佑都と光のホワイトデー [ 111/112 ]

今日は、3月14日。ホワイトデーだ。

毎年たくさんのチョコレートをバレンタインデーに貰う佑都は、クッキーがたくさん入った袋を持って学校に登校し、適当にばらまいているのが定番である。


面倒くさがりやの佑都が、個別に返しているところは見たことがないが、俺は知っている。

佑都は毎年、たった一人にだけ、個別にお返しをあげるのだ。


そう。そのたった一人とは……


「俺でーす!ピースピース!!!」


こたつに入って寝転がって本を読んでいる佑都の周りをうろちょろ走り回る。

佑都は俺の存在を無視しがちだから、存在をアピールしたいのだ。


「騒ぐなら自分ち帰れよ!」


すると佑都はうざったそうに、俺に向かってみかんを投げつけてきた。


「キャ!みかん投げるとかサイテー!みかんに謝って!」


俺は悲劇のヒロインのように床に尻をつけると、佑都はまじでうざったそうに俺に向かって舌打ちをしてきた。


やば、どうやら俺がテンション上げ上げの調子に乗りすぎた所為で佑都をイラつかせてしまったらしい。


ほんの少しだけ反省をし、大人しく正座をする。


「佑都佑都。確か俺、佑都にチョコレートをあげた気がするよ。デパ地下で買った美味しいやつ。」


つまり俺は、お返しをちょうだい、と言いたいのだ。


そんな俺に、佑都は「ケッ」と声を漏らしながらこたつからのっそりと出てくる。


そして、こたつの近くにある引き出しの中から可愛くラッピングされた袋を取り出し、俺に向かって投げつけてきた。


そしてまた、無言でこたつに入って本を読み始めてしまった佑都。


しかし俺は、佑都に投げつけられた袋をウキウキしながら手に取って、俺もこたつの中に入り、その後は大人しく佑都にもらったお菓子を食べて、その後を過ごした。


美味しい。
佑都から貰ったホワイトデーのお菓子。


そのお菓子は、幼い頃から佑都にお返しを求める俺のために、と佑都ママが用意してくれているとも知らない俺である。


知らぬが仏ってやつか?うん。


佑都と光のホワイトデー おわり


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