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週明けの朝練後、俺の席に今日も座っていた真桜を見た瞬間、俺は「プッ」と吹き出してしまった。
そんな俺に気付いた真桜が、「柚瑠ぅ!!」と真っ赤な顔をして怒ったようにドンドンと机を叩いた。
真桜がそんな反応を見せるから、周りにいた健弘や陽キャ友達に不思議そうな顔をされてしまった。あーダメだダメだ、思い出したら笑えてくる。
真桜の家で触り合いのようなエロいことをしてしまった。
まあなるべくしてその流れになってしまったというか、元々官能的な真桜のキスには何度も下半身にくるものがあって、おまけに乳首まで舐められたらそりゃそうなるわ、と。
性欲に耐えられる自信もなく、寧ろありがたく受け入れたくらいだ。
しかし笑えてしまったのはそのあと。
「ふ、くく…っ」と笑いを堪えながら机に鞄を置くと、赤い顔をした真桜が何か言いたそうにしながらも無言で俺を睨み付けてくる。
「おいおい、柚瑠真桜になにやったんだよ。」
「…なんでもない。…見て見ぬふりしてやってくれ。」
「いや、じゃあ一人で笑ってんなよ。」
いつもなら俺が来たらすぐに退いてくれるのに、なかなか席を立たない真桜。
「真桜退いて。」
俺は真桜の頭に手を置いて、髪の毛をぐしゃぐしゃにすると、乱れた髪を手櫛で直しながらようやく席を立ってくれた。
しかしまだちょっと赤い顔のまま、髪をぐしゃぐしゃにされた仕返しをするように、今度は俺の髪をぐしゃぐしゃにしてから教室を出て行った。
「…おい、まじでなにした?」
「大したことではない。」
「じゃあ言えよ。」
朝っぱらからエロい話をするわけにもいかず、況してや真桜の恥ずかし話を親友に言ってやるのも可哀想で、「また今度な。」とか言って適当にはぐらかした。
そして1時間目が終わった次の休み時間、珍しく真桜が4組に遊びにこなかったから気になって6組の教室を覗いてみると、早弁しているタカの前の席に座ってスマホをいじっている真桜がいた。
俺は真桜の方を見ながら6組の教室に足を踏み入れると、「あ、七宮久しぶり。」と白石に声をかけられた。
「おぉ、そういやお前6組だったか。」
「そうだよー、また高野くんと一緒。」
白石と会話する俺に、ジーとまっすぐ向けられた視線。
「あはは、高野くん七宮のことめっちゃ見てる。」
白石に笑われながら真桜の元に歩み寄ると、真桜はむぅっとした顔で俺を見上げてきた。
「おう柚瑠、高野さまがなんかご機嫌斜めだぜ。」
「てか6組まじで静かだな。」
「だろ。腹鳴ったらクソ目立って嫌なんだけど。」
むぅ、とした顔の真桜の頭に手を置いてタカと喋っていると、真桜が俺の手をぎゅっと掴んで頭の上から自分で俺の手を退かした。
「んで高野はなにに怒ってんの?」
「ほんとだよ、真桜どうした?」
…って分かってて聞く俺に、真桜が俺の上半身を引き寄せ、俺の頭を真桜の胸元に押しつけられてしまった。
「うわっちょっ、やめろっ」
教室ではやめろよ、と言いたくて早く離すようぺしぺしと真桜の腕を叩くと、真桜は俺の耳元に口を寄せて小声で話しかけてくる。
「次はちゃんと我慢するし。」
そう言ったあと真桜は俺を解放し、フンと俺からそっぽ向く。
俺は「ふぅ」と息を吐きながら真桜を見て、俺からそっぽ向く真桜の頭の上にまた手を置いた。
「わかったわかった、笑ってごめんな?」
「…おい、お前ら目立ってるって。」
真桜の顔色を窺いながら話していた俺に、タカが小声でコソッとそう言ってきて、俺は周囲を見渡しながら真桜の頭から手を離した。
気付けば近くの女子からチラチラと真桜とのやり取りを見られてしまっており、俺今怪しいことしなかっただろうか?と少々不安になってしまった。
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