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「餅だろ、チーズだろ、ウインナーだろ、あと何がいいだろ?……あ!海老入れよう!るい好きだろ。」

「好きだけど。タコは?」

「タコは要らん。」


たこ焼きなのに?と言いたげなるいを無視して、海老売り場からひとつ海老のパックを取ってるいが持つカゴに入れた。


「あとはー、わさびとか?」

「え、なにロシアンたこ焼きすんの?」

「そう!それ!!」


嬉々として頷く俺に、るいは嫌そうに顔を顰めた。

わさび、からし、コチュジャン、あとは…


「うわ、むり……。俺作る専でいい?」

「うんいいよ。」


あっさり許可した俺を怪しげに見てくるるい。よく俺のこと分かってんな、しれっとるいにもロシアンたこ焼き食わせてやる。


スーパーの袋たっぷりに買い物をして、なっちくんたちと約束している時間までに帰宅する。

夕方頃にはたこ焼き器をテーブルに出し、食材を並べて準備していると、インターホンの音が部屋に鳴り響いた。


「はーいはいはい今行くよー。」


るんるんで玄関の鍵を開けに行くと、先に来たのはあかりと沙希と由香だった。


「いらっしゃーい。」

「おじゃましまーす!」

「航ダーリン!!あなた様を拝みに来ました!」

「これお土産のお菓子!」


玄関からのうるさい声を聞き、準備している手を止めてるいも玄関に顔を出すと、「キャー!航ダーリン久しぶりかっこいい!!」と相変わらず騒がしいあかりにるいはちょっとだけ笑っている。


「今日は航ダーリンの作るたこ焼きが食べれると聞きまして!お昼ご飯抜きで来ました!」

「いや抜いてこないで。ちゃんと食べてきて。」


そう。あかりたちにはただのたこパとしか言っておらず、雄飛が来ることは知らない。

部屋の中へ移動し、さっそくるいが準備しているたこ焼き器を取り囲みながらキャッキャと雑談をしていると、数分後再びインターホンの音が鳴った。


「あ!なっちくんきた?」

「わーいたこパたこパ!」

「超たのし〜!」


まだ始まってもいないのにこいつらテンション高すぎだろ。

俺はもう一度玄関の鍵を開けに行くが、るいに絡むあかりや沙希の声がうるさすぎる。ここぞとばかりに俺のダーリンに絡むのやめろ。


「てか航ダーリンのエプロン姿イイ〜!」


そんなあかりの声を聞きながら、玄関の扉を開けてやると、まず目に入ったのは雄飛の姿だけだった。

しかしチラ、と雄飛の背後を見ると、雄飛の背中に引っ付いて隠れるように立っているなっちくん。お前が隠れてどうするんだ。


「もうみんな中居んぞ。」

「え?誰か来てるんすか?りとりな?」

「ううん、今日は大学の友達。っておい、なっちくん雄飛になんも言ってねえのかよ。」

「航先輩の家でタコパするとしか。」

「まじか。あのな、今日はなっちくんがお前を紹介するための会だから。」

「はい??」


なっちくんが役立たずだから俺が雄飛に説明していると、部屋の中から「なっちく〜ん?来た〜?まだ〜?はやく〜!」という甲高い沙希の声が聞こえてきた。その声にピクリと反応する雄飛。


「あー、あの時の人たちな。オッケ、了解っす。」


一度雄飛はあかりたちに会ったことがあるから、早く理解してもらえてありがたい。俺に返事をした雄飛は、ガシッとなっちくんの手を握って、なっちくんを引っ張るように部屋の中に入っていった。


「おお、頼もしいな。」


俺はそんな頼りになる後輩と、引っ張られてるなっちくんの姿を眺めながら玄関の鍵を閉める。これじゃあどっちが年上なのかわかりゃしねえな。


「えっ!?なに、びっくりした、だれ!?」

「え!?なになに航私のためにイケメン呼んどいてくれたの!」

「あ、この前学食で……、」


突然現れた雄飛に部屋の中からはさまざまな反応する声がギャーギャーと聞こえてきた。ほんっと、うるせー奴らだな。


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