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買い出しを終えて教室に戻ってくると、そこに永遠くんたちの姿は無かった。「調理係どこ行った?」って近くにいた人に聞くと「ちょっと前に買い出しに行った」と返される。

「ふぅん」となんてことない風に頷きながらも、そこに永遠くんの姿が無いのがなんとなく嫌だ。俺の目に見える範囲に居てほしい。重症だなぁ…と永遠くんへの執着心にも自分で自分に引いてしまった。


しばらくすると永遠くん率いる調理係が戻ってきて、その手にはスーパーの袋が持たれている。


「みんな〜今から来れる人調理室来て〜!」


永遠くんがそう呼びかけてくるから、俺は永遠くんが胸に抱えて持って行こうとしていたたこ焼き器を代わりに持ち、永遠くんの横を歩いた。


永遠くんの家で作っていた時と同じように、永遠くんはみんなに説明しながらたこ焼きの生地を混ぜ始める。

試作品の中身も永遠くんが最強と言っていたチーズのようだ。


「ちょっと待って固まってきたのが分かったらぁ〜、ひっくり返す!!」


そう言って高速でくるくるくるっとたこ焼きをひっくり返す永遠くんは、クラスメイトたちから「おぉ〜」と拍手されていた。嬉しそうににこにこ笑っている永遠くんがかわいいな。


俺は無意識に、たこ焼きが焼けるのを待っている永遠くんの頭をよしよしと撫でていたら、ジッと一斉にクラスメイトからの視線を集めてしまい、サッと慌てて永遠くんの頭から手を離した。

…え、俺やばい奴すぎだろ。目の前にいるかわいい存在をところ構わずかわいがってしまっている。


「浅見くんちょっとデレデレしすぎじゃない?」

「えっ…?」


試作品を食べながら感想を言い合っている永遠くんたちの様子を後ろで窺っていたら、俺の隣にやって来た浮田にコソッとそう話しかけられてしまった。


「夏休み中良いことあった?」

「…え、…まあ、ちょっとありました。」

「え〜なになに?付き合えた?」


…もしかしてみんなでその噂でもしてるのか?

浮田にまで先程のクラスメイトと同じことを聞かれ、浮田だし良いか。と思ってコクリと頷いたら「やっぱり!」と返されてしまった。


「夏休み前の時点でもう付き合ってたでしょ?」

「…なんで?」

「ん〜、なんとなく。」

「…まあ、当たりだけど。」


そんな話を浮田とコソコソ話してたら、「光星!」と永遠くんに名前を呼ばれながらクイッとシャツを引っ張られた。


「ん?」

「試作品できたから食べてみて?」


そう言われながら俺は永遠くんにクイクイッと調理台の方に引っ張って行かれ、爪楊枝に刺したたこ焼きをあーんと永遠くんの手で食べさせられた。

周囲のクラスメイトからにやにや笑われている気配がして、カッと顔が熱くなる。

「浅見くん照れてる」という浮田の声が聞こえてきてしまい、恥ずかしくてたこ焼きの味なんて全然味わえなかった。

それでも永遠くんに「どぉ?美味しい?」と行かれ、「美味しいです…」と頷くと、得意げに「生地に牛乳混ぜてみてん!」と言われる。…え、そうなんだ。全然わかんなかった…。っていうか全然たこ焼き味わえなかったし。

でもそういや、永遠くんの家で食べたたこ焼きよりもトロトロだったかも…。

周りで試食しているクラスメイトたちも「美味しい」「うまい」と口々にたこ焼きの感想を話しており、永遠くんは「たこは完全に無しにしてクリーミーチーズ焼きって名前で売り出そか!」と提案していた。どんどん名前が変わってくなぁ。


永遠くんが決めたことならクラスメイトはみんな一切文句は無さそうで、「お餅入れたらもっとトロトロになりそうやな!」と話す永遠くんに周囲の奴らはうんうんと大きく頷いている。


俺は『トロトロ』と聞くと何故か頭の中でえっちしている時のとろんとした目で喘いでいる永遠くんの姿や、ローションでぬるぬるになっている永遠くんの姿を思い出してしまい、変態で重症な自分にドン引きして頭を抱えてしまった。

今の俺は本気でやばい、重症だ、ガチでキモい、キモすぎる、死んでくれ。


「ん?どうした、浅見くん。」

「…なんでもない。」

「え?光星どうしたん?」

「まじでなんでもない。」

「なに怒ってるん?」

「いや、怒ってない。」


無愛想に返してしまったから永遠くんに怒っているように思われてしまったようで、後になって永遠くんの機嫌を取るようにクラスメイトが見ている場にも関わらず、永遠くんの頭を胸元に抱き寄せてなでなでと撫でたら、「いきなりなに!?」と永遠くんを驚かせてしまったようだ。

顔を真っ赤にする永遠くんを無言で離したら、「頭おかしくなった!?」と言われてしまい、俺はその通りすぎて返す言葉も無い。まじで頭が狂ってる。


京都旅行に行って、ずっと永遠くんと一緒に過ごし、えっちまでしてしまったから、俺は今まで学校でクラスメイトの前で永遠くんに取っていた態度が明らかに取れなくなっていたのだった。


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