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高野たちは一体いつまでフードコートにいるつもりなのか知らないけど、時刻はすでに8時前だ。早く帰らねーと夕飯作って待ってる母さんに文句を言われてしまう。
俺が「そろそろ帰る」と鞄を持つと、他の奴らも「じゃあ俺も」「俺も」と立ち上がった。
「バスケ部帰るのー?またねー。」
スマホを弄りながら高野の肩に凭れかかっていた女子が、ヒラヒラと手を振ってきた。ノリが軽い。高野の彼女…?ってわけでは無さそうなんだが。ずっと高野にくっついている。
溢れ出るリア充オーラを纏う高野がいるグループに背を向けながら、タカがボソッと呟いた。
「俺も彼女ほしい…。」
「彼女ねぇ。好きな人は?」
「今はいない。」
「じゃあ当分無理だな。」
「柚瑠はいねーのかよ!」
「俺?いない。」
恋愛とか、好きな人とかの以前に俺は部活と勉強を両立させることで必死だ。
朝6時台に起きるのが辛いし、毎日チャリかっ飛ばして学校行くのもしんどい。朝練はもう義務的な感じでだるくてもやるしかないし、朝練後の授業がかったるくてしょうがない。
放課後は好きでバスケ部に入ってるんだからまあ練習はそこそこ楽しいし、部活仲間と学校帰りに駄弁るのも楽しい。
けどその楽しみの後には勉強しなきゃならないのがまた苦痛で、家に帰るとうとうとしながら勉強して寝てまた朝が来る。
これが3年間続くのだと思ったら、長いようででも多分あっという間だろうな。
風呂に入るのが面倒で、さっさと布団に入りたい気持ちを我慢してサッとシャワーを浴び、ようやく布団に入れる瞬間は至福の時だが、眠ってしまえば泣きたくなるほど朝が来るのは早い。
目覚ましの音に起こされ、またいつも通りの朝が来る。
今日は高野に会うこと無く学校に到着し、急いで体育館へ向かった。
未だに高野のことがちょっと不思議で、ふとした時朝7時に高野と遭遇したことを思い出してしまうことがある。朝早くに学校行って、何やってたんだろうな。
「おつかれっしたー。」
朝練が終わると、先にぞろぞろと教室へ向かっていく先輩たちとは3階で別れて、1年のフロアである4階へと続く階段を登った。
今日も今日とて、おにぎり片手に教室に入って行く。
『行儀が悪い!』なんてことを女子に言われたことはあるが、授業が始まる前に何か口にしておきたくて必死なのだ。
自分の席に向かう途中、すでに登校していて着席している高野の姿が目についた。
おにぎりにガブリとかぶりついていたところを見事に直視されている。
何度でも言うが、俺と高野は『おはよう』などと会話を交わし合う関係ではない。例え目が合ったとしても、俺は自分にとって無縁のクラスメイト、高野 真桜から無言でサッと目を逸らし、残りのおにぎりを口の中に押し込んで鞄を机の上に置いた。
「七宮おはよー、マフィンあるけど食べる?」
「おお!食う!!!」
おにぎりを食ったばかりだが、勿論まだまだなんでも食べられる。クラスの女子が持ってきていたビニールに入ったマフィンを受け取り、俺はすぐさまビニールを破ってマフィンに齧り付いた。
すでに本鈴が鳴っていたようで、1時間目の教科の先生が教室に入ってくる。
ガブガブと急いでマフィンを口に入れ、モグモグと口を動かしていた俺は、先生に目を向けられてしまった。
「七宮はよ食えー。」
慌てて口の中のマフィンをゆすぐようにお茶を飲む。
朝から俺がこうやって、先生に注意を受けることは、恥ずかしながらわりとこのクラスの日常だった。
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