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「なんすかそのひ弱な態度。見掛け倒しかよ。」
「…は?」
見掛け倒し?
言われてる意味がまったく理解出来ず固まる。
「拍子抜けしたわ。ぶっちゃけあんた、ぜんぜんこわくねえっすわ。Cクラスだし中身もただのバカなんだろ?」
言いたいことがまったく理解できねえけど、俺がむちゃくちゃディスられてることはよくわかった。
チラリとミッキーに視線を向けると、唇を噛み締めて今にも相手に言い返しそうな様子に気付き、俺は強引に相手の襟足を掴んで近くの空き教室へ引き摺り込み、相手の男と一対一になった。
二人だけになると途端に口数が減り、無言で俺を睨みつけてくる。
「Cクラスをバカにするってことは頭良いんだ?何クラス?」
とりあえず世間話をするかのように話しかけると、相手はボソッと自分のクラスを答えた。
「…A。」
「うわ、まじで良いな。まあべつにどうでもいいけど。」
どうでもいいことを聞いたのは俺だけど。と口にする俺に、相手の目付きが更に鋭さを増した。
「どうでもいいからCクラスで生徒会長なんかやれんだな。俺なら絶対無理。恥知らずこえー。」
うっわ、まじ生意気なやつだな。
結構グサグサと痛いとこついてきやがる。
まあこいつがこう言いたい気持ちもわかる。
でももうなってしまったもんは後戻りできない。
「恥知らず?俺が?生徒会長の学力なんかどうでもよくね?お前いちいち人の学力気にすんのか。」
確かに俺は頭は良くねえけど、人のこと見下すようなやつに恥知らずとは言われたくねえ。
「つーか口の聞き方気を付けろよ?お前はAクラスかもしんねえけどそんなこたぁ俺からしたらどうでもいいんだよ。人のこと見下す暇あったら自分の頭レベルもっと上げてろよ。くだらねえことばっか言ってっとろくな大人になんねえぞ。」
一歩相手に詰め寄ってちょっと相手を見下ろしながら捲し立てると、急に怯えたように口を開かなくなった。
べつに怯えさせたかったわけではねえけどムカついて口が止まらなくなったのだからしょうがない。
てか散々俺のこと怖くねえとか見掛け倒しとか言っといて結局怯えてんじゃねえか。
「おい、うんとかすんとか言えって。」
トン、と押すように肩を叩くと、結局相手は、小声ではあるものの少し声を震わせて「…すみませんでした。」と俺に謝罪してきた。
あっさり謝罪すんのかよ。女々しいやつ。
「なぁ、やっぱ俺のこと怖いんだ?」
いっそのこと、自虐ネタのように聞いてみようと口にした問いかけに、相手はコクリと頷くのだった。
「散々人のことディスっといてそこ頷くんかよ。」
軽く笑いながらぺしっと頭を叩くと、相手は気まずそうに苦笑している。
「はぁ…まあいいわ。俺べつに怖くねえし。頭は悪りぃけど真面目に勉強はしてるし。あんま見下すのはやめてくれ。」
さすがにもう言い返されることは無いだろう空気を感じて切実な思いを口にすると、もう一度「すみませんでした。」と謝ってくれた。
生意気ではあったけど、ちゃんと最後は謝れるのならば、そこまで悪いやつでもないのだろう。
話は終わり、教室を出ると、そわそわ落ち着かない様子でミッキーが廊下に立っていたから、俺はもう一度「サンキューな。もう大丈夫だから。」と安心させるようにミッキーの頭に手を置いてお礼を言った。
まだまだ自信のない俺を、こんなに庇ってくれる後輩がいるのだから、俺はもっと自分の立場を自覚して、しっかりしなくてはいけない。自信を持たなければいけない。と、改めて思った。
28. ヤンキー生徒会長誕生 おわり
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