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【 健弘の不満 】


「真桜さ〜、最近俺に言ってないこと結構あるよな?」


別になんでもかんでも話してほしいとは思ってないが、最近吉川さんとコソコソ二人で喋っている姿をよく見かけて、俺は密かに嫉妬していた。多分二人は、柚瑠の話をしている気がする。


放課後、真桜の部屋に遊びに来ていた俺は、ベッドの上に寝っ転がってスマホを見ていた真桜に日頃思っていたことを口にした。


「吉川さんには話してて俺には話さないとか無しだぞ?」

「え、…なんだそれ。普通に話してるけど?」

「話してねえから言ってんだよ!!」


ちょっと声を張り上げてそう言うと、真桜は困ったようにポリポリと頬を掻き、「んー。」と悩むような素振りを見せた。


「…でもタケに話すの恥ずいし。」

「ぁあん!?吉川さんの方が恥ずいだろ!」


真桜の発言にすぐさま言い返すと、そうでもない、みたいな顔をされてしまった。もしや真桜からしたら吉川さんのことは“異性”という扱いではないのか?

いや、待てよ?もしかしたら真桜は同性に恋愛話をする方が恥ずかしいのかもしれない。


デリケートな問題に俺は腕を組んで暫し考えた。そう言えばこいつが勝手に彼女を作った時もなんの相談もしてもらえなかったし、

…ん?…いや、待てよ?

今思えばあれも元カノの女に話を聞いてもらっていたのかもしれない。


「ううううううう…こいつめ…」

「え、なに、こわ。」


俺は犬が威嚇するような声を出しながら真桜を睨み付けた。俺と真桜の友情が、女に負けた気がして悔しい。真桜が俺より女を選んだのだ。


「何でも話すって約束しただろ!」

「え、してないしてない。」

「俺より女を選ぶのかよ!」

「えー…どっちも選んでねえんだけど…。」

「お前がわんわん泣いてた時に慰めてやったのはどこの誰だっけなあ!?」


…うわ、俺今すげーめんどくさい彼女みたいな奴になってんな。と思ったがもう口に出してしまった後だ。

ジッと真桜の顔を見つめて真桜が何か話すのを待っていると、真桜はまじで恥ずかしそうに顔を赤くしながら「…ん〜…でも、」とボソボソ言って話すのを躊躇っているようだった。


「てかまじで最近吉川さんとよく話してるけど何の話してんの?お前ら言っとくけどまじ怪しいからな?」

「………んー。」

「いや顔赤すぎだから。そんな恥ずい話してんの?なに?エロ系?」

「うん。」

「バカ!だからそれ普通俺に話すだろ!!!」


は〜!?信じらんねえ!!!
なんで女に言えて俺に言わねえの!?

俺は自分が一番真桜と仲良い友人と思ってるから、次第に俺より他の奴に話す真桜にムカついてカッカしてきてしまった。


「でもタケ、ちょっと考えて見ろよ、エロい話って親にはしなくね?」

「俺は親じゃなくて友達だろ!」

「タケは家族みたいな感じだし。」

「……で?エロい話ってなに?」


話を急かすように聞くと、真桜はボフッと顔を枕に突っ伏し、バタバタバタバタと足を動かした後、ようやくボソッと口を開いた。


「…柚瑠とえっちした話…。」

「…………はぁぁあーん!?したの!?お前ら!!へえええ!!!ああそう!!!」


うわ、やっべ、びっくりしすぎて俺の顔が赤くなってそう。え?まじで言ってんの?もうそこまでいったの?まじで唐突に聞かされるの心臓に悪いからこまめに報告してほしいんですが?


真桜は枕に顔を突っ伏し、声にならない声を上げていまだに足をジタバタしている。


「で?どうだったんだよ?挿れたんだろ?よかった?」

「…よかったどころじゃない。秒で天に召された。」

「…ぶっ…、秒かよ?」

「…だから次は、もっとちゃんとしたくて、吉川に意見聞いてる。タケ童貞だし。」

「うるせえな!!!!!」


真桜に痛いところを突かれて俺の顔面は真っ赤だ。クッソ、真桜に先を越されるとは思わなかった。柚瑠のやつ、爽やかな面してしっかりヤられてたのかよ。


「あっ!!!!!」

「ん?なに?」

「もしかしてこの前のテスト週間の時だろ!」


そう言えば柚瑠がやたらにやにやしていた時のことを思い出した俺は、ハッとして真桜にそう言うと、あっさり「え、うん。」と頷かれた。


なるほどな〜!あーなるほどなあ!!!


「なんで分かった?」

「柚瑠が異常ににやにやしてた。お前とのえっちが良かったんじゃねえの!!!クソッ」


なんかまじですげー悔しくて、吐き捨てるようにそう言った俺だが、真桜は「えっ」と驚いたような声を出したあと、ベッドの上でボフボフと身体を飛び跳ね、バタバタバタバタと暫く足をジタバタし続けた。


「うぜー!暴れんのやめろ!」


気持ち悪い真桜の喜び方に、イラッとして枕を真桜の身体に叩きつけるとようやく少し大人しくなった。


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