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「ねえねえ、一条くんって彼女いる?」

「いや?いねえけど。」

「好きな子とかは?」

「いや俺に聞かずに本人に聞けよ!」


どちらかと言うとクラスの女子とよく話す方の俺は、湊とのことをよく聞かれたりする。

それは勿論、俺が湊と仲が良いからなのと、女子が湊のことを気になっているからだ。

無愛想ではあるが顔が良く、イケメンだかっこいいなどと持て囃されているのが、俺の親友、一条 湊。


身長は俺より少し低いものの、それでも平均以上はある。程よくついている筋肉や、綺麗な素肌を俺は間近でよく見ている。

女子が湊をかっこいいなどと騒ぐ気持ちはよく分かる。

けれど俺にとっては、かっこいいと言うよりも、まるで可愛いく見えるフィルターがかかっているのかと疑うほど、湊のことが可愛いくて可愛くてしょうがないのだ。


例えば寝顔とか、美味しそうにご飯を食べる姿だとか、不機嫌そうに俺を睨むその表情さえも。


思わず欲情して湊を襲ってしまわないかと心配になるほど、俺にとって湊は可愛い。


「つばさー、今日放課後どっか寄って帰ろーぜ。」


噂をしていれば現れた湊に、キャッ!と側にいた女子が小さく声を出した。わかりやすい子なこと。その子は、湊に熱い視線を送っている。


「ああ良いけど。どこ行く?」

「ケーキ食べたい。」

「は?ケーキ?お前女子かよ。」

「パフェでもいい。」

「だからお前、女子かよ。」

「なんか学校の近くに店新しくできたみたいだけどクソうまいらしい。行きたい。」


湊はそう言って、目を輝かせていた。クソ可愛い。

…と言いたい気持ちを抑え、「はいはい放課後な。」と適当に頷く。


側でずっとその話を聞いていた女子が、羨ましそうに「いいなぁ」って俺の顔を見ながら呟いていた。

ははっ、いいだろ。
湊と放課後デートだ。なんつって。





女性客、女性客、女性客、たまに男性客がいるかと思えば隣には可愛い彼女。


湊が学校の近くに新しくできたという店に男二人組で来てるのはまさかの俺たちだけだった。


「ほらー、やっぱ女子ばっかじゃねえか。」


多少の恥ずかしさから文句を言ってみるが、湊は少しも気にした様子を見せずにとっとと店内の空席へ向かっていき、メニュー表を手に取り眺めている。


「やっべー、超うまそう。パンケーキも食いてえけどこっちのイチゴパフェもいいなぁ。翼イチゴパフェな。」

「は?」


いや俺はアイスコーヒーで。


って俺が口にする前に湊は店員を呼び、俺の分まで注文してしまった。目がキラキラしている。…クソッ、可愛い。


「勝手に頼むなよ、俺甘いもんそんなに好きじゃねえんだけど。」

「俺が食べるから大丈夫。」

「この自己中野郎。」


いくら口では罵ってても、結局は湊の言うこと聞いちゃうんだけど。


その後、店員の手によって運ばれてきたパンケーキとイチゴパフェに、湊の目はキッラキラ輝いている。やっぱり可愛い。


「やべー!まじうまそう!」


フォークを手に持ち、さっそくパンケーキをつつき始めた湊を眺め、数秒遅れで俺もスプーンを手にしてパフェを食べ始めた。…甘すぎ。


まったく気分じゃないパフェをゆっくりすくって食べていると、俺の正面に座る湊から手が伸びてくる。


勝手にパフェをすくって味わい始めた湊に俺はなにも言うこともなく、パフェの中身は次第に無くなっていった。


俺の分のはずのパフェだが、3分の2を湊が食べたと思う。もう別にいいけど。

湊が満足そうだから俺は何も言うまい…。


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