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母の日は、久しぶりにそれぞれの家に帰ろうかっていう話をるいとしていた。プレゼント買って帰ろうって思うけど、なにあげたらいい?

俺にはそういうセンスが全然なくて、るいに相談すると、るいは「航が良いって思ったものあげたらいいと思うぞ」って言うけど、それが分からないから困っているのだ。


「るいは何かあげんの?」

「んー、多分りなと割り勘でなんか買うと思う。」

「あー。いいなぁ、妹。俺も妹欲しいな。一緒にプレゼント買って割り勘してくれる妹。」


まあるいとりなちゃんのように仲が良い兄妹になれるかはさておき、羨ましい。

るいとの会話で、妹がいるるいを羨ましく思ってしまった俺だが、るいは言った。


「航もお兄さんいるじゃん。」

「…えぇ。いるけど。」


何気なく言ったるいの言葉に、俺は思い切り顔を顰めてしまった。兄ちゃんと割り勘でプレゼントとかないわ。


「りとくんとるいは割り勘する?」

「んー。りととはあんまり。」

「それと一緒だぞ。」

「ふぅん。そっか。」


って、りとくんで例え話をすると、るいは納得したように頷いた。


「りとも割り勘に参加してくれたらもっといいプレゼントあげれるんだけどなぁ。あいつイベント系全部スルーするしなあ。」


不満そうにりとくんの愚痴を言っているるいの言葉に、確かに割り勘なら良いものあげれるな。って俺もふと考える。

そこで、俺はスマホを片手にダメもとで兄ちゃんに声をかけてみることにしたのだ。


【 母の日プレゼント割り勘で買お 】


数時間後に、兄ちゃんから返事が返ってきた。


【 美顔器なんかどうだろうと思っている。ちょっとるいきゅんに意見を聞いてみて。 】


……は?美顔器?

兄ちゃん返事の内容ちょっとズレてるから。


「なあるい、兄ちゃん美顔器あげようと思ってるらしいんだけどるいに意見聞いてみてくれだって。つーか美顔器ってなんだ?」


兄ちゃんからの返事内容をそのままるいに話すと、るいは「…え?美顔器?…い、良いんじゃねえの…?俺はよくわかんねえけど…。」ってちょっと苦笑していた。


るいが苦笑していたからそのまま兄ちゃんに【 るい美顔器に苦笑 】と返信すると、【 じゃあ今のはなし。 】と返ってきた。

なんだかんだで兄ちゃんもるいの意見を参考にしようとしているあたり、るいのイイ男っぷりを認めてくれているなと思った。うへへ。


兄ちゃんにメールを返信せずにいると、その後待ち合わせ場所や時間が書かれたメールが来た。

どうやら一緒にプレゼントを買いに行くことになっていた。


【 母ちゃんには内緒な。 】


ってそれこっちのセリフだから。

母ちゃんには【 母の日に家帰る。 】とだけ連絡すると、母ちゃんは【 やったあ! 】とその連絡だけで喜んでいた。

どうやら“俺から連絡する”、ということが、母ちゃんにとってはとても嬉しいことのようだ。

高校生ん時散々言われたからな。

たまには連絡しろ、なんのための携帯だ!って。


ああ、俺も大人になったな。

なんつって。


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