佑都と光の相合い傘 [ 112/112 ]

( ※ 佑都と光 中学生時代のおはなし )


その日の天気予報は、降水確率100%だった。

だから、折りたたみではない傘を持って登校すると、隣を歩く光に「佑都なんで傘持ってんの?」って不思議な顔をされるが、登校中の学生の中で傘を持っている奴は俺だけではない。


「なんでって、雨降るからだろ。」

「え〜?こんなに晴れてるのに?」

「夕方から降水確率100%だぞ。」

「俺天気予報は信じない主義だし〜。」

「まあ信じる信じないは個人の自由ですからどうぞご勝手に〜。」


そう言って、傘をぷらぷらと揺らして学校へ向かった。

傘を持って歩くのは嫌だけど、雨に濡れる方が嫌だから、降水確率100%と聞けば俺は必ず傘を持ち歩く。

しかし、天気予報信じない主義の光くんは、今のこの澄み渡る青い空を信じているようで、両手をブンブンと揺らして機嫌良さ気に俺の隣を歩いていた。





天気は快晴のまま、放課後がやってくる。


「佑都帰ろー!」と声をかけてくる光に返事をして、傘立てから自分の傘を取り出していると、光は自慢気な顔をして「見ろよ佑都!雨降ってねえぞ〜!」と、快晴な空を指差した。


「はいはい良かったねー」


だから別に俺からしてみれば雨が降ろうが降らまいがどっちでもいいのだ。降ったら傘をさすだけだし、降らなかったら降らなかったで良いじゃねえか、と。


なのに、天気予報信じない主義の光がやたらと自慢気なのは少しむかつく。


はいはい。って、あまり相手にはせずまたぷらぷらと傘を揺らして校門を出て、帰路につく。


そして、今日学校であったことをあれこれ話している光の話を聞きながら適当に相槌を打っているところで、突然光は「ん?」と立ち止まり空を見上げた。


「光?何立ち止まってんだ?」

「今ポツッてきた。」


光がそう言って再び歩き始めたところで、ポツ、ポツ、ポツ…と空から雨が降ってきた。


だから、傘を持っていた俺は、サッと傘を広げる。


そんな俺を見て、光はちょっと悔しそうな表情に思えるが、何も言わずまだ平気そうにポツポツと降る雨に濡れながら歩いていた。

しかしだんだんその雨は強くなる。

ポツ、ポツ、からサーッと降る雨に変化する。

そしてこの時、光は俺の持つ傘の中に入ってきた。


「佑都入れてっ!!!」


しかし俺は、そんな光の身体を押しやった。


「やだね!天気予報信じない主義は黙って濡れてろ!」

「佑都ひどい!入れてっ!!!」

「い〜や〜だ〜、あっち行け!」


グイッと光の身体を突き放し、傘を遠ざける。

この間にも、雨はザーザーと強く降り始め、光はしぶとく俺の傘の中に入ってこようとする。


「佑都のバカ!いじわる!入れてっ!」

「い〜やぁ〜。天気予報信じない自分を悔やむんだな。」

「入れろよぉ!!!」

「あっバカ!俺も濡れるだろうが!!!」


無理矢理傘の中に入ってこようとする光を避けていると、自分の制服や鞄まで濡れてしまい、結局家に着くころには2人ともびしょ濡れになっていた。


わざわざ濡れた鞄の中から家の鍵を出すのがめんどくさくてインターホンを押すと、母さんが鍵を開けてくれたが、その直後びしょ濡れになった俺とその後ろにいた光を見て、「佑都傘持っていったでしょ!?」と驚きの声を上げた。


「持って行ったけどこいつが無理矢理傘の中に入ってこようとするから。」

「佑都ママ聞いてよ!佑都が俺を傘の中に入れてくんねえの!!!」

「ったくあんたは!光が可哀想でしょ!こんなにびしょ濡れになって光が風邪ひいたらどうするの!」

「傘を持っていかなかったこいつの自業自得だろ。」

「こらっ!佑都!!!そんなひどいこと言わないの!なら光の分の傘も持っていってやりなさい!」

「なんで俺が………。」


結局、俺はちゃんと傘を持っていったのにびしょ濡れ、さらには母さんに怒られる羽目になった。


「佑都、次は素直に相合い傘しようね。」

「ふざけんな、次は天気予報を信じろバカ。」


佑都と光の相合い傘 おわり


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