬間もできれば見たかったんだよ〜!なのにこんな、実はもう付き合ってました!ってびっくり箱開けさせられたみたいな展開ひどくない?ねえ、いつから付き合ってるの?」


どうやら徐々に平静を取り戻してきた様子のお姉さんは、いつもの調子で一人ベラベラと喋り出した。


「あー…今年の春から…?」

「春!?4、5、6、7、8、9、10…もう半年も経ってる!?」

「…んー、だいたいそんくらいっすかね。」


俺の返答に、突然指折り数えて聞き返してきたお姉さんの声に頷く。


「…はぁ。ダメだこりゃ。」


何がそんなに残念なのか、ぺたんと崩れ落ちるように座り込み、お姉さんは手で顔を押さえた。

まったく意味が分からないお姉さんの態度に困惑して、チラッと真桜の方を見てみると、真桜は無言で冷ややかな視線をお姉さんに送っている。


「どういう反応なんすかそれ。」

「…姉ちゃん勝手に真桜くんのこと奥手だと思ってたのにめちゃくちゃやり手でなんかすごいショック…痛っ。」


いや、真桜は多分奥手な方だろ。

お姉さんの認識で合ってると思うけど、なんでそれがショックなのかがちょっと俺にはよく分からない。でもそのお姉さんの発言を聞いた真桜はムッとしながら、お姉さんの太腿をかかとで押しやるように蹴った。


「そういうことだからもうあっち行って。」

「え、冷たくない?もっと話聞かせてよ!」

「無理。」

「え〜!ねえ〜七宮くん〜!!」


冷たい真桜の態度に泣きつくように俺の方を見るお姉さん。根掘り葉掘り聞いてきそうで真桜が嫌がる気持ちも分かるけど、お姉さんはお姉さんで奥手で全然進展も無いだろうと思っていた弟の恋愛話が気になってしょうがないのだろう。


「真桜は奥手で合ってますよ。」


お姉さんに対してずっと素っ気ない態度を取っていた真桜にチラッと一度視線を向け、笑いながら俺がそう言うと、お姉さんは「えっ合ってる!?」とすぐにパッと明るい表情を見せた。


「あんまり話すと怒られそうだから言いませんけど。真桜が俺のこと好きなのバレバレだったから、俺もそれで真桜のこと意識し始めた感じっすかね。」


「え〜そうなんだ〜!それでそれで!?」


…と、お姉さんは俺たちの話に興味津々だったものの、少しばかり俺が話してしまった内容に真桜の顔が恥ずかしそうに真っ赤に染まり、「もういいだろ!?早く出てけよ!!!」とお姉さんに怒鳴りつけた。


真桜の真っ赤になっている顔を見て、お姉さんは笑いながら「ごめんごめん、またじっくり聞かせてよ!」と言って部屋を出て行く。


お姉さんが出て行ったあとのシンとした部屋の空気に、真桜はいろいろ恥ずかしくて耐えきれなくなったのかベッドの上にボフッとうつ伏せになり、「あ〜〜もうっ」と足をジタバタさせていた。

耳が赤くなっている。可愛い。

まあ、実の姉に自分の恋愛話知られるのとか恥ずかしいよな。…って、ちょっと慰めるように「よしよし、真桜可愛いなぁ。」と暫くの間真桜の髪を撫で続けた。


こんな可愛い真桜だから、俺も好きになったんですよ、お姉さん。…とは言わないけどな。


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