3 [ 44/172 ]




母の日のプレゼントは、小学生の頃から少ないお小遣いをりなと出し合って買っていた。

例えばハンカチとか、ポーチとか。
りなが可愛いというものを選んで買っていた。


「くれるの?ありがとう!」と嬉しそうにする母さんに、「りなが選んだんだよ!」と言って楽しそうに話す妹。


「るいもありがとね。」と母さんにお礼を言われる中、りとは毎年興味無さげにそっぽ向いていることが多かった。


今年も、そんな日がやって来た。

りなとプレゼントを買いに行く約束をして、一旦家に帰宅する。

母さんは用事があって出かけているらしく、りなは今がチャンスだと言わんばかりに俺に【 早く帰ってきて! 】というメールを送ってきた。プレゼント買いに行ってるのがバレたら嫌だ、とか、そういう理由で。


「ただいまー。」

「お兄ちゃんおかえり!早く行こっ!」

「うん分かった分かった、ちょっとお茶飲ませて。」


と、家の中に上がり、冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。チラ、とリビングに視線を向けると、相変わらずの弟がソファーに寝そべってテレビを見ていた。

おーい分かってんのかー今日母の日だぞー。って別にわざわざ言わねえけど。こういうイベントは個人の気持ちが大事なわけだし。と思いながらゴクゴクとお茶を飲み干していると、りとの視線が俺の方に向いていた。


「……航は?」

「航?今日は航も自分ん家に帰ってるぞ。」

「ふぅん…。」


っておいおい、なに航に興味持ってんだよ!?今日は母の日だっつーの!

俺の返事を聞いてすぐ興味が失せたように俺からそっぽ向いたりとの身体を、俺はソファーから引きずり落とした。


「うわっ!なにすんだよ!」


それから床に転がるりとの尻を蹴り、「お前もたまには母さんになんかしてやれよ!」とりとを見下すと、りとはむくりと身体を起こす。

りとは何も言わずにちょっとむっすりしながら、リビングから立ち去ってしまった。

機嫌損ねさせてしまったか。
まあいいや。って使ったコップを洗う。

しかし数分後、部屋に行ったと思ったりとが財布を持って再び現れた。


「あ、お前もプレゼント買いに行く?」


問いかけると、りとは無言で頷いた。

よしよし、えらいぞ弟。

最近のりとは反抗期が終わったとかなんとかりなが言ってたけど、その通りで前より少し大人になったのかもしれない。


「えー、りとも行くのー?」

「あ、りなせっかくりとがプレゼント買う気になってんだから余計なこと言うなよ?りともお金出してくれる分負担額減るぞ?」

「あ、それはラッキーだね!よし行こー!」


負担額が減るって聞いた瞬間テンションを上げる妹と、無言でちょっと何考えてんのか分かんねえ弟を連れて、地元のショッピングモールに向かった。

そう言えば兄妹3人で出掛けるのっていつぶりだろう。

なんか少しだけわくわくした。


[*prev] [next#]

bookmarktop

- ナノ -