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下ネタとは言え永遠と真剣に話し込んでしまい、永遠の家のインターホンが鳴った事には二人ともまったく気付かなかった。
永遠の部屋の扉を突然開けてきた永菜が「なに二人で真剣に話してるん?」と声をかけてくるその後ろには浅見が立っている。
「永菜ちゃんにどうしたら着替え覗いてしまったこと許してもらえるか話してた。」
「もうええから!!光星くんも来はったのにそんな話せんといて!!」
咄嗟についた俺の嘘に永菜の顔が真っ赤になり、フンとそっぽ向いて永菜に立ち去られてしまった。ごめんな、永菜ちゃん…今のはしゃあなくてついた嘘やねん…下ネタ話してたから…。
永菜が立ち去ると浅見が永遠の部屋に入ってきて、ベッドに凭れかかっていた俺のすぐ真横でコソコソ話をしていた永遠の身体にズイッと浅見の手が伸びてきた。
「うわっ…びっくりした。」
永遠の胸元に回した腕で浅見はベッドに腰掛けながらグイッと永遠の身体を自分の方へ抱き寄せ、一瞬で永遠の身体を両腕でしっかり抱きしめている。
えっ…待って?なんなん今の。もしかして俺浅見に牽制された?絶対今の俺から永遠遠ざけたやろ。
「待って浅見?俺やで?」
「ん?」
「いや、『ん?』ちゃうわ。俺やで?俺。彼女、永菜ちゃん。」
知ってるけど?みたいな顔をして首傾げられたけど、絶対今俺浅見に牽制されたよな?心配しなくても永遠に手を出す気なんて俺にあるはずがないのに。
「香月もう来てるんだったら俺ももうちょっと早く家出れば良かったな。」
「侑里姉ちゃんの着替え覗きよってん。」
「えぇ?お前何やってんだよ。」
「わざとちゃうわ!事故や事故!!」
浅見に抱き締められた永遠は、俺を見て笑いながら浅見の胸にもたれ掛かって足を伸ばし寛ぎ始めた。
その伸ばした永遠の足が丁度俺の肩付近にあったから、「肩揉んであげるわ」と永遠はからかうように俺の肩に足を乗せてきたが、無言の浅見に足を掴まれベッドの上に戻されている。それが足であろうと永遠が俺に触れるのも嫌ってか?どう見ても下部のような扱いされてんねんけど。
そんなふうに俺は浅見の気持ちを想像しながら、話題を変えて永遠に話しかけた。
「クラスの人らはいつくるん?」
「11時くらいやで。たこ焼き焼く練習してそのまま昼ご飯に焼いたたこ焼き食べなあかんからな。」
「ふぅん、俺も食べて良い?」
「うん、いいよ。」
永遠の返事を聞いてから、ほなもう俺はそろそろ邪魔したらあかんし永菜ちゃんのところ行こかな……って立ち上がったら、永遠と浅見は二人揃って俺をじーっと見上げてきた。
「俺お邪魔やし永菜のとこ行ってくるわ。」
そう言ってさっさと部屋を出ようとしたが、扉が閉まる前に浅見は永遠の顔を掴んでぶちゅっと熱いキスしている。
うあああああ!!もー見てもうたがな…!!
浅見がっついてんなぁ!!
お前扉完全に閉まるまで待てよ!!
リアルに友人たちのキスシーンを見てしまい、微妙な気持ちになりながら永菜が居るであろうテーブルのある部屋に行ってみる。すると永菜とお母さんらしき人が二人で喋りながらコーヒーを飲んでいた。
…えっ!てか今お母さん居はったんや…!!
「あ、お母さん侑里くんきた。」
「え?この人が侑里くん?いいやん、背ぇ高くて男前や〜ん。」
そんな会話をする永菜とお母さんに今更遅いけど慌ててぺこぺこ頭を下げていたら、「座ってて、コーヒー入れるわ。」と永菜が台所の方に行ってしまった。
いきなりお母さんと二人にされてしまい、緊張しながら恐る恐る椅子に座ったが、お母さんは俺を見ながらにやっと笑い、「聞いたで?永菜の彼氏なんやってぇ?」とシュッと関西のおばちゃんっぽい手の動きを見せながらにやにやしてきた。
いや…、関西のおばちゃんっぽくっていうか、ほんまに関西のおばちゃんやったわ。
友達の親兼彼女の親に失礼なことを考えつつ、「あっはい…そうなんすよ…」とちょっと照れながら頷いていたら、またお母さんはシュッと俺に向けて手を動かしながら「永遠の友達なんやろ?いっつも永遠から話聞いてるで?」とにやにやしながら話してくる。
ほんまに関西のおばちゃんぽさ全開やな…。
見た目はさすが永遠と永菜を産んだお母さんなだけあって細身でお上品な感じだが、言動が関西のおばちゃんくさすぎる。
「サッカー部やのにバスケも上手いらしいやんか〜、永遠がずっとべた褒めしながら永菜におすすめしてたけどほんまに付き合ったんやねぇ〜!!」
恥ずかしい…!お母さんべらべら俺に話してくれるのやめて、俺恥ずかしい…!!永遠が家で言ってること永菜からだけじゃなくお母さんからも筒抜けやんけ!!
「永遠そんな俺のことおすすめしてくれてたんすか…」と照れながら返事をしていたら、その途中でコーヒーを入れてこっちに戻ってきた永菜が「永遠もうずっと侑里は良いやつって言ってきてうるさかったやんなぁ」と会話に加わった。
「そんなん言うたら怒られるで。あの子すぐキレてくるから。」
「ああそやな、黙っとこ。昨日なんかちょっと永遠の寝起きで機嫌悪い時にトイレ被っただけで『俺がトイレ行くタイミングで起きてくんなぁ!』てキレられたしな。いやいや、起きてきたんはそっちやし。」
「あっはっは!!そう言う時は『どうぞー』って譲ってあげなもっとキレられんで?」
「譲るとか言う前にさっさとトイレ入られたわ。私の方が絶対洗面所来たタイミング早かったのに。」
「あっはっはっは、困った子やなぁ。ほんま難しい年頃やわ。」
…も、もうやめてあげてくれ…永遠の家での様子が俺にダダ漏れだ。永遠ちゃん…家では反抗期真っ只中やんけ…。
永遠からこっそり永菜の写真貰ってしまって申し訳ないと思ったけど、これはどうやらお互いさまだな。…と、俺は永遠に少し同情した。
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