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暫くラインでやり取りしていたと思ったら永遠くんのスマホには電話がかかってきた。


「あ、郁馬から電話かかってきた。もしもし郁馬〜?なに〜?」

『暇そうやったから電話した。』

「俺暇ちゃうで?」

『えぇ?でもラインしてきたやん。』

「今光星くんと遊んでんねん。」


永遠くんは俺の身体に凭れかかったまま友達と通話し始めた。俺はよしよしと永遠くんの髪を撫でながらスマホから聞こえてくる男の声に耳を傾けていると、永遠くんは俺を見上げてにこっと笑みを見せてくれる。ああかわいい…。またえろいことしたくなってきた…


『は?また?もうええってその報告。いつこっち戻ってくるん?はよ戻って来いよ。』

「夏休みに光星と京都遊びに行くわ。」

『はっ!?光星はいらんって!!なんで二人なん!?永遠一人で来いよ!!』

「もう約束したも〜ん、ほなまたな〜。」


永遠くんは相手の返事も聞かず、そこでブチッと通話を切った。

郁馬くんとやらが俺の存在をめちゃくちゃ嫌そうにしているのが伝わってきて、通話を聞きながら苦笑していた俺に永遠くんはくるりと振り向いて謝ってくる。


「ごめんな、悪い奴じゃないんやけどあいつ俺のこと好きすぎて光星にヤキモチ妬いてんねん。」

「……その友達、多分俺と同じ意味で永遠くんのこと好きだよな?」

「え?ううん、それはないない。小学生の頃からの友達なんやで?ほんまの弟みたいな感じで俺のこと可愛がってくれてるんやと思うで。」

「えぇ…、そうか?」

「そうやって。俺のことそんな目で見てくるのは光星だけやで〜。」

「んん…、そんなこともないと思うけど…。」


普通弟の写真って要求する?百歩譲ってかわいくて仕方のない弟だから写真が欲しかったとしても、弟が転校先で仲良くなった友達にそこまで嫉妬する?永遠くんのお姉さんは永遠くんに『友達できて良かったな』って言ってたけど、普通はそういう気持ちを抱くものだと思うんだけどな。

この“郁馬くん”から永遠くんに対するものすごい執着心を感じるのは気のせいだろうか…?


「うわ、俺がいきなり電話切ったから郁馬が嫌がらせみたいにライン送ってくる。」

「ん?」


永遠くんがそう言ってまたスマホ画面を見るから俺も後ろから覗き込んだら、そこにはトントンと立て続けに送られてくる郁馬くんからのメッセージが表示されていた。


【 なんで久しぶりに会えるのに友達連れてくるん? 】

【 永遠一人で来いよ 】

【 俺の家泊まったらいいやん 】

【 夏休み中ずっとおってもいいで 】

【 俺がこんなに会いたがってるのに! 】

【 永遠俺に会いたくないん? 】


そんなメッセージの下には猫が暴れているようなイラストの横に【 やだやだ 】と書かれたスタンプが何個も押されていた。


「…俺一緒に行かない方が良さそうだな。」

「えぇっ嫌や!光星と一緒に行きたい…!俺銀閣寺行ったことないから一緒に行きたいねん!あと南禅寺も。」

「あれっ、俺どっちも修学旅行で行ったことあるんだけど。」

「えぇ!?あんの!?」


まさか俺が行ったことあるとは思わなかったのか、永遠くんは目をまんまるく見開いて驚いていた。俺は永遠くんが行ったことない事に驚きなんだけどな。


「京都住んでたら逆に行かねえのかな?」

「うーん…そうやなぁ。金閣寺とか清水寺は小学校とか中学のなんかの課題の時行ってんけどな。課題やからだるかったし嫌々行ってたけどこれからは観光目的で行ってみると新鮮で良いかも。」


永遠くんはそう話しながら、ちょっと楽しそうに京都の観光地を検索していた。

ただ忘れてるだけかは不明だが、郁馬くんからのラインを永遠くんは見事にスルーしていて、彼の心情を考えると、俺は少し苦い気持ちになった。





翌日学校で俺は香月にも意見を聞いてみようと、昼休みの昼食後、永遠くんがトイレに行った隙にこっそり郁馬くんの話をしてみた。

すると香月ははっきりと答えてくれた。


「それ絶対好きやん。」

「やっぱそう思うよな?」

「もし永遠が転校したら寂しいけど写真送ってくれとは俺言わんで。永菜の写真やったら欲しい。」

「ふふっ…俺もそう思う。」


俺も永遠くんの写真だったら何枚でも欲しい。
会えない時でもずっと見ていたいから。
だから郁馬くんの思う気持ちが俺には痛いほど分かる。“分かる”ってことは、つまり俺と郁馬くんの永遠くんを想う気持ちが同じものだから。


「永遠男子からモテモテやん。」

「ん?誰がモテモテ?」

「永遠。」


話の途中で永遠くんがトイレから戻ってきてしまった。『モテモテ』と言われてなにも言わずにキョトンとした顔をしているが、その顔がすでにもうかわいすぎる。


「京都の友達にむっちゃ好かれとるみたいやな。」

「え?…あぁ、郁馬の話してたん?長年の友達やからな。俺がおらんと寂しいみたいやわ。」

「まあな。永遠が転校したら寂しいわ。」

「さすがにもうしいひんけどな。」

「そりゃ良かった。永遠はもう俺らのもんやで。」

「…いや、…俺のもんだけどな。」


香月が永遠くんの頭を抱き寄せてぐりぐりと頭を撫でていたから、ただ可愛がっているだけだと分かりつつもしれっと永遠くんの手首を掴んで引っ張り、香月から永遠くんを引き離した。


「あ、ごめんごめん。人様のもんにベタベタ触ってしもた。気ぃつけなあかんな。」

「『俺のもん』やって。…ふふっ」


永遠くんが俺の発言にニヤニヤと笑ってきたから、俺は自分の発言が恥ずかしくなってしまった。

いやでも合ってるだろ…。

永遠くんはもう俺のものったら俺のものだ。


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