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天空には雷雲が発生し、ゴロゴロと不定期に音を立てていた。それはまるで、ダーヤ・ルイの怒りを表しているようだった。


「ダーヤ様が怒ってる…。」

「誰か反ダーヤ軍をなんとかしてくれよぉ…。」


人々は家の中で怯え、いつもは賑やかな街中がガランと閑散としていた。そんな街中を走る無数の暴走車が、派手に音を立てながら民家に突っ込んでいく。


「キャー!!!やめてー!!!」

「助けて!!!助けてダーヤ様!!!」

「おらおらぁ!!!ダーヤいつでもかかってこいよ!!!」

「ダーヤには今まで腹立ってたんだよ、一度てめえらも痛い目見やがれ!!!」


反ダーヤ軍による反逆が、早くも始まってしまったのだ。


「兄貴、奴らが始めたみたいだぜ。」

「それじゃあ、小手調といこうか。」


ダーヤ・ルイは、暴走車に向かって雷を落とした。


通常ならドン、と一瞬で撃ち落とせるはずのその力が、瞬く間に跳ね返ってきたのか、ダーヤ・ルイの身体を貫いた。


「うっ…!」

「兄貴!?大丈夫か!?」

「クッ…なるほどな…ミラーエナジーを利用してるんだ。」

「ミラーエナジー!?」

「俺の力をそのまま跳ね返す仕組みになってる。恐らく車に何か仕込んでるな。」


ダーヤ・ルイは一瞬で全てを把握し、「ふっははは」と高笑いした。


「バカな奴らだな。俺の力を跳ね返せたところで、俺に力が戻るだけなのに。」


ダーヤ・ルイは鋭く地上を睨みつけ、空全体を雷雲で覆った。そして、まるでダーヤ・ルイの機嫌の悪さを現すように、ザァッと大粒の雨を降らし続けた。



「ダーヤの奴、攻撃しても無意味なことに気付いて保身に走り出したか?」


反ダーヤ軍リーダー、ケントハ・ルカワは、雷雲にも恐れず空を見上げて、にやりと笑った。何故なら、彼こそがミラーエナジーを体内から放つことができる、張本人だったからだ。


「俺の力があれば、ダーヤにだって勝てる。」


手のひらから溢れ出るミラーエナジーを、ケントハ・ルカワはしゅっと空に向かって投げ付けるように放った。

それは雨にぶつかり、その雨はスッと向きを変えて天空に帰ってゆく。


所詮、ケントハ・ルカワの力など、その程度だが、彼はそれでもまだ、ダーヤに勝てると信じて疑わなかった。





「ダーヤ・ルイが怒ってる…。雨が降ってちゃ、全然俺の力が使えねえよ…。」


傘をさしながら自分の手のひらに炎を灯してみるものの、その力はいつも以上に弱々しく感じてしまった。


「まずいな。奴らが反逆を始めたらしい。ずっと空が雷雲で包まれてる。あの雲から無数の落雷が発生してもおかしくない。奴らはそれも狙いなんだろうか。」

「俺たちが外にいてても危険っすね。少し屋内で策を考えませんか?」

「ああ、そうだな。お前の知り合いにはどういう力を持った奴が居る?最悪の事態になる前に、総力戦で奴らを少しでも早く始末した方が良い。」


タクさんと反ダーヤ軍に打ち勝つための作戦を考える中、俺はベーアヤ、ゾーモリ、クソカベ、ユーヒを呼び出した。

4人共現状に怯えるように、表情を強張らせている。


「タクさん、さっそくですがゾーモリは透明人間になることができます。こいつを敵のアジトに忍ばせ、奴らが保有している装置をこっそり破壊することができないでしょうか?」

「なに?透明人間だと?それはなかなか使えそうだな。」

「…え、一体なにを…。」


俺はさっそくタクさんにゾーモリの力を紹介すると、タクさんはゾーモリに向かって片手を差し出した。


「俺の名前はタク・ヤク・ローセ。怒りで地震が発生する力を持っている。」

「……えっ!?タク・ヤク・ローセ!?!?」


驚きの声を上げたのはベーアヤだ。それもそのはず、ずっとタク・ヤク・ローセの存在に誰よりも興味を持っていたのだから。


タクさんは驚くベーアヤにニッと笑い、4人に素顔を見せるように眼鏡と帽子を取り外した。


「これ以上、奴らがダーヤを怒らせるならば、この地は荒れ、今度は俺まで奴らに怒りが湧いてしまう。

するとどうなるか………分かるよな?」


タクさんの言葉に、4人は必死にうんうんと頷いた。


「俺は一刻も早くこの事態を終息させたい。

俺に力を貸して欲しいんだ。」

「どのみち誰かがどうにかしねーと、この地は終わりってことっすよね。」


一番に返事をしたのはユーヒだった。


「俺、協力しますよ。」


一番年下のユーヒが頷くことによって、自分も負けていられない、とゾーモリ、クソカベ、そしてベーアヤも渋々頷く。


「ありがとう。まずは現状をしっかり理解する必要がある。あいつらがどのようにダーヤを攻撃するのか。ゾーモリ、さっそくお前の出番だ。お前のその目で確かなことを確認してきてくれ。」

「…えっ、いきなり働かされるんすね。」

「ああ。モタモタしている暇はないぞ。」

「やっとお前の力が役になる時が来たんだ、頼むぞ、ゾーモリ!」


日頃覗きばかりしていた悪い奴だったが、俺は心からのエールを送った。


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