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「侑里の元カノ見てたら人は顔より中身が大切ってよく分かるなぁ。」

「ほんまそれやで。」

「でも俺の光星くんは顔もかっこよくて性格も優しくて頭も良いんやで?すごいやろ、砂漠で拾った俺のアレキサンドライト。」

「は?なんやそれ。」


昼休み、昼食を食べながら永遠くんが昨日の香月の元カノの話を始めたと思ったら、その流れで俺のことをめちゃくちゃ褒めてきた。


「知らんの?宝石の王様やで。光星くんにぴったりやろ。」

「ふぅん、よかったなぁ〜。」


俺は照れて何も言えなくなっていたが、香月のどうでも良さそうな返事を聞きさらに恥ずかしさが増してしまい、暫く熱くなった顔で二人の会話を黙って聞きながら日替わり定食を食べ続ける。


「昨日侑里の元カノも光星の顔見た瞬間目の色変えよったしな。」

「そういや俺と付き合ってた時も普通に同じクラスのイケメンと仲良くしとったわ。」

「なんで侑里あそこまで元カノに執着されてるん?男なら侑里以外にもあの人の周りにいっぱい居るやん。」

「それは俺が一番聞きたいわ。」

「香月の熱烈アピールが受けてて一番気持ち良かったんじゃねえの?お前好きって態度いつもどストレートに出すタイプだし。」


俺はようやく“照れ”がおさまって顔の熱も引いてきたところで二人の会話に口を挟むと、永遠くんがパクッと冷麺の上に乗っていたプチトマトを口に入れ、「んん!」とお箸を口に咥えながら頷き、「それはあるかもしれん」と同意してくれる。永遠くんかわいすぎ。


「でも別れてから結構経ってるんやろ?今更来られても迷惑なだけやんな。また学校来られるようやったら一回ちゃんと話してケリ付けた方が良いかもしれんなぁ。」

「え〜っ…でも俺好きな人いるって言うてんねんで!?まだなんか話すことあるか?」

「好きな人居ても元カノには関係ないんちゃう?自分に自信ありそうやし、押したらイケると思ってるんかも。顔はほんまに可愛いかったし、顔見せたら絶対また好きになってくれる〜って勢いで会いに来てるんやわ。」


永遠くんのそんな意見に俺もうんうんと納得しながら話を聞くが、香月はめちゃくちゃ嫌そうに顔を顰めてしまった。元カノにとっては残念なことだが、香月の思いが揺らぐことはもう絶対に無さそうだ。


「こんなにもう好きじゃないっていう態度を見せてるのに!?ほなもう次ははっきり嫌い言うたろか!?いっつも男連れてるお前のそういうところが嫌いやねんって!!」

「まだ言うてへんかったん?はよ言えよ。」

「…いや違う、俺は言うてた。何回も言うてた。男と連むのやめて、男と一緒にサッカーの練習見るんやめて、なんでいっつも男といるん?って。言うても言うてもあいつは『あっちから寄ってきた』って言うだけやもん…。もう言うだけあほらしくなってくるやんか。」

「あぁ〜…うん、そうやなぁ。口で言うてわからん人にはとことん無視するしか無いんかもなぁ。」


またいつ現れるか分からない香月の元カノの対処法を俺も一緒にあれこれ考えてみるものの、結局はそれが一番なのかもなぁ…と、俺も永遠くんの意見に同意するように頷く。


「まぁ…香月は元カノのことはもうあんまり気にしないようにして、テスト勉強してたら良いんじゃねえの?」

「うん、それが良いわ。元カノに気ぃ取られて赤点のオンパレードやったら洒落にならんしな。」

「うえぇ…ッ怖いこと言うなよ……もうなんか俺気分悪なってげぇ吐きそうになってきたわ…。」

「吐いてきたら?元カノの前で。」


淡々とした態度でそう口にする永遠くんの発言に、香月は何も言わずに口を押さえて黙り込んだ。

本気か冗談か分かりにくくて俺は何も反応できずにいると、続けて永遠くんが「一番効果的ちゃう?」と言っているのを聞くがまだ俺には本気か冗談かが分からない。

でも何かしら反応しようと「ふふっ」と笑ったら、永遠くんは俺を見てにこっと笑いながら「なぁ!」と言ってきたから、あ…良かった、冗談だったんだ。と思いながらうんうんと頷く。


でもその後香月がボソッと「…永遠はかわいい顔して容赦ないなぁ。」と呟くように言っていたから、俺はまた分からなくなった。

かわいいかわいい俺の永遠くんの“本気の言葉”か“冗談の言葉”かを見極めるのには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「目には目を歯には歯を、やで?」

「どういうこと?」

「元カノに気分害されてるんやからこっちもゲロ吐いて気分害さしたれっていう単純な話やんか。」

「えぇ〜俺そんなお下品なことできひんわ。」

「ふふっ…お下品て。」

「おい、なにわろとんねん。」

「あっごめん。」


香月の口から不似合いな言葉が出てきたからさすがに笑うところだろ、と思って笑ったらめちゃくちゃ鋭く突っ込まれてしまい、慌てて謝ってしまった。

今のは笑うところじゃねえのかよ?と思っていたら、不思議なことに俺と香月のやり取りに永遠くんがクスクスと笑っている。


「今のは普通に笑っていいよな?」と永遠くんにコソッと聞けば、永遠くんはクスクスと笑ったままうんうんと頷いてくれる。


「『なにわろとんねん』までがセットで侑里のギャグみたいなもんやから全部笑ったらいいんやで。」

「ちょっと、そんな解説するんやめてくれへん?なんか恥ずかしなってくるやん。」

「だって光星が困ってたんやもん。」

「どこに困るとこあった?俺が実はお下品なやつって言いたいんか?」

「誰もそんなことは言うてへん。」


俺が途中で話を逸らしてしまったことが原因だけど、だんだん変な方向に話が進んでしまい、永遠くんは「侑里はほんまにあほやなぁ」と言って笑っていた。


俺はあほっていうより天然ボケじゃねえのか?と思ったけど、考えてみればこの二つの違いが俺にはあまりよく分からなかった。


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