5 男の嫉妬と友情B [ 14/50 ]

「こいつのねーちゃんまじ頭おかしいから。」

「おいタケ!!!」

「…ぶふっ、…健弘ストレートすぎ。」

「え、そんなに?」


主に真桜のお姉さんの悪口で健弘と男バスの友人は盛り上がり始めてしまった。


「家で奇声上げまくるし急に暴れ出すし。」

「まじかよ、あんな美人が?」

「だから〜、見た目で騙されんなよ?こいつだってチャラチャラしてるように見えるかもしんねえけどただの根暗だからな?」

「……ひでえ。」


少し時間が経ち、顔の熱がちょっとだけ引いた真桜が、げんなりしながらよいしょと腰を上げる。


「高野が根暗〜?さすがにそれはないだろ〜。ガチな根暗に失礼だって。」

「いや、それまじだぞ。だから前から言ってんじゃん、こいつクラスで俺としか喋んねーし。」


そう口を挟むのはタカで、まるでチャラいというイメージを根暗という単語で払拭するように根暗根暗と言われているが、それも結構失礼な話だ。


「根暗じゃないだろ、真桜は大人しいだけだもんな。」


俺のかわいいかわいい真桜をお前らもあんまりいじめるな、という思いでタカの次に俺が口を挟むと、真桜はにこっと俺を見て笑みを浮かべる。


「うわ、なんか柚瑠にだけ態度ちげえ。」

「柚瑠と高野ってまじで仲良いもんな。」

「かわいいだろ?お前らも可愛がってやってくれよ。」

「は?可愛い?いやおかしいおかしい。自分よりかっこいいやつを可愛がるって無理あるわ。」

「それな。てか高野ってほんとのところどうなの?彼女いねえの?今は居ないってみんな噂してるけど。」


男バスの友人から、直接そんな質問をされた真桜は、「え…」と少し狼狽えたあと、コクリと小さく頷いた。


「ん〜!?なんか今間があったくね!?怪しいなぁ!」

「ちょ、高野顔真っ赤なんだけど!え、その照れはなに!?彼女いるの!?いねえの!?まじでどっち!?」


グイグイと真桜への質問をやめない友人に、真桜は必死にブンブンと首を振った。


「そのへんにしといてやってくれよ〜、うちの真桜くんシャイなのよ。」


まるで真桜のお兄ちゃんみたいに、真桜の肩に腕を回してそう言った健弘の言葉に「そうみたいだな。」と男バスの友人は笑っている。


さすが健弘、やっぱりこいつは人と仲良くなれる天才だ。さっきまでの良くない雰囲気も今はすっかり元に戻ってくれて、もう前からの友人のように健弘は男バスの友人たちと楽しそうに会話している。


和やかな空気の中「なんか高野思ってた感じと違うな。」と真桜に笑みを向けながら話す男バスの友人の言葉に、俺も、健弘も、タカにも笑みが浮かぶ。


「でも仲良くなると普通にディスってくるから気を付けろよ。俺デブとか言われるし。」

「は?デブとか言ってねえよ、食い過ぎって意味で言ってんだよ。」

「ははっ、そりゃ間違いねえ!」

「確かにタカは食い過ぎだぞ!」


すっかりただのお喋りの場となってしまった教室の中、俺は静かに会話を聞いているだけだった良平が今何を思ってるのか気になった。


「タケくんまだ〜?荷物置きっぱですけど〜。盗られるよ。」


実はずっと廊下で大人しくこちらの様子を窺っていた吉川が口を挟んできたことにより、会話を終わらせて教室を出て行く健弘と真桜。


健弘の後ろ姿を眺めながら、男バスの友人の一人は「明るい奴だな。」と言っており、健弘に対して好意的になり喜ばしいことだ。


「おう、あとタケはまじいい奴。」

「そうなんだ。まあ確かに俺らにもフレンドリーな感じだったな。」

「高野もさっき言ったことは前言撤回。俺らお姉さんの制服姿にまんまと騙されたってことだな。」

「それな。高野身内の恥とか言っててクソうけんだけど。なんで学校に連れてきたんだよ。」


少し可哀想ではあるが、真桜のお姉さんが笑い話にされているところに、良平がチラッと俺に視線を向けてきて「柚瑠さっき言ったことごめんな。」と謝ってきた。


元々こいつはそこまで口が悪いというわけでもないので、恐らく真桜への敵対心のようなもののせいであんなことを言ってしまっただけなのだろう。

だから自分が言ったことを素直に謝ってくれたし、「分かってくれたらいいよ。」と俺も返すが、その直後「でもやっぱり気に食わん。」と言い返され、何故か良平はムッとしている。


は?なんでそうなる???

今完璧に和解のムードだっただろ。

一体なにが気に食わないんだ?


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