7 テスト週間ですよ@ [ 16/50 ]

テスト週間に入ってまだ全然テスト勉強ができていなかった俺は、『今日こそはちゃんとやる』と朝から意気込んでいた。


しかしそんな俺の意気込みも、放課後になると呆気なく意味のないものになった。


「柚瑠、帰りにコンビニ寄っても良い?」


珍しく真桜からそう声をかけられ、わざわざそんなこと聞かなくてもいつも寄ってるだろ、と思いながら頷いたが、放課後になり真桜の家の近くのコンビニに行くと、姉弟で待ち合わせでもしていたのか、そこには何故か真桜のお姉さんが待っていた。


「あー来た来た!二人とも学校おつかれー!」

「え、お姉さんこんなとこでなにやってるんすか?」

「えへ〜ちょっとね〜お願いがあって。」


真桜のお姉さんはそう言って、真桜の手をグイグイ引っ張りコンビニの中に入っていく。

お願い?コンビニで?個数制限ある物でも買いたいのか?

俺はそんな予想をしていたが、レジ近くに置かれたアニメかゲームか何かのグッズが当たるくじ引きの前まで真桜を引っ張り、お姉さんは興奮した様子で立ち止まった。


「キャー!まだA賞もB賞も残ってるぅ!!!」

「何回引くの?」

「A賞出るまで!」

「は?そんな簡単に出る?」

「だから物欲センサーに引っかからないように真桜くんにお願いしてるんだよ!」


姉弟でそんな会話をして、お姉さんはレジに立っていた店員に呼びかけた。


「じゃあ最初何回いっとく?」

「ん〜、5回!」


お姉さんがお金を払い、真桜がくじが入った箱に手を突っ込んでポイポイ、と適当にくじを引く。

一喜一憂しながら結果を確認しているが、残念ながらお姉さんが欲しかった商品は当たらなかったらしい。


「キェェェッ!A賞ほぢぃ〜!!!」


おいおい、あんたいくつだよ。

その場でジタバタと暴れているお姉さんを笑って見ていたら、「柚瑠に引いてもらった方がいいんじゃね?」と真桜にくじ引きの箱の前まで引っ張られた。


「え、俺?」

「…う、うん、そうだね…。七宮くんだったら何も考えてなさそうだもんね…。」


お姉さんはちょっと涙目になりながら、胸元で祈りのポーズをしている。何も考えてなさそうはちょっと失礼だ。せめて『興味無さそう』とかにしてくれ。


1回の値段が700円もしているが、お姉さんは再び容赦無く5回分のくじ代を支払っている。

そして「お願いお願いお願い!」と俺に言ってくるもんだから、俺も真桜と同じようにポイポイ、と箱の中からくじを引いた。


「F賞…っ…F賞っ、E賞…うっ、」


吐きそうになってるし。

涙目でくじの結果を見ているお姉さんは、4枚目の結果を見た瞬間、「B賞!!」と声高らかに言いながらこっちを見てきた。


「おお、すげえフィギュアだ。良かったっすね。」


うんうんと頷くお姉さんだが、5枚目は残念ながらハズレのようなF賞だったようだ。お目当てはA賞のようなので、「うぅ〜…どうしよう…」とまだ引くか引かないか悩んでいる。


「何回引こう…」

「…あ、そっちっすか。」


“引くか引かないか”じゃなくて“何回引くか”で悩まれていた。でもあんたもう7000円使ってるぞ。


「1回ずつにしといたらどうすか?」


悩むお姉さんにそう声をかけると、ギュッと握りしめた財布を涙目で俺に差し出してきたため、財布を受け取り700円をレジのお兄さんに渡し、また箱の中から俺は一枚くじを引いた。



「はい、A賞出ました。」



まさかこんなあっさり出るとは自分でも思わなかったが、くじ引きなんてこんなもんだ。出る時は出るし、出ない時は出ない。レジのお兄さんに結果を確認したくじの紙を渡すと、「おーよかったですね。」とお兄さんは笑っている。


「えっ?…え?」と静かに驚いている真桜の隣で、お姉さんも「えっ…?」と姉弟揃って似たような反応で俺とお兄さんのやりとりを見ている。


俺がA賞のフィギュアを受け取ってお姉さんに差し出した瞬間、お姉さんは状況をやっと理解したようで「うおおおおおおお!!!!!」と雄叫びを上げ出し、フィギュアを抱えてその場でぴょんぴょん飛び跳ねた。


「えっ…柚瑠かっこい、まじで好き…。」


何故か真桜は顔を真っ赤にしながら口を手で押さえている。なんでそこで顔赤くなるんだよ。ただくじ引き引いただけだっつーの。


そんな真桜の言動に、隣でそれを見たお姉さんまで顔が真っ赤になっていた。


(えっ!?真桜くん今好きって…!七宮くんに好きって言ったよ!?自分で気付いてる!?)


※ちなみに楓は、まだ真桜が片想い中だと思っている。

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