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「ゆずちゃん…なんで俺、浪人しちゃったんだろ…。」

「……え。光いきなりどうしたの?」

「なんか唐突に佑都より一学年下なことが俺の胸をえぐりつけてきた。」

「…佑都先輩と同じ高校通いたかったから頑張ったんじゃないの?」

「…んん。通いたかったっつーか、そもそも佑都と離れることが俺の頭には無かった。」

「ウワァ……。」


ゆずちゃんはちょっと引いたような目で俺を見た。ええい、引け引け、存分に引くが良い!

だって俺はちっちゃい時からずっと佑都と一緒に過ごしてきたんだから、佑都が側に居ないなんて考えられない。

頭が良い佑都といつかは別々の進路を歩むって言うことは頭に無かったわけではないけど、それでも高校くらいは同じ学校に通いたかった。

だから、佑都と離れていた1年間、俺は勉強を今まで1番頑張った。

頑張って受験して、受かった学校で、佑都と一緒に過ごせるようになったのは良いけど、…あんまりいいことだらけじゃねえな。

特に昨日起こったことは今までで一番最悪。思い出しただけで頭に血が上りそうだ。

昨日のことがあって、ほんとうはずっと佑都の側に居たい。側に居たいのに、佑都の周りには友人が居る。俺には入り込めない、佑都たちの世界があって、俺は無性に泣きたくなった。

イライラやモヤモヤが積もってくる。

嫌だなあ…なんか。
胸の中が気持ち悪い。
俺って、嫉妬深すぎる………。


「…あーあ、俺はただ好きな人と、ずっと一緒に居たいだけなのに。」


人生なかなかうまくいかない。


「あ……光、本音がダダ漏れてるよ…。」

「あっ…!」


しまった。

誰にも言ったことなかったのに…。

どうやら俺は、自分の中の余裕が少しずつすり減ってきているようだ。


俺は男が好き、じゃなくて、佑都だから好きになったけど、俺が同性を好きになってしまったことには変わりないことで、今まで誰にも言えなかったことで、もし俺のこの本音を佑都が知ってしまったら、って思うと、怖くて怖くて本当にいい出せることじゃなくて、今まで必死に冗談言ったりして隠してきたことだけど、そろそろ隠すのも限界になってきたのかもしれない。

胸がとても苦しい。

俺は、佑都のことが、

とてもとても、好きなんだ。


「……ごめんね、ゆずちゃん…。」

「ん?なんで僕に謝るの?」

「…だってゆずちゃん…。」


佑都のことが好きで、俺はゆずちゃんを応援しているような素振りを見せているけど、ほんとは全然佑都をゆずちゃんに譲る気なんかないから。

とはゆずちゃんには言えなくて言葉をつまらせていると、ゆずちゃんはニコリと笑って俺に言った。


「僕に気を使ってる?大丈夫だよ、僕は佑都先輩も好きだけど、光のことも好きだから。光が佑都先輩のこと大好きなことくらい見てれば分かるし、それに僕は光の佑都先輩への想いに勝てる自信無いからね。」


どうやらゆずちゃんには、俺の気持ちなんかお見通しだったようだ。ずっと、隠してたつもりだったのにな。俺ってひょっとしてわかりやすいのかな。


でもまあ、バレてしまったのがゆずちゃんならいいっか、って俺は思って、あ、そうだ、佑都には佑都の友人が居るけど、俺にはゆずちゃんがいるじゃん、って思って、そしたら無性にゆずちゃんに縋り付きたくなって、俺は勢いよくゆずちゃんの胸に飛び込んだ。


ゆずちゃんは「うわっ」と驚きながら俺の身体を受け止め、クスクスと笑いながら俺の頭を撫でてきた。


「俺もゆずちゃん好き。」


ゆずちゃんと友達になれて良かった。



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