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【 わ〜たる〜来週の土曜俺の学校文化祭あるからきてー 】


俺はある一通のラインメッセージを眺めながら、困ったもんだ。と頭を抱えた。


「…なんか、遠慮がなくなったな。ってそんなのもともとねえか。まあいいけど。」

「ん?航どうした?」


俺の呟きに耳を傾けたるいが、べたりと俺の身体にくっついてきながら俺の持つスマホ画面を覗き込んだ。そして、その一文を見て真顔と無言になる。


「どうする?弟の文化祭、行ってみる?」


反応のないるいに問いかけると、るいは真顔でコクリと頷く。それからと言うもの、るいの小言が止まらない。


「ったくあいつ、航にラインばっかしやがって。文化祭だと?そういうのはまず俺に先に言えよ。つーか親にも言わねえくせに。航ばっか…。」

「まあまあお兄ちゃん落ち着いて。」


ポンポン、るいの頭をあやすように叩くと、るいがジトリと軽く俺を睨みつけてきた。


「だいたいな、航がりとを甘やかすのがダメなんだぞ。」


るいはそう言いながら俺のほっぺたをむにむにとつねって引っ張ってきた。かと思いきや、むちゅっと唇を口に押し付けられキスされる。


「今夜はおしおきだな。」


そう囁きながら、るいは俺の尻を両手で鷲掴んできた。

チュッチュ、とキスが首筋にまで降りてきて、ペロリと一舐めしたあと、るいはにっこりと良い笑みを浮かべて、「ね。」と可愛く小首を傾げる。

なにが『ね。』だ。
お前ただえっちしたいだけだろ。

「あとでな。」ととりあえず変態るいは軽くあしらい、りとくんに了承の返信をする。

それと同時に家族大好きお兄ちゃんは、るいママに【 来週航とりとの学校の文化祭行くことになった。 】と報告していた。

ブツブツ言いながらも弟の文化祭に行ってやるところが、さすがブラコンるいだよな。

るいはマザコンで、シスコンだけど、ブラコンでもあるのだ。


「うわ、母さんからりとの文化祭いつ!?そんなの初耳なんだけど!?って返信きた。ははっ、あいつあとで母さんからネチネチ小言言われるだろうな。ざまあ。」

「…ざまあって。」


お前そんなん言うやつだったか。

…あ、そうか。これ俺の所為だな。


るいの口調が俺に似てきたって最近よく言われるようになった。実際そうなのかもしれない、と俺はたった今それを実感したのだった。





「はいはい、俺カレーがいいー。」


珍しくロングホームルーム中、自らそう発言した矢田りとに、クラスメイト一同驚いていた。


「…どしたりと、珍しいな。去年の文化祭は興味無さそうだったのに。」

「カレーだったらやる気出す。」

「うわ、これもうカレーで決まりだな!?」

「「「「「異議なし!!!」」」」」


秒で文化祭の出し物が決まったりとのクラスは、いつも以上にわいわいと賑やかだ。

それもそのはず。黙っていてもクラスの中心人物だったりとが、積極的に文化祭の決め事に参加しているのだから周りがそれを放っておくわけがない。


「でもなんでカレー?りとそんなにカレー好きだっけ?」

「最近好きになってきた。ゆでたまごも一個100円で販売しようぜ。」

「一個100円!?高くね!?」

「売れなかったらタイムサービスで50円にして売ろう。」

「お前まじでやる気満々だな!?どうした!?」

「だってカレー美味しいもん。な。」


適当に隣にいたクラスメイトに同意を求めたりとに対し、そこにいた女子が真っ赤な顔をしてうんうん、と必死に頷いていた。

くそっ、このモテ男め、とすぐに女子の顔を赤くさせる男りとを、男子は恨めしく思うのだった。


「じゃあさ矢田くん!衣装は私たちで決めていいかな!?」

「うん?好きにすれば。」

「きゃあぁ!!やったぁ!!」


りとは特に衣装になど興味はない。あるのはカレーとゆでたまごだけ。

キャッキャとはしゃぐ女子に、りとがこの時一ミリも衣装に関心を向けなかった自分を恨むことになるのだが、それはまだ少し先のこと。


「どうする!?矢田くんに何着せる!?」

「タキシードとか用意する!?」

「カレーにタキシードはおかしくない!?」

「じゃあなんか可愛い服とかにする!?猫耳とか付けてもらってさ!!」

「いや、やっぱそこはかっこいいのでしょ!!猫耳超絶見たいけど!!!」


早くも女子たちは脳内で、着せ替え人形のようにりとの衣装をあれこれ考え、想像している。


クラスの女子のほとんどが衣装係となり、積極的に調理係との掛け持ちになった女子は多い。…というのも、理由は調理係にりとがいるからで、珍しくエプロンを身につけやる気を出すりとの周囲には人が群がる。


「じゃがいもの皮むくのどうやんの?」

「皮むき器で剥けばいいよ!そのあとこうやって芽を取ってぇ、」

「ふぅん。たまねぎは?」

「たまねぎはね、こうやってまず皮むいて、」

「……おい見ろよお前ら、ああいうのをハーレムって言うんだぜ。」

「女子いい加減にしろよ。あいつら衣装係だろ…教室帰れや。」


衣装係である女子たちも群がる所為で、調理係の男子はうんざりしていた。…が、とりあえずやる気を出しているりとが積極的にカレーの作り方を女子に聞いているので、下手に口出しせず調理室の隅っこに固まる男子たち。


「でもまあ、あいつらがやってくれるなら俺ら楽でいいんじゃね?」

「まあ、そだな。」


りとのクラスの文化祭の準備は、どのクラスよりも順調に進んで行くのだった。


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