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“あれ?姫ちゃんあんなところで何してるんだろう。”


昼休みに暑い屋外で友達と立っているその姿を見た時、ちょっとだけ不思議に思ったくらいだった。


けれどチラッと姫ちゃんの方へ目を向けた時、たった一瞬だったのにバチッと目が合って、俺は『あれ?』と違和感を覚えた。


『こんなところでなにやってるんだよ。』

『え〜それ聞いちゃう〜?

あんたのこと見てたんでしょーが。』


吉川と数分前にした会話を思い返しながら、いや、これは真桜のことだ。と頭の中で謎に首を振る。


クソッ…、“高野真桜”という前例があるから、変なことを考えてしまった。

『もしかして姫ちゃん、今俺のこと見てた?』なんて、あんなモテそうな子がわざわざ俺なんか見るわけないのに。


いや、しかし前例を思い返してみろ、高野真桜はわざわざ朝早く学校に来て俺のこと見に来てたんだぞ。あんなイケメンでモテる男が俺を見てたんだ。姫ちゃんだってもしかしたら…、

とか考えていたら、思わず吹き出しそうになってしまった。いやいや待て待て。わざわざ俺のことを見に来る奴なんて、後にも先にも真桜くらいだ。


姫ちゃんの姿を尻目にズルズルとグラウンド中央へ真桜を引き摺っていくと、一緒にバレーをしていたタカやバレー部の奴らは人数が増えることに大歓迎で、真桜と吉川二人を無理矢理バレーに加らせた。


あまり球技が得意では無い真桜は、飛んできたボールをトスしようとするが、スカッと空振り地面にボールが落下する。


「おいおい高野下手くそかよ〜!」


タカのツッコミと共にみんなに笑われ、恥ずかしそうにしてる真桜。普段はかっこいい、イケメンだと持て囃される真桜がこんな風にからかわれている姿は見ていて面白い。


昼休みの残り時間、なんとかバレーを頑張った真桜は、「高野ってなんか思ってたイメージと違ったわ。」とバレー部の奴に言われている。


「どんなイメージ持ってたんだよ。」

「え、なんかクール?ってかちょっと冷淡な感じ?」

「あー、はいはい。違うよなー、真桜ちょっと大人しいだけだもんな。」


いきなり運動させたから、乱れた髪をちょっと手で整えてやると、にこりと可愛い笑みを浮かべる真桜。


「ははっ、七宮と高野まじで仲良いよなぁ。」

「高野も昼休みまたバレーしにグラウンド来いよ。」

「…うん。じゃあ、また行こっかな。」


バレー部の奴に誘われて、俺の方を見ながら返事をする真桜。

俺たちバスケ部やバレー部はその時々に遊びたい奴らが適当にみんなで遊んでいる。たまに別の部の奴や他学年の奴が加わることもある。

今まで昼休みはずっと別々だったけど、真桜も一緒に遊べるのならそりゃ俺は一緒の方が嬉しい。


「おう、真桜もまた来いよ。あ、吉川も。」

「あたしはいいわ。めっちゃ汗かいた、メイク崩れちゃう〜!」

「お前キャーキャー言いながらボール避けてただけじゃん。」

「2回くらい触ったし。」


昼休みが終わる5分前の予鈴が鳴り響き、そんな会話をしながら校舎に戻る。


バレー部の一人はタカと真桜と同じクラスの奴だったから、3人で仲良く教室に帰っていった。


「あーもう、散歩してただけだったのにまじでめっちゃ汗かいた〜!」

「明日からお前らも昼飯食ったらグラウンドな。」

「だからあたしは嫌だってば。七宮は真桜くんと一緒に遊べて嬉しそうね。」

「今までずっと昼は別々だったからな。」

「あらあらあら。」


嬉しいのはその通りだから、素直にそう話す俺は吉川ににやにやした目を向けられる。


「運動部の中に入ってくのちょっと抵抗あるけど、真桜くんも昼休みに七宮が一緒の方が嬉しいだろうね。」

「抵抗?それこっちのセリフだと思うけどな。今でこそお前らとは仲良いけど昔なら考えれなかったぞ。お前もだけど真桜とか健弘ってとにかく派手で目立ってたからな。」

「まあ不思議な巡り合わせだね。」

「そうだな。」


吉川と二人で教室に戻り、昼休みが終わるギリギリまで俺たちはそんな会話をしていた。

今までずっと昼休みは別々だったから、俺は真桜と一緒に外で遊べたことが結構嬉しかったみたいだ。

無意識にテンションが上がってはしゃぎまくってしまったからか、午後の授業は疲れて爆睡してしまった。


まあたまにはこんな日だってある。


真桜と過ごす昼休みが楽しかったから、一時はあの場に姫ちゃんがいて不思議に思ったことなど、俺はすっかり忘れていた。


高野真桜という前例 おわり


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