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蓮くんがこの学校に編入してきて、2週間が経った。
学校の行き帰りや休み時間など、ほとんどを亮太と蓮くんの3人で過ごすようになり、そろそろ蓮くんもこの学校に慣れてきたのではないだろうか。と、そう思っていた頃。

俺が知らないところで、蓮くんは何かの問題に巻き込まれていたらしい。

休み時間に俺は、飲み物を買いたいという亮太についていき、売店に行っていた。

教室に戻ろうと階段を登っていた時、踊り場の角で確かではないが7人ほどの生徒に囲まれている蓮くんの姿が。


「あれ?蓮くん?何してんだあんなところで。」


蓮くんを囲むそこに近付いていけば、徐々に聞こえる彼らの話し声。


「ぶっちゃけどうなわけ!?好きなの!?それともただの幼馴染み!?」

「正直僕、お前のこと憎いんだけど!」

「はっきりしてくれないと困る。」


何の話をしているんだろうか。よくわからないが良い話ではなさそうだ。


「なぁ亮太、あれ何に見える?やっぱりイジメ?」


蓮くんにイジメなら、俺は許さない。

でも勝手にそうと決めつけて、俺がでしゃばって話に突っ込んで、事をややこしくしてもダメだと思い、じっとその光景を眺める。


「さぁな。どうせバカな連中が蓮に嫉妬でもして突っかかってんじゃねぇの。ほっとけほっとけ。」


そう吐き捨てて、蓮くんが居る踊り場を通過するために歩みを進める亮太の後に、俺も続く。……ん?

なんで蓮くんに嫉妬?


「おい蓮、そんなところで何やってんだよ、もうチャイムなるから行くぞ。」


蓮くんに声をかける亮太に、蓮くんを囲っていた生徒は慌てたような表情を浮かべた。


「あ!ぅ、うん!」


吃りながら返事をする蓮くんは、生徒の輪の中から抜け出し、俺らの元に駆け寄った。


「君ら、蓮くんの友達?」

「…あ、えっと、ぅ、うん…。」


蓮くんを囲っていた俺の一番近くにいた生徒にできるだけ優しく問いかけたつもりだが、その生徒からは酷くどもった返事が返ってきた。

…これは何かあるとみた。


そしてこのあと俺は、もうひとつ、ある事実を知る。


「滝瀬くんまたなんか言われたんだ?」

「ほんと懲りない奴らだなぁ。」

「気にすんなよー?」

「僕は滝瀬くんの味方だから!」


教室に戻る最中に度々声をかけられる蓮くん。

なんと蓮くんが、一部の男子にモテている…!

…いや、モテているっつーか、人気っつーか、つまり、なんていうか好かれているってこと。

そんなことを思っていると、亮太も俺と同じ事を思ったのか、蓮くんに向けて口を開いた。


「お前編入2週間にして、敵あり味方ありのえらい楽しい学校生活送ってんじゃん。」

「え、…そう?」

「そう。モテロードを歩む優には体験できないスリルだな。」

「いや亮太、言ってる事意味わかんねえからな。どういう意味だよ?」


モテロードってなんだ。
俺には体験できないスリルってなんなんだ。


「あ、蓮英語の予習やった?見せてほしいんだけど。」

「あー、うん。いいけど、次の授業数学だよ?」

「だから数学の間に英語の予習するんじゃねーか。」

「え、じゃあ数学の授業聞かないんだ。」

「おう。」

「……………。」


ハイ、俺のこと無視ー!

…もういいさ。俺はシカトされる運命を歩むのさ。…シカトロードを歩むのさ。……なんてな。

ちょっと内心で可哀想な自分を演出していたところに、「バシッ」と頭に衝撃が。


「何ぼへーと歩いてんだよ。チャイムなるから早く歩きやがれ!」


……いやいや。ひどくね?

ぞんざいすぎる亮太の扱いに泣いた。





蓮くんが休み時間、数人の生徒に囲まれていた日から数日後。夕食を食べ終わり、自室に帰ってきて寛いでいた時、俺は亮太に問いかけた。


「なぁなぁ。亮太って蓮くんの事で何か知ってるだろ。」

「は?なにが?」

「だから。蓮くんのこと。最近蓮くんなんか変じゃね?」


何でか最近蓮くんは、俺と一緒にいるとき、落ち着きがないのだ。でも亮太は、そんな蓮くんにおそらく気付いてるだろうに何も言わない。


「さあ?気のせいじゃね?」

「気のせいじゃねぇから聞いてんだよ。つーか漫画読むのいったん止めろよ。」

「今いいとこなんだよ。話するならあとにしろ。」


布団に寝っころがって漫画に視線を向けたまま返事をする亮太に、カチン。…ちょっと頭にきた。


「こっち向けよ!」

「おい!なにすんだよ!!」


亮太から漫画を強引に奪い取る。


「漫画なんかいつでも読めるだろ?」

「話だっていつでもできんじゃん。」

「俺は今、話聞いてほしいんだよ。」

「俺は今、漫画が読みたいんだ。」


向かい合う俺と亮太。

…あれ、なんか険悪な雰囲気。…って、俺がこの雰囲気を作ってしまったんだった。


「………ごめん。」

「なにすぐ謝ってんだよ、調子狂うな。俺は今お前と対戦モード入ったのかと思ったぞ。」

「…入りたくないからすぐ謝ったんだろ。」


しばらくして亮太は、「ハア。」と溜め息を吐きながら、身体を起こして部屋の壁に凭れかかった。


「優に言ったところで多分お前、話理解できねーと思うぞ。」

「…へ、なんで?」

「それにもし話理解出来たら、お前気ぃ使いそうだしなー。」

「…は?それこそなんで?」

「ハァ。説明すんのだるい。ま、とりあえず話してやるから明日の昼飯奢れよ。」


と、ちゃっかり約束を取り付けて、亮太は話し始めた。


「蓮な、ここ最近一部の生徒にいろいろ言われてんだよ。優もこの前見ただろ?蓮が囲まれてるとこ。」

「あ、うん。見たな」

「あれの原因、優だからな。」

「…え?俺?」

「一部の生徒ってのは、優のことを好きな奴らだ。それも猛烈に。」

「は?…いや、意味わかんねえ…。」

「だから言ったじゃん、優に言っても話理解できねぇって。」


うん。確かにそう言われたけど…。

俺のことが好きな奴らって…。
しかも仮にそんな奴らが居たとして、なんで蓮くんに絡む必要があるんだ。


「……ぶっ、」

「え、なに?」


俺がう〜ん。と考えていると、何故かいきなり亮太が吹き出したから、不思議に思って亮太を見る。


「わははは、お前はほんっとおもしれーな。すっげえ顔してすっげえ考えてるけど、今の優に理解できるはずねぇから!」

「…なんで。」


俺は真剣に考えてんのに、笑うなんてひでえよ。


「はー、まじ面白い。」

「わかったから早く説明してくれよ。」


亮太の笑いがおさまってから、俺はもう一度亮太に説明を求めた。


「お前さ、そろそろ自覚してくれよ頼むから。自分がモテるってこと。」

「は?」

「は?じゃねーよ。モテんだよお前は。今ここで自覚しろ。お前はモテるんだ。否定的語句禁止。」

「…はい。」

「それを踏まえた上で話をすると、優に構ってもらえる蓮にバカな優ファンが嫉妬してあれこれ蓮に文句言ってんだよ。」

「……な!」


それじゃあ蓮くんが絡まれんのは俺のせいなのか…!?


「あー待った待った。言っとくけど悪いのは優ファンだからな。」

「…なぁ、その優ファンっての、やめろよ。」

「黙って話聞けねーのかお前はぁ!」

「痛ッ、」


脛をチョップされました。普通に痛い。


「じゃあ、つまりなんだ、俺が蓮くんに近寄らなかったらいいわけ?」

「そんなん解決策でもなんでもねーよ。優は普通にしてたらいいんだよ。」

「いやダメだろ。蓮くんかなり迷惑な目にあってんじゃねえか。」

「それでも優と居たいんだよ、蓮は。そんなこともわかんねーのかお前はぁ!このマヌケが!」

「痛ッ…!ちょ、脛はやめろ!」


また俺の脛を狙った亮太は、俺と目を合わして、ふと何を思ったのかニヤリと笑った。


「…あ、俺良いこと思い付いた〜。優お前さ、野田と付き合ってるフリしろよ。」


突然なにを言い出すかと思えば、亮太はニタニタと憎たらしい表情を浮かべながら俺にそう言った。


「は?なんだそれ、普通に嫌だろ。」

「フリだぞ?フリ!フリするだけ!」

「なんで俺が野田と付き合ってるフリしなきゃなんねぇんだよ!意味わかんねえよ!」


自分がもしそうしろって言われたら亮太は全力で否定するだろうことを俺に提案すんな!

と沸々と怒りを込み上げているところで、亮太は『野田と付き合うフリ作戦』のカラクリを説明してきた。


「優がもし野田と付き合ってるって奴らに知れ渡れば、当然奴らは野田に嫉妬するだろ?あれこれ野次飛ばすだろ?憎まれるだろ?そうなると蓮はもう何も言われることもなくね?『な〜んだ、滝瀬君はただの幼馴染みなんだ、ごめんねいろいろ言っちゃって。』って感じになんねぇ?俺のこの発想、まじ完璧だと思うんだけど。どうよ?」


なるほど。確かに良い発想だな。
…って、んなわけねぇだろ!!!
どうよ?って、全然良くねえわ!!!


「何で野田なんだよ!嫌だわ!!!」


よりによって一番嫌な人物を、何故チョイスするんだよ。


「そんなん決まってんだろ?憎まれ役は野田が一番ぴったりだからだよ。しかもあいつ、誰になに言われたって大してダメージ受けねえぞ。いや逆に喜ぶんじゃね?あいつドMだし。」

「…いやだ、絶対いやだ…。そんなことするくらいなら俺は、蓮くんからずっと離れずに、何か言ってくる奴がいたら文句言って意地でも止めさせる。」

「はぁ。ほんっとに優はわかってねえなー。四六時中一緒に居れるわけねえだろ?俺ら放課後生徒会あんじゃん。寮の部屋だって違うし。それにお前、便所にもいちいちついていく気か?」

「…なんか亮太って鋭いな。」

「優が鈍いだけだって。」


グサッ……亮太の言葉に胸に刺さった。


「なに今更凹んでんだよ。優が鈍いことくらい皆知ってるからな。」

「…え。」

「で?どうする?俺そろそろ漫画の続きが読みたいんですが?優さんや。」

「…どうすれば、」

「だから野田と付き合ってるフリ「いや。」…ハァ。諦め悪いな。」


だって嫌なもんは嫌なんだ。
いくら蓮くんのためとは言え、俺だって自分が大切だ!


「だって野田だぞ?亮太やれって言われたらやんのか?」

「は?やるわけねーだろ。」

「だろ?そうだろ!?だから俺だって無理なんだよ!」

「はぁ。わかった。……じゃあもう俺と付き合ってるフリするか!」

「なんでそうなるんだ!!」

「いや冗談だけど。」


…ガクッ。なんか気が抜けた。


「何か良い方法無いのか…。」

「じゃあ蓮に文句言ってくる奴ら順番に顔面パンチでも咬ましてやろうか?」

「それ問題になるから。」

「優は変なとこ真面目だな。」

「変なとこもなにも、亮太が不真面目なんだろ。」

「あーはいはい。」

「っておいこら、まだ話終わってないんですけど。」


話に飽きて漫画を読み出そうとする亮太の漫画をまた奪い取る。


「俺ぶっちゃけ興味ねえんだよ。バカな奴らはほっときゃいいんだって。好きに言わせときゃそのうち飽きるだろ。」

「えぇ、でもそしたら蓮くんが…。」

「お前はそんなに蓮が心配か?蓮はお前に心配かけねーために必死って感じに俺には見えるんだけど?」


………そうなのか?

だから蓮くんは、俺の前ではいつもソワソワしてんのか?

なんか亮太って、興味ないふりしてても周りのこと結構よく見てるなぁって思う。

なんかちょっと、悔しいな。


「でももし、蓮が危険な目に合おうとしてるときは、その時俺らが全力で蓮を助けりゃいいんじゃねえの?」

「………うん。」


亮太の言葉に、俺は徐に頷いた。


「…うん。…そうだな。亮太が全力で毒吐くってことだな。言葉の暴力と言う名のやっつけ大作戦。」

「お前俺がただ口悪いだけの人間だと思ってんだろ。」

「えっ、まっさかぁ!」


自分本意で、ワガママで、でも実は結構人の事考えてくれてて、友達思いで優しくて。

頭は悪いけど運動神経良くてめんどくさがりやで、かなり口が悪い亮太くん。


結局のところ、俺はいつも亮太のことを頼ってる。


「つーことで、俺は漫画の続き読むんだから優は大人しくしてろよな!」


話は終わり、というように、なんとも生意気な言葉を亮太に吐かれ、俺は言われた通り大人しく、というかふて寝することにした。


翌日の朝、いつもと変わらず亮太と今日は部活の朝練が無い拓真と食堂に向かい、食堂で決まった時刻に待ち合わせをしている蓮くんと合流する。


「蓮くんおはよー。」

「あっ、優、亮太、拓真おはよう!」

「おー。」

「蓮おはよう!」


挨拶を交わしてる途中ふと思った。
あれ、蓮くん元気ないのかな?って。蓮くんの表情に、少し翳りが見えた気がする。

朝から誰かに、何か言われたのだろうか。それとも俺の気のせいだろうか。

亮太をちらりと見てみたが、ふぁああと欠伸をしていて何も考えていなさそうだった。

ダメだ、昨日は亮太にほっときゃいいって言われたけど、俺のせいで蓮くんが変な奴らに絡まれてるって聞いた手前、蓮くんのことが気になって仕方がない。



「あ、そういや今日のホームルームで体育祭の出場種目決めるとか昨日タミオが言ってたよね。」


突然拓真が、登校中ふと思い出したようにそう口にした。


「言ってたっけ?」

「知らね。てか体育祭いつだよ。」

「もー、2人ともろくに話聞いてないから知らないんだよ。体育祭は2週間後だよ。」

「あ、そうだ昨日は亮太がくしゃみ20連発に挑戦してたから話聞く暇なかったんだ!」

「俺のせいにすんのかよ。」

「2人とも、いい加減バカなことしてないで話聞かなきゃ。」


いやバカなことをやってるのは俺じゃなくて亮太なんだけど。

…え?2週間後体育祭?もうすぐじゃん。と少し反応が遅れて、今更俺は驚いた。


「僕は玉入れと大縄跳びがいいなぁ。亮太は当然リレーに出るでしょ?」

「あー、そうだなぁ。リレーが一番楽そうだよな。走るだけだし。」

「亮太は騎馬戦とかが似合うよ。上に乗っかる人。なぁ拓真、種目に騎馬戦ねぇの?」

「騎馬戦あったと思うよ?」

「は?俺は騎馬戦に出る気ねぇぞ!」

「えー。」

「亮太って運動神経良いの?」

「良いも何も、亮太の唯一のが取り柄だよ。」

「だーまーれー。」


蹴られる前にサッと亮太から距離をとった。ジロリと亮太に睨まれ、ニコリと笑顔で返す。


「もう2人とも!遊んでないで早く学校行くよ!遅刻する!」

拓真くん、僕らは別に遊んでいるわけではないんだよ?

拓真の説教じみた台詞にクスクス笑っている蓮くんを見て、俺はちょっとだけ安心した。





「100m走、大縄跳び、棒倒し、玉入れ、これ必須種目な。んで、今から決めるのがクラスリレー、障害物競争、借り物競争、騎馬戦、二人三脚、綱引き、200m走です。黒板に各種目スペース作ったから希望種目んとこに名前書きに来て。因みにこれ決まったらホームルーム終了だってー。だからちゃっちゃと決めて帰っちゃいましょー。」


教卓に手をついて、みんなの前で説明するのは、委員長。…ではなく、体育委員の酒井だ。


「優、俺らも早く名前書きに行こーぜー。」


亮太に促され、黒板に向かうため席を立つ。

気付けばもうみんな席を立っており、黒板前には人が群がっていた。


「なぁ酒井、必須種目4つもあるんだったら別に他の種目希望しなくてもいいよな?」


黒板に群がるクラスメイトたちの1歩後ろであたりでその光景を見ていた酒井に問いかけた。

できれば俺は応援席でゆっくりしてたいんだ。というのが俺の希望だが、酒井は激しく首を左右に振りまくった。


「ノンノンノン!日高はうちの自慢の武器だからいっぱい出てもらわねぇと。日高が敵の目を眩ますんだよ。」

「はい?ごめん酒井、まったく意味がわからん。」

「確かに目眩ましだな、優は。」


俺が首を傾げていると、横で話を聞いていた亮太に同意された。いやだから意味がわかりません。


「そういう畑野は全種目出てくれると非常にありがたいんだけどなぁー。」


酒井の言葉に俺も大きく頷いた。


「嫌。俺そんなに目立ちたがりやじゃねえし。」

「もう目立ってんだからいいじゃん。」

「お前には一番言われたくねえ!」


なんで!
俺は事実を言ったまでなのに!

そうこうしているうちに、黒板にはクラスメイトの名前で埋まっていき、「あ、なんだもう決まりそうだな。」なんて亮太と2人、呑気に喋っていた。


「お、みんな希望種目書いたみたいだな。じゃあ一回席着いてー。」


酒井の指示で皆ぞろぞろ席に帰っていく。それに紛れて俺も席に着いた。

結局俺と亮太は、1個も希望種目を書かなかった。


「いいんじゃねぇの?必須種目4つもあるんだし。6つも8つも出てたらめんどくせえよ。」と話す亮太にうんうん、と頷く。


「優も亮太も名前書いてないの?2人とも参加する気無さすぎだよ!」


後ろから拓真に突っ込まれ、あははと軽く笑う。
参加する気が無いわけじゃないんだ。『もう4つも出るんだから、十分だろ』という意見が亮太と一致したんだよ。うん。決して、参加する気が無いわけじゃないんだ。


「拓真はなに希望したんだ?」

「僕は二人三脚と借り物競争!運動できないけどまだ僕にもできるかなぁ?って。」


ウキウキと楽しげに話している拓真は体育祭が楽しみのようで、そういう気持ちを持てるのって、すっごい良いと思う。


「えぇーっと、リレーと綱引きと200m走が人気だなぁ。借り物競争と二人三脚と障害物競争余ってるし。あ、騎馬戦もか。うーん、…名前書いてない人絶対いるよな〜?」


酒井がニヤニヤとこっちを見ながらそう言った。


「あいつの性格結構腹黒くね?」


酒井の視線を受けた亮太が、ボソッと小声で話しかけてくる。


「うん。結構な。視線合わしたらなんか言われそうな気がする。」

「だな。〇×ゲームでもしとこうぜ。」

「賛成。」


亮太と顔を近付けて、コソコソコソと喋りながら〇×ゲームを開始する。


「とりあえず空いてるとこ全部日高と畑野の名前書くね?いいよね日高、畑野?」

「…………ちょっ、良くねえ!!!」


しばらく酒井の声を聞こえないフリしていたが、チョークを持ってカッカッと俺と亮太の名前を黒板に書き始めたから、慌てて亮太が待ったをかけた。


「必須種目4つに借り物?障害物?二人三脚?…騎馬戦!?8つも出るとかあり得ねえだろ!無理!嫌!じゃあ俺リレーが良い!はい!リレーに出る!」

「お、畑野くんはリレーにも出てくれるらしいですよ。みなさんどうですか?」

「あっ、なら俺リレーいいよ。畑野に譲る!」

「俺も俺も!」


プルプルプル…怒りで亮太の身体が震えていた。


「最っっ悪だ!!!」


…亮太、どんまい。だなんて、俺だって言えない状況だけど。俺だって8種目も出るのは嫌だ。


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