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二泊三日の永遠くんとの京都旅行があっという間に終わってしまった。旅行の時は朝から晩までずっと俺の隣に居た永遠くんが、家に帰ってくると当たり前に横には居なくて、永遠くんの顔が見たくて見たくて仕方がなくなってくる。


旅行の翌日は互いに家でゆっくりしていたから会えずにいたけど、旅行中に撮った永遠くんの写真を気付けばじっと眺めていた。景色を撮るフリをして、俺が撮った写真の大半には永遠くんが写っている。


夏休み中で学校が無いから、永遠くんとは会う約束をしないと会えない。俺は毎日会いたいくらいだけど、あんまり自分から『会いたい』『会いたい』とは言えなくて、永遠くんからの連絡を待ってしまっている。

でも旅行後の二日目にしてもう永遠くん不足になってしまい、それなのに永遠くんからは全然連絡がこないから、【 いつ会える? 】ってラインしたら【 旅行から帰ってきてからずっと爆睡してたわ、おはよう 】という返事がきた。

ふぅん、そうなんだ。……で、いつ会える?


俺の問いかけに対する返事を待っていたら、数分後に【 ベッドから動きたくないから俺の家で良かったらいつでも来て 】という返事をもらえた。


【 じゃあ今から行っていい? 】

【 いいよ 】


永遠くんは可愛い猫のスタンプ付きで俺にそう返してくれた。嬉しい、会える。かわいいかわいい永遠くんに早く会いに行こう。

自分でも呆れるくらい永遠くんを欲してしまっている。旅行に行ってから、…いや、永遠くんを抱いてから、気持ちがさらに増してしまった。


時刻はまだ午前10時を過ぎた頃だったから、半日は一緒に過ごせそうだ。家の人が居るかもしれないから、お気持ち程度にお菓子を買って永遠くんの家にさっそくお邪魔する。

お姉さんは午前中からバイトのようで、永遠くんのお母さんだけ居間でテレビを見られていた。お菓子を差し出せば嬉しそうな顔をしてもらえて少しホッとする。いつもお邪魔してすみません…永遠くんの顔が見れたら満足なので、今日は静かにしてますから…。


永遠くんは俺を部屋に招いてくれると、さっそくベッドの上にごろんと寝転ぶ。


「セックス痛がやっとマシになってきた。」

「えっ……」


腰をなでなでと撫でながら、ポツリと小さな声で永遠くんの口から溢れた言葉に固まっていたら、そんな俺を見て永遠くんにクスクス笑われた。


「俺筋肉無さすぎやなぁ。そう言えばなんかアレから太腿とか足の付け根もちょっと痛いし。」


理由に心当たりがありすぎるのに、自分はピンピンしてるから申し訳なくなる。慣れない体勢と無理な体勢を取らせていたから痛くなるのも無理はない。

返す言葉が思いつかず黙り込んでしまったら、また俺を見ながら永遠くんにクスクス笑われる。かわいい永遠くんの笑みに我慢できず、ベッドに近付き永遠くんの顎を掴んでキスをしてしまった。


「…慣れたらきっと大丈夫になってくるから。」

「ふふっ、そうかなぁ。」

「またやらせてね…?」


永遠くんはキツいかもしれないけど、俺はまたしたくてしたくてたまらない。永遠くんのご機嫌を取るようで申し訳ないけど、片手を永遠くんの頬に触れ、もう片方の手でよしよし頭を撫でながらお願いしてみると、永遠くんはなにも言わずにクスッと笑ってくるだけだった。


「…いや?」

「ううん、いいよ。光星くんからの貴重なお願い事やしな。がんばるわ。」


永遠くんに返事を求めると、永遠くんはそう話しながら俺の後頭部に手を伸ばしてきた。居間にいる永遠くんのお母さんに声が聞こえないようにひそひそ声だから、自然に顔が近くなる。

でもその顔はさらに永遠くんの手で引き寄せられ、チュッと唇が重なった。すぐに永遠くんの唇は離れていったけど、にこっと笑って俺の髪をぐしゃぐしゃと撫でてきたから、そんな永遠くんにまた俺は我慢できなくなってしまい、結局自分から何度もチュッチュと永遠くんの唇にキスしまくってしまった。


家に帰ってからずっと永遠くんを抱いた時のことを思い返してしまってるから、永遠くんとのあの行為を一度でも経験してしまったのは良くなかったかもなぁ…、なんてことを思うようになってしまった。

無条件に永遠くんに触れられる、キスできる、永遠くんを感じられるあの時間が堪らなくて、永遠くんへの愛情が溢れまくってしまい、普段の日常が少し物足りない気がしてしまった。

それでも一緒に居られないよりかは、一緒に居られる時間の方が当然良くて、永遠くんを欲しがる気持ちはひたすら抑える。会って、顔見て、声が聞けるだけで幸せだ。



お昼時になると永遠くんはベッドから起き上がり、元気に「昼ご飯はたこ焼きやで!」と言いながら部屋を出て行った。

俺も追うべきか、部屋で待っておくべきか…悩んでいると、3分ほどしてから部屋に戻ってきた永遠くんに「来て!」と手招きされる。


テーブルの上にはずらりとたこ焼き器や食材が並べられており、小麦粉の袋を手に取った永遠くんは、「まずは小麦粉と卵とだしを混ぜるために小麦粉のグラムを計ります。」と説明口調で話し始めた。


「トゥルルっトゥットゥットゥットゥッ、トゥルルっトゥットゥットゥットゥッ」と3分クッキングのメロディーを口ずさみながら小麦粉のグラムを丁寧に計っている永遠くんに、リビングでテレビを見ていた永遠くんのお母さんがこっちを見て笑っている。


「そしてぇ〜?ボウルに卵を割り〜、水とだしを加え〜、混ぜます。ポイントはぁ〜、ダマができちゃうので小麦粉は少しずつ加えて混ぜないとダメでぇ〜す。」


…永遠くんノリノリだなぁ、かわいい…。永遠くん見てたらついつい頬が緩んでしまう。


「はい!これで生地ができましたぁ〜!」

「おぉ〜。」


ボウルを持って俺に見せてくれる永遠くんにパチパチパチパチと拍手をしていただけなのに、「光星くんは良い子やなぁ〜」と永遠くんのお母さんに何故か褒められてしまった。


「なに?なんか文句あるん?」

「え?なんで?なんも言うてへんやん。はよ焼いたら?」

「うるさいなぁ!今から焼くわ!!」


うわぁ…、いきなり口喧嘩し始めた…。

突然攻撃的にお母さんに言い返している永遠くんだが、お母さんは余裕の態度で「油敷きや」と口を挟んでいる。


「うるさいな、分かってるわ!!今から敷こ思てたんや!!」

「あーそうやったん、ごめんごめん。」


……永遠くん反抗的だなぁ。さすがのお母さんは永遠くんの発言をサラッと躱して息子の扱いにはかなり慣れていらっしゃる。

そしてお母さんに言われた通りに永遠くんはちゃんとたこ焼き器に油を敷いてから、たこ焼きの生地を流し込んでいた。


お母さんに口出しされるのが嫌なのか、永遠くんがチッと小さく舌打ちして小声でボソッと「ほんまうっとしいなぁ」とぼやいていたのは聞かなかったことにしよう…。


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