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昼休み終了5分前にグラウンドから教室に戻ってくると、いつもガヤガヤと騒がしい教室が今日はやけに静かに感じた。
「なんか今日静かだな?なんかあった?」
額から流れてくる汗を肩にかけていたタオルで拭いながら、近くに居た男子二人組に問いかけると、「あー…。」と何故か言いづらそうに顔を見合わせている。
「吉川と白石(しらいし)が揉めてたっぽい。」
「…白石?」
白石とは、俺の隣の席の女子だ。
揉めてたと聞いてもぶっちゃけあまり驚かない。いつかはやり合いそうな雰囲気はすでに出ていた気もする。
「あとなんか、高野も。」
「え?…真桜も??」
教室を見渡してもまだ真桜の姿は無く、何故揉めたのか気になり男子二人に聞くも、「さぁ…」とよく分かってない感じだった。
まあ気にはなるけど仕方ないから、張本人が隣に居る自分の席に行くと、いつもは何かと絡んでくるのにサッと視線を逸らされた。
クラスで揉め事を起こしたことが気恥ずかしいのだろうか?
「お前なにやらかしたの?」
まあ吉川に嫌悪感剥き出しだった白石の表情を思い返せば、だいたい想像はつくけど。
白石に問いかけながら椅子に腰掛けて横を見る。
「……吉川さんに悪口聞かれた。」
「あ〜ほら、言わんこっちゃない。」
「……うん。反省してる。」
うわ、すっげー泣きそうな顔してるから聞かない方がよかったか?けれど何故真桜まで関係しているのかが凄い気になる。
気になるけど、今これ以上聞いたらまじで泣きそうな気がして、「まあ、あんま気にすんなよ。」と言って会話を終わらせた。
白石は微かに鼻を啜ってたから、今にも泣き出しやしないかと少しヒヤヒヤした。
その後、昼休み終了ギリギリに教室に戻ってきた真桜を目で追っていると、真桜もこちらを向き、目が合った。
にこっと笑みを見せてきたかと思いきや、こいつもまたすぐにサッと俺から視線を逸らした。
吉川と白石の揉め事に、なんでお前が関わってるんだ?聞いたら真桜は答えるだろうか。
無関係な俺がグイグイ聞いたら嫌がられるかな。でも気になるもんはしょうがない、あとで聞いてみよう。
そんなことを悶々と考えていると、5時間目がすでに始まっていた。担任が教卓前に立っている。夏休み明けに行われる文化祭に向けての決め事をするらしい。
タイミング悪いな。クラスの雰囲気微妙なのに。
てか吉川いねーし。真桜に何か言われたからか?
気になりすぎて文化祭とか今どうでもいいんですが。
「1年は舞台発表をするので、歌やダンス、演劇などなにか希望ある人〜。」
担任のその声に、見事に誰一人として何も言わずにシーンと教室は静かだった。
「お〜い、何かやりたいことないのか〜?ないなら先生が勝手に決めるぞ〜?」
「ハイハイ!演劇はやだからダンスがいいです。」
担任の言葉に焦りを見せた前方の席の女子がそう発言すると、うんうんと数人のクラスメイトが首を縦に振っている。
確かに演劇は嫌だな。と俺も思うが、かと言ってダンスも嫌だなと微妙な心境でクラスの話に耳を傾ける。
それなら演劇で裏方をやってた方がマシだな。とか考えていたら、すでにダンスの方向で話がまとまりかけている。
「夏休み中にも集まりやすくするために、何組かグループ組んでパート別で踊るとかは?」
「おー、いいんじゃないか?」
いつの間にかクラスの中心になって意見を出しているのはダンス部の女子で、その後グループを組むための話し合いの時間になった。
俺は席から立ち上がり、真桜の側に行くと、俺を見上げて「ダンス嫌なんだけど。」といつもの調子で話してきた。
「うん、俺も。でも演劇とかも嫌だし全部嫌だよな。」
「うん。模擬店とかが良かった。」
「模擬店選択できるのは2、3年になってかららしいな。」
「へえ、そうなんだ。」
真桜とそんな会話をしていると、「七宮は夏休み中部活あるよね?」とダンス部の女子に話しかけられた。
「あー、うん。だから練習参加できねえ時あるかも。」
「じゃあ運動部の男子でグループになってもらって練習日合わせるのはどう?簡単そうな振り付け選んどくし。」
「おお、それはありがたい。」
俺はダンス部の女子の案に賛成するが、その次に真桜が視線を向けられると、ダンス部の女子はにっこにこな笑顔を浮かべて、真桜におねだりするように口元に手を合わせた。
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