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「えっと、じゃあ…体力測定の持久走のタイム上位5名が1000メートルリレー出場ってことでいいかな…?」


杉谷くんの言っていたことが嘘であってくれと願っていた俺だったが、教卓前に立つ体育委員の控え目な言葉に、5名を除くクラスメイトたちはうんうんと首を縦に頷く。その5名の中には、俺も含まれていた。


杉谷くんが言っていた通り、ほんとにSクラスには足が速い人があまりいないようで、好き好んで1000メートルリレーに出てくれるような物好きな人も居なかったから、ほんとに持久走でクラス順位3位だった俺がメンバーに選ばれてしまった。


「えっと…次にクラスリレーなんだけど…、こっちも50メートルのタイムの上位5名に走ってもらうってことでいいかな…?」


体育委員はまたしてもそう言いながら、上位5名の名前を資料片手にカツカツと黒板に書き始める。


そしてまた俺の名前が書かれていた。ていうか1000メートルリレーもクラスリレーもだいたい同じメンバーだった。


「…まじで…?俺50メートル2番なの…?」


絶対嘘だろ…と口から不満が溢れそうになっていると、俺の隣の席のクラスメイトが「スポーツ大会で走りたく無いから体力測定で手抜いてる人多いよ。」と聞きたくなかった情報を教えてくれた。


「…うわ、まじで?最低…絶対俺より速い人いるだろ…。」

「いやっでもみんな手抜かなくても新見くんの方が速いと思う!!」


げんなりしながら机に顔を突っ伏すと、後になって俺を持ち上げるようなことを口にする隣の席のクラスメイト。そうは言ってもらえても、全然嬉しくはない。


中学ではクラスで速い人みんな運動部の人たちで、俺はクラスリレーなんて出たこと無かったのに。


こんなことになるなら、俺だって体力測定で手を抜いたのに。…いや、そうは言っても俺だって8割くらいの力で走ってるのにそれでも上位なのだから、やっぱりSクラスには鈍足の奴ばっかなのかも…。


「新見くん、一緒に頑張ろうね…。」

「俺も…あんまり速くないけど頑張ろうな。」

「僕も、この中で一番遅いけどよろしくね…。」

「俺新見くん居るから超頑張れるよ。」


リレーに選ばれたメンバーはみんな自信無さそうに俺に話しかけてくれるが、一人だけやたらウキウキした様子で話しかけてくれるのは、1000メートルリレーでも短距離の方でも1番足が速いクラスメイトだった。


「俺の分まで頑張ってね。俺そんなに速くねえから…。」


そのクラス1位にポンポン、と肩を叩きながら言えば、「うぃっす!がんばるっす!」とウキウキしながら敬礼してくれた。…おお、頼もしいな。


俺はこのクラス1位の生徒に、精神的にもかなり救われたのだった。



「りゅう〜…俺1000メートルリレー出ることになった…。」


放課後になって俺のクラスまで迎えに来てくれた隆の顔を見た瞬間に、俺は嘆いた。


しかしりゅうまでなんとなく不機嫌そうな顔をしながら、「まじ?」と俺の声に耳を傾ける。


「俺もなんだけど。」

「…あ、隆も?」

「体力測定で持久走クッソ手抜いてるのバレてて総スカン食らって出さされる羽目になった。」

「うわぁ…りゅうちゃんかわいそう。」


それいじめじゃん。俺のクラスの奴なんか手抜いてて回避されてる奴ばっかなのに。隆が不機嫌なのも納得だ。


「だろ?倖多なぐさめて。」

「今日から一緒にランニングする?」

「えぇ?そんなのわざわざやんないよ。」


そう言いながら、鬱陶しそうに前髪をかき上げ、両手をポケットに突っ込みだらだらと歩き始める隆。

めちゃくちゃ不機嫌だな。よっぽど理不尽に1000メートルリレーを押しつけられたのだろう。

珍しく手も繋いでこようとせず、口数もかなり少ない静かな隆の隣を歩いて、俺は寮に帰宅した。


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