お風呂でクラクラ* [ 19/20 ]
俺たちは、二人きりの時間をうんと堪能しようと一緒に風呂に入ることにした。
「一緒に入る?」って言い出したのは湊からで、それじゃあ、まあ、断る理由もねえし…と俺は少し照れ臭さを感じながら頷く。
「翼さぁ、俺のどこ好きになったん?」
頭を洗っていた俺は、先に身体と頭を洗い終え、湯船に浸かっていた湊から突然そう問いかけられる。
シャンプーが目に入らないように瞑っていた目をチラリと開けて、湊に視線を向けると、浴槽の縁に寄っかかって俺を見下ろしていた湊と目が合う。
「どこ?…んー、どこだろ。わかんね。」
「はあ〜?それほんとに俺のこと好きなんかよ。」
「それはガチ。」
「ほんとかよ。じゃあいつから好き?」
おお、今日はやたらグイグイ聞いてくるな。
湊とこんな話をするのは初めてだ。
てか湊の濡れた髪がちょいそそる。
やべ、見ない方がいい。…と、再び俺は目を瞑った。
「中学ん時からお前やたら女子に告られてたじゃん?あれ見るたびなんかもやもやしてた。」
「てことは中学ん時から俺のこと好きってこと?」
今日はまじでグイグイ聞いてくる。髪を洗いながら答えた俺に、湊はさらに問いかける。
「あ〜、多分そんくらいじゃね。」
「へえ、じゃあ俺の方がなげーわ。」
「……エッッ!!?」
思わぬ湊の言葉に俺は、驚きで勢い良く顔を上げた。シャンプーが目に入ってしまったようでちょっと痛い。まあそれはひとまず我慢するとして。
つまり湊の方が先に俺を好きになったってこと!?
「小6の修学旅行でさあ、俺朝起きたら隣の布団で寝てた翼のこと抱き枕にしてたんだよ。すっげー寝心地良かったんだよなぁ…。」
「あ!それ俺知ってる!お前寝てたから知らねえだろうけど、クラスのやつらにクッソからかわれてたからな!一条が茅野を抱き枕にしてる〜って!」
唐突に始めた湊の思い出話に、俺はかなり覚えがある。修学旅行で初めて湊と一晩一緒に眠った日、湊が俺の布団にまで侵入してくるから、この時俺の中で“こいつは寝相が悪いやつ”というイメージが出来上がった。
「ぶっちゃけそれで翼に目覚めたところある。あ、こいついいわ〜って。」
「ぶはっ!なんだそれ!」
喜びや照れは勿論あるものの、抱き枕から発展した湊の俺への気持ちに思わず笑ってしまった。
どおりでこいつ、俺のことしょっちゅう抱き枕にしてたわけだ。やべー、相思相愛なのがめちゃくちゃ嬉しい。
俺はニヤニヤする口元を隠すように、俯いて頭にシャワーをぶっかけてシャンプーの泡を流した。
頭を洗い終え、シャワーを止めると、一瞬シーンと静かな空気が流れる。チラリと湯船に浸かる湊に無言で視線を向けると、湊はサッと浴槽の端に寄った。
「…俺入ったらせまくね?」
「嫌なら入らなくていいけど。」
「嫌なわけねえだろ。くっついてやるからな。」
勿論照れ隠しで言っただけだ。
男二人で入る浴槽が狭かろうが、湊と一緒に入るのが嫌なわけが無い。
ザバッと湯船に浸かり、俺は狭い浴槽の中で湊の身体をグッと引き寄せた。これも照れ隠しである。
「うわっ、びびった。」
「恥ずいんだよ。ちょっと慣れさせろ。」
「わはは翼サン、なんか硬いやつが腹に当たってるんすけど。」
「…笑うな。」
俺のアレが早々と勃起してしまったらしい。
いやこの状況で興奮しない方がおかしいと思うんだけど残念ながら湊はそうでもないようだ。
「ヤる?ここで。俺いいよ。」
しかし意外にもノリノリな湊が、俺の首に腕を回してキスをしてきた。
「ン、…ちょ、ここではやばい、…のぼせる。」
湊からキスされただけでなんかもうクラクラする。
湊はそうでもないのかと思いきや、気付けば湊の硬くなったモノも俺の腹に当たっており、さらにゆらりゆらりと腰が揺れはじめた。
こんな湊を見るのは勿論初めてで、エロい湊の姿を前にするだけで俺はすげえ興奮した。
「ンッ、ハァ…つばさ、ベロだして…」
湊の言われるがままに口から出した俺の舌に、湊は自分の舌を絡めてくる。
とろんとした目で俺を見る湊が色っぽい。
これはちょっと、まじでやべえぞ。
湯船の中なのが特にやばい。
クラクラして余計に息が上がる。
やばい、やばいこれもう俺イクんじゃね!?とまだキスしかしてないのにと慌てた俺は、湊の身体を抱きかかえてザバン!と立ち上がり、湯船を出た。
「みなと、おれ死にそう…」
「へ?」
「ベッド行かせて…。」
「…ふ、…翼ザッコ。」
湊はクラクラする俺を見て、俺をバカにするように笑った。
お風呂でクラクラ おわり
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