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森岡が帰った後すぐに風呂に入って出てきたら、何故か物凄く機嫌の悪い亮太が何も言わずに俺に続いて風呂に入った。
亮太が風呂に入っている間にチカチカと携帯のメールお知らせランプが光っていて、開ければやっぱりとは思ったけど、森岡からメールがきている。
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From 森岡 聡史
Sub <件名なし>
添付ファイル:0
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今日はありがとう!
畑野と結構喋れたよ〜!
めっちゃ緊張した!
居候してるって聞いた時
はかなりびっくりしたけ
ど、日高の部屋に行けば
いつでも畑野が居るって
事だよな!だから、また
部屋にお邪魔するな!
…漫画読んでる畑野、す
っごいかっこよかった!
畑野といつも一緒にいる
日高が羨ましい(>_<)
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…また長文。こいつまじでメール長いよな。メール拒否設定したい。読むのめんどくせえしぶっちゃけメールの内容にドン引きした。“漫画読んでる畑野かっこよかった!”って…本人に言えよ。俺に言うな。
あーどうしよう。もしかして森岡、毎日俺にメール送ってくるんじゃねぇだろうな。まじでそれだけは勘弁だ。
「なに携帯見つめて怖い顔してんだよ。」
「わっ、…びっくりした…。」
あーだこーだと頭の中で思っていると、風呂から出た亮太が頭をがしがしと拭きながら部屋に入ってきて、俺に話しかけてきた。
「…面倒な事になってしまった…。」
「あぁ、森岡?あいつまじキモい。」
「…………。」
あからさまに森岡のことを嫌悪感丸出しで話す亮太。…俺がトイレに籠ってる間に、森岡と何かあったのだろうか……。
ダメじゃん俺、全然キューピッドになれてねえよ。いやもうキューピッドになる労力すら使いたくねえ。わりぃけど森岡の恋の相談相手になれるほど俺は暇人じゃねえんだ。
「…つかれた。」
「腹大丈夫?」
「…おう。」
亮太があまりに心配してくれるから、腹が痛いと嘘ついたことに罪悪感が残った。でも今さら嘘だったと言えるはずもなく。
「明日は早起きしねぇとな。だり。」
「9時集合だろ?起きれねえかも。」
「おいおい、俺だって起きれねぇぞ。」
…あ、森岡にメールの返事返してねぇや。いいよな、別に。
「…はあ。つかれた。」
「優つかれすぎだろ。」
「…携帯解約してえ。」
「なんで森岡にアド教えたんだよ。」
「…俺森岡の恋の相談相手だから。」
「は?優に相談?バカじゃね?」
「…俺もそう思うよ。」
俺に相談したって何も良いアドバイスできねぇっつーの。
「相談とか言って優に言い寄ってるだけじゃね?」
「それは100パー無い。」
「なんだその自信。まぁ何でもいいけどさ、優は優しすぎ。嫌な事なら嫌ってはっきり断れよ。ストレス溜めると自分の身体壊すぞ?」
「…そうなんだよなぁ。俺、明日にはハゲてんだよ、きっと。はぁ…。」
「意味わかんねぇよ、俺が言いたいのは体調の話しだ。」
あ、また携帯チカチカ光ってる。
…俺森岡に返事返してねぇのに。
何の用だと思いつつ、メールを開けた。
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From 森岡 聡史
Sub <件名なし>
添付ファイル:1
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俺のお気に入り♪
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そんな本文に、添付ファイルが1枚。…これを今ここで開ければ、俺は絶対に顔に出るな。と思い、何食わぬ顔をして携帯を閉じた。
「じゃあ、今日はもう寝るか。優、明日ちゃんと起こせよな!」
「亮太も起きる努力くらいしろよ。」
「はいはい頑張るよ。あ、優電気!」
「トイレ行ってから消すよ。」
「サンキュ〜、おやすみ!」
亮太が布団をかぶったのを確認し、携帯を手にして部屋を出た。
はぁ。とため息を吐き、居間の壁にもたれ掛かって腰を降ろす。
再び森岡からのメール画面に視線を落とした。
おそるおそる添付ファイルを開いた俺は、しばらく開いた口が塞がらなかった。
森岡が俺に送ってきたものは、亮太が教室で菓子パンを頬張っているところを携帯で撮った写真だった。
これはまずい。まずすぎる。今すぐメールを削除しておこう。
…万が一、亮太に見られても大丈夫なように…。と思い、携帯をカチカチ操作していると。
玄関からガチャと鍵の開く音が聞こえて、ドキン!と俺の心臓は跳ね飛んだ。
「あれ?優どうしたの?そんなところで。」
「…びっくりしたぁ、拓真か…。うん、ちょっとな…。」
誰かの部屋に遊びに行っていたらしい拓真が部屋に帰ってきて、床に座り込んで携帯を持つ俺を不思議そうに見ている。
亮太に気付かれてはいけない!と小声になって話す俺に合わせて、拓真は自分も小声になって話してくれた。
「亮太となんかあったの?喧嘩でもした?」
「…いや、そんなんじゃねぇんだけどさ…ちょっと…。」
「僕で良ければ話聞くよ?」
俺と視線を合わすように、床に座って話す拓真。そのありがたい申し出に、俺は迷わず飛び付いた。
…森岡よ、俺に口止めなんかしてなかったよな。と、自分に都合良く考え、俺は携帯画面を拓真に向けて、削除しかけていたメールと写真を見せた。
「…これ、森岡からきたメールなんだけどさぁ。…やばくねぇ?」
「え、森岡くんって…亮太のこと…。」
数回の会話で俺が言いたい事を悟ってくれた拓真は、声を出さずに頷く俺に目を丸くして驚いた。
「これ…、どう考えても盗撮じゃん…?亮太にばれたりでもしたらまじやべえよ、あいつキレるって…。」
「ほんとだね…。でもその前に森岡くんが亮太の事好きって知った時点でやばいんじゃ…?」
『バタン』
「「!?!」」
コソコソと顔を近付けて拓真と話していると、いきなり俺の部屋が開いて、2人してビクッとなり驚いた。
「…亮太、…どうした?」
「どうしたじゃねえよ!優がトイレ行ったっきり部屋に戻ってこねぇから。…まだ腹の調子わりぃのか?」
「…あぁ、大丈夫、悪いな電気消すとか言ってなかなか部屋戻らなくて。」
「いや、それは別にいいんだけど。まじ大丈夫なんかよ。あんま無理すんなよな。優は痩せ我慢するから。」
「…ハハ、大丈夫だよ、心配かけて悪かったな。」
てっきり拓真との会話が亮太に聞こえてしまっていたのか、と焦ったがどうやらそれは無いらしい。今だ俺の腹の具合を気にしてくれていたみたいだ。まじで罪悪感がやべぇ。
「つーかなに2人して床に座り込んでんだよ。」
「もう部屋戻るよ。拓真、また明日。」
「うん、2人ともおやすみ!」
よいこらせっと立ち上がり、亮太の後に続いて部屋の中に入る。
そして、扉を閉めると同時に亮太は、じーっと俺の顔を見てきた。
「…なに…?」
「なんか優今日変じゃね?」
「え、…なにが?」
「森岡と何かあっただろ?」
「…いや、別に、なんも…」
「嘘だな。俺に誤魔化しは通用しねえよ?あいつになんか変なことされたか?」
「…ほんと、何もねぇよ…。」
「まあ優がそう言うならもう何も聞かねえけど。まじでなんかあったら俺に言えよ。」
「…うん。サンキュー…。」
お礼を言いつつ、亮太に余計な心配をさせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
…とりあえず森岡に、盗撮は止めろと言っておかねば。
*
午前は舞台発表の練習、午後は文化祭準備か生徒会の仕事が入った場合はそちらを優先に。
俺と亮太の残り僅かな夏休みには、まったく暇という時間が無かった。
そんな中、度々ブーブーと震える自分の携帯に、俺はそろそろうんざりしていた。
森岡の『部屋に遊びに行っていい?』という誘いは、一度森岡が部屋に来て以来、ずっと断り続けている。
ぶっちゃけ森岡が部屋に来たからと言って俺にメリットねえし、しかも俺達はそこまで仲が良いわけでもない。そこまで仲良くない奴を部屋に招き入れる必要は無いと、俺は思うのだ。
メールの内容を考えるのも文字を打つのも面倒で、メールが届いても5通に1度ほど返事を返している程度だった。
基本森岡はクラスでは大人しい奴で、文化祭準備で顔を合わしても滅多に喋らない。特に野田のようなチャラい奴が苦手だとメールで言っていて、常に野田は俺や亮太の周りをうろちょろしているから、学校では話したくても近付き難いらしい。
この時だけは野田がうざいほど絡んできても、まじでありがたいと思えた。
そして、そんな面倒事が増えたこの状態で夏休みは終わり、2学期が始まった。
「ひーだっかくーんっ!暇だし遊びに来た〜!」
「お前いつも暇人だな。クラスに友達居ねえのかよ?」
「うるさいなぁ、畑野は黙ってろよ。僕が日高君に会いに来て何か文句あんの?」
「目障り耳障り鼻障り。」
「はぁ!?鼻障りってなんだよ!僕臭いなんて発してないし!!」
「あれ?自分で気付いてねぇの〜?お前いっつも油くせぇぞ。」
「嘘っ!?!?」
「嘘。」
「キーッ!!!」
休み時間になる度に2組の教室に訪れる田沼が、毎度俺を挟んだ状態で亮太と言い合いをしている。
亮太は田沼をからかう事で、快感を覚えたらしい。悔しがる田沼を見てケラケラと笑っている。
「お前猿みてえだな。」
「は!?黙れよ駄犬!」
「俺の何処が駄犬だ?言ってみろよ。」
「ジョ、ジョーダンだってば睨むなよ!」
「わはは!コイツびびってんだけど。」
「…犬と猿なら仲良くしろよな。」
「は?優、そりゃ間違ってんだろ。犬猿の仲とか言うだろ?」
「日高くんなりに僕たちの言い争いを止めようとしてくれたんだよ!!お前そんなこともわかんないのか!?」
こうしてまた、亮太と田沼の言い争いは振り出しに戻るのだった。
休み時間が終わり田沼が教室を出ていき、授業が始まった時、俺の携帯がポケットの中で震えた。
早くバイブを止めないと先生にバレると思い、机に隠してこっそり携帯を開く。
【メール受信1件】と表示された携帯画面。誰からだなんて、見なくてもわかる。これは、森岡からだ。
見るとやっぱり森岡で、授業中にまで送ってくんなよ。と、自分の携帯を奴に投げつけたくなった。
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From 森岡 聡史
Sub <件名なし>
添付ファイル:0
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畑野に前、嫌がらせした
やつって、田沼だよな。
嫌がらせしてたくせに、
馴れ馴れしくてムカつく
んだけど!
日高もそう思わない?
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…なんなんだこいつは。俺に同意を求めるなよ。森岡の心情なんて俺はどうでもいいんだよ。
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To 森岡 聡史
Sub <件名なし>
添付ファイル:0
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亮太はあれで楽しんでる
からいいんじゃねぇの
てかごめんだけど授業中
メール送るのはやめて
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愛想の欠片もない俺の返事に、森岡からの返事は無かった。
まぁ当然と言っちゃ当然だけど。だってもろにメール送るなって言ってるようなもんだし。
その日それ以降はありがたいことに、森岡からのメールはなかった。
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