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俺に好きな人がいると気付かれてから、湊の態度がなんとなく素っ気なくなった気がする。


いまだに俺の好きな人を湊に教えてやらないのが原因かもしれない。ちょっとこの調子が続くと辛いな…と思いつつ。

しかしこれはどうすることもできない。
解決策としてひとつ、新しく好きな人を作ることだが、これにはまったく自信が無い。

だって俺、重症なくらい湊のことが好きなんだよ。


そう言えば変化がもうひとつ。


田村さんがまったくと言っていいほど俺や湊に絡んでこなくなった。あと藤岡さんも。


前まであんなに話しかけられたのにこうも近づいて来なくなると逆に気味が悪い。まあいいけど。


今日は中間テストが近いということで、俺の家で勉強することになった。


素っ気ない態度の湊ではあるが、こうしていつもと変わりなく家には上がってくる。


…素っ気ないのは俺の気の所為なのかな。


夕飯を食べ、時刻は午後8時を過ぎたところだ。

小さな折りたたみテーブルを挟んで、湊と向かい合う。英語が苦手な湊は、英語のテスト対策プリントの問題を真面目に解いている。


数十センチ先には、サラリと細い湊の髪。


まさか触れるわけにもいかないが、触り心地が良さそうなその髪にサラリと指を通してみたい。


などと欲望を抱いていたところで、湊の髪にゴミが付いているのを見つけてしまった。どうやら俺の願望が叶いそうだ。


ゴミに手を伸ばすついでにサラリと髪に触れてしまった。ゴミ、ゴミがついてたんだ。

と言い訳をしようとしたが、予想以上の大きな反応を返されてしまった。


ビクッと肩を震わせながら、湊は大きく目を見開いて顔を上げた。


「え、あ、ごめん、髪にゴミついてたんだけど…」


そのゴミを見せつけるように言えば、湊は「びっくりした…」と小さく呟いた。


そんなに驚かせてしまったか。

ちょっと手つきがやらしかっただろうか、いやそんなことはないはずだ。


「湊風呂はどうする?先入る?」


今日も泊まってくであろう湊に問いかけると、湊は英語の勉強がひと段落ついたら入ると言うので、俺が先に風呂に入ってくることにした。


なんかちょっと、返事がぎこちなかったな…。

男が男の髪に触るのって変か…?

いや俺はただゴミを取っただけなんだけどな、って一人心の中で必死に言い訳した。


風呂を出てタオルで髪を拭きながら部屋に戻ると、湊は勉強を休憩してるようだった。


俺のベッドに寝そべって、スマホをいじっている。


「お先〜。」


声をかけると、湊はむくりとベッドから起き上がった。少し眠そうにしながら風呂へ向かう。


入れ違いに俺は、自分のベッドにボフッと倒れ込んだ。ベッドには湊の体温が残っている。枕に鼻を寄せて、スン、と思い切り空気を吸い込んだ。


うわ、今の俺やっべえ、なんか変態臭かったぞ。

…って言ったってこれ俺のベッドだけどな。


枕の匂い嗅いだところで別に湊の匂いがするわけでは無く。いつもの嗅ぎ慣れた自分の枕の匂いだった。

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