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次のバイトで横井くんと出勤が被り、俺は横井くんの姿を見つけた瞬間横井くんの元へ駆け寄った。


「横井くん横井くん横井くん横井くん横井くん!!!」

「お、おうおうおうどうした綾部…!」


横井くんの名前を連呼しながら勢い良く近付いていったから、横井くんは驚きながら半歩後ろに下がった。


「送別会の時ごめんなぁ〜!!俺全然あの日のこと覚えてなくてさぁ!!まさか酒飲んでたとか思わねえし!!」

「あっ、あーっそれな!!まあ良かったわ、綾部の友達が来てくれて。俺綾部んち知らねえし。」

「てか俺まじ変なことしなかった!?横井くんに抱きついて寝てたとか聞いて超恥ずかしいんだけど!!」

「まあ綾部酔ってたしな。あ、そうそう、ゆうひ膝かして〜とか言ってたぞ。ゆうひってもしかして電話の人じゃね?」


笑い混じりに話される横井くんの話を聞き、俺はその瞬間爆発しそうになるほど顔面が熱くなった。

最悪だ!ばっちりやらかしてるじゃん俺!!バイト先の人がいるところで雄飛の名前を出すなんて…。


「ん?綾部?うわ、顔赤っ。」


横井くんに顔を覗き込まれ、恥ずかしさのあまりに両手で顔を隠して蹲った。こんなに恥ずかしがってたら、墓穴掘ってるようなもんじゃん…。


バイト先の人にはプライベートな話しない方が良いって航は言うけど、でも横井くんのことは良いやつって言ってたし、それじゃあもうやらかした姿見せてしまった横井くんにくらいなら、ぶっちゃけてしまった方が逆に気が楽になるんじゃないかと思って…、

俺はぺらっとつい勢い任せに横井くんに告げたのだ。


「雄飛は、俺の彼氏なんだよ…。」


…と、言った後に急激に襲ってくる後悔。


うわああなんで俺それ言った!?
別に今言わなくても良かったよな!?
って、もうほんと頭ん中パニック。


「…へ?」と唖然としている様子の横井くんの声が聞こえ、手の隙間から横井くんに目を向ける。そりゃ横井くんもいきなりこんなこと聞かされて驚くよな!!


「うわああお願いお願いお願い今のは内緒にして横井くん!!」


今更半泣きになりながら、横井くんの肩を掴みガクガクと揺さぶると、横井くんは「わかった、わかったから…!!」と笑いまじりに俺の手を掴んで止めた。


「なるほどなぁ、だから彼女いるか聞かれても言えなかったのか。そっかそっか。なんかいろいろ納得した。」

「横井くんほんと!まじで…!お願いだから…!」

「大丈夫だって、言わねーよ。」


その言葉を、ほんとに信じて大丈夫なのだろうか。とそんな思いで横井くんを見ていると、横井くんは穏やかに笑って話を続ける。


「綾部とは仲良くなりたかったし。そういう話直接聞けて嬉しいわ。」


そんなことを言ってくれた横井くんに、今度は逆に彼を信用し切れていなかったことへの罪悪感が襲ってきて、俺は居てもたってもいられずまたガクガクと横井くんの肩を掴んで揺さぶった。


「うわあああ横井くん、ほんと、まじ、頼むわあ!!」


頼むって、なにがだよって自分で突っ込みを入れたくなるが、つまりは内緒にしててっていうことと、これからもよろしくっていうことで、バシバシと肩を叩きながら強引に横井くんの手を取ってブンブン握手をすると横井くんはそんな俺の態度にずっと笑っていた。


「二人ともなにやってんの、仲良しねぇ。」


通りかかった従業員にそんな声をかけられてしまい、照れ臭くなって横井くんの手をスッと離す。


「綾部、バイト終わったら飯でも一緒に食いに行こうぜ。」

「おお、いいねぇ。なに食べる?」


その日を境に、俺はすっかりバイト仲間の横井くんと仲良くなったのだった。めでたし。


36. 横井くんと奈知の受難 おわり


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