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「るいきゅん、さっそく頼み事をして悪いんだが俺はネクタイを結ぶのが苦手でな。」


そう言いながら、早くも完璧にスーツを着こなしている超絶イケメンな俺の自慢のダーリン、矢田 るいにネクタイを差し出した。するとるいは、クスリと笑いながら俺の首にネクタイを通し、器用に結び始めてくれる。

顔と顔の距離30センチくらいで、ネクタイを結んでくれているるいの顔面を近距離でポーッと見つめる。かっこいいなぁ。素敵だなぁ。


「あれ?つーかお前また身長伸びた?」


かっこいいるいに見惚れていたところで、俺はふと気付く。チラリと少し見上げなければるいと目が合わないことに。


るいは俺の問いかけに、またクスリと笑ってから、結んでくれた直後のネクタイをグイッと引っ張られ、次の瞬間「チュッ」と唇が合わさった。


「航は変わってねえな。」


チュッと唇を離したあと、るいはニッと笑って俺にそう返した。

ちょっと身長差が開いたのは悔しいけど、背も伸びてますますイケメン度が上がるるいは、まじで俺の自慢の存在だ。


「あぁ…やだなぁ。るいの周りに女子大生群がる光景が目に浮かぶぜ…。」

「それこっちの台詞な。」

「何をおっしゃいますやら。」


またもう一度キスをしようとした時、家の中にインターホンの音が響く。


「…あ、母さんたちかな。」


そう言いながらるいが玄関へ向かい、ドアを開けた瞬間、「キャー!るいきゅんかっこいぃぃ!!」という聞き覚えのあるババアの声が聞こえた。


「ゆりさんおはようございます。」

「母ちゃん近所迷惑!」


うるさい俺の母ちゃん相手にも、笑って挨拶してくれているるいの背後から顔を出して文句を言う。


「あ、おはよう。航もかっこいいで〜、イケメンに産んでやった母ちゃんに感謝しぃやー。」

「はいはい。」


朝からテンション高くて疲れる。と思っていると、そんな母ちゃんの横からスッとるいママが顔を出した。


「航くん、るい、おはよう!」

「あっ!るいママ!おはようございます!」


なんだよ母ちゃんがうるせえからるいママ来てんの気付かなかったじゃねえかよ。

俺は美人なるいママの笑顔を見たら、ちょっと癒されたのだった。


「朝ごはんはちゃんと食べた!?もう準備できてる?あっお母さんサンドイッチ作ってきたの!それから、」

「はいはい大丈夫大丈夫、準備ちゃんとできてるから。」

「そう?あっ!じゃあ写真撮らせて!航くんも!はいはい並んで並んで!」

「あっ私も私も!航!こら!こっち向け!」


その後、るいママや母ちゃんは俺たちの写真を一通り撮影し、満足してくれたようだ。


「じゃあね、ゆりちゃん入学式終わったらまた連絡ちょうだい?」

「はい!分かりました!」


そろそろ出発の時が来て、入学の書類や必要なものを鞄に入れて家を出る。


「航、終わったらお前も連絡な。」

「うん、分かった。」


るいの言葉に頷いてから、るいに手を振り、俺は母ちゃんと共に今日から通うことになる大学へと向かう。



あ、…えっと、はい。そうです。

友岡 航のミラクルは起こらなかったわけですが、見事第二志望の大学に合格。母ちゃんは泣いて喜んでくれた。


「ぶっちゃけ母ちゃんは第二志望も受かると思ってなかったんやで。」

「おい」

「るいきゅん様々やな。」

「…まあ、…うん。」

「あー…エリート大学に通っててあの見た目かぁ。航気をつけなるいきゅん他の女に取られんで。」

「……はぁ。」


心配していたことを母ちゃんにまで言われ、俺は大きな大きな溜め息を吐いた。


「いや、その前に私がるいきゅんを、「……はぁ。」…冗談やって。」





「航ー!こっちこっち!!」

「おー。」


入学式の時間まで喫茶店で時間を潰すと言った母ちゃんとは途中で別れ、俺は大学の敷地内に足を踏み入れ、待ち合わせしていた友人たちと合流した。


「うわあやばいやばい!俺ら今日からDDだべ!?」


そう言ってはしゃいでいるのは、スーツを着ているがなんかちょっとあんまり似合っていないなっちくんだ。


「なにDDって。」


そんななっちくんの発言に、不思議そうな顔をするのはアキちゃん。


「男子大学生、だろ?」


アキちゃんの疑問に答えたのは、高1、高2と同じクラスメイトだった友人、張間 昇。

なっちくんと同じ大学ってのは分かってたけど、アキちゃんと昇も同じって聞いてちょっと驚いたと同時に嬉しくなった。


「うわ〜っ航と同じ大学嬉しいなぁ!航志望校滑ってくれてありがとね〜!」


しかし可愛い可愛い顔をしたアキちゃん、にこにこと可愛い笑みを浮かべながら俺の傷をえぐりやがる。


「クッ…!てめえにこにこしながらんなこと言うんじゃねえよっ!」


俺はアキちゃんの頭を両手で鷲掴み、ぐしゃぐしゃにかき混ぜた。


「あぁっ!ちょっと!せっかくセットした髪ぐしゃぐしゃにしないでよ!」

「ハッ、自業自得。」

「うわ、今の笑い方なんか矢田くんに似ててやだぁー…。」

「ハッ。」


俺はぐしゃぐしゃにしたアキちゃんの髪を見て鼻で笑った。

るいと一緒ではないけど、変わらずな感じで友人と一緒に大学へ通えるこれからは、とても楽しみだと思った。


「てか昇もなっちくんもみんなよくこの大学受かったな。元Eクラス仲間が。」

「航には言われたくねー。」


アキちゃんから視線を昇へ向けながら言えば、昇にちょっとムッとしながら返されてしまった。まあごもっともなお言葉である。なんだか少し不機嫌そうな昇は、ふいっと俺から視線を逸らした。

あれ?なんだ?
こいつすっげー感じ悪い。

まあ機嫌悪いのだろうということで。
気にせず昇から視線を逸らす。

元々そこまで仲良かったわけでもないけど、同じ大学なのだから関わることも多いだろう。仲良くしていきたいと思う。


「でもなっちくんが受かったのには驚きだよねー。」

「えー、ひどー。俺やれば出来る子なのにー。」


アキちゃんの発言に対して自分でそう言っちゃうなっちくんだが、確かになっちくんはやれば出来る子。ただこの子、やる気無いとまじでやらないだけで。

サッカーはもうやらないらしく、もったいねーって思うけど、やる気が無いならしょうがない。


「行くか。」


俺たちはこの4人で、館内へと足を進めた。


「うわぁ、女の子いっぱいいる。」

「そりゃ男子校じゃねえからな。」


キョロキョロと辺りを見渡しては、そんなことを言っているなっちくんにツッコミを入れる。


「なっちくんが女の子に見惚れてたら雄飛にチクってやるからな。」

「えぇっ!見惚れてねえし!!雄飛ラブ!!」

「なっちくん興奮して声がでかくなってるぞ。」

「ハッ」


なっちくんは顔を真っ赤にしながら口を両手で押さえた。可愛い。写真撮って雄飛に送ってやろう。


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