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お腹もふくれたところで、さてどうしようかとぷらぷら歩く。すると、一軒のゲームセンターが視界に入り俺は足を止めた。


「あ、ゲーセン発見!!るいきゅんゲーセン!!」


さっさと通り過ぎようとしていたるいの手を思いきり引っ張る。


「うわっお前いきなり引っぱんなよ!」

「え、だってるいきゅん?ゲーセンがあるよ?行かないの?」

「なにその行って当たり前みたいな言い方。」

「ふふふふ〜んゲーセンゲーセン。」


俺はるいの手を引っ張って、ズイズイとゲームセンターへ足を踏み入れた。るいはぶんぶんと俺の手を振り払おうとしながら俺の後を歩く。


ゲーセンに足を踏み入れた瞬間、ギラリと光った視線で、こちらを見られた気がした。


「うわっ見て見て見てちょーイケメンいるんですけど!」

「うわっまじだやばいやばい、声かける?」

「えっどうするどうするどうする?向こう2人だよ?こっち3人だよ?お前帰れ。」

「はあ〜?お前が帰れ!」


うわこわいっ、なんかギャル喧嘩してるんですけど。こえー。女同士の喧嘩ってこえーよな。特に男が絡むともっとこえーんだぜ?俺知ってる。


「あ、このタワー倒れそう。」


俺はギャルから視線を外し、近くにあったお菓子が積み上げられているドーム型のゲームへ歩み寄った。


「これ倒れそうじゃね?」

「そうか?あそこで引っかかりそうな気がする。」

「ちょっとやってみんべ。」


チャリン。と俺は、ゲーム機に100円玉を投入した。

ぐるぐると同じところを回るお菓子の一部をすくい取る。おお、けっこうごっついお菓子取れた。


「おお、なかなかやるな。」

「っはっ!!!るいきゅんから褒められたの初じゃね!?」

「早く落とせよ。」

「おっとそうだった。…よいしょっと。……あああー!!!まじか!!!」


俺が落としたお菓子で、タワーは倒れたかと思いきや、るいが言った通り引っかかって倒れてこなかった。くそぅ悔しい。


「こういう仕組みなんだって。あとでコンビニでお菓子買えよ。」

「……賢い人連れてくるとお金の無駄遣いしなくて済みますね。…うう。」


中学の頃ゲーセンでバカ友たちとゲームばっかしてたけど、お金使い過ぎで母ちゃんに叱られていたあの頃が懐かしいぜ。


「あ、これならすぐ落ちそうだぞ。」

「えぇ?そうかぁ?」


るいが指差したゲーム機は、ドデカパックのお菓子が積み上げられたクレーンゲームだった。これこそ落ちない気がするんですけど。

るいは怪しげに眉をひそめる俺を尻目に、100円玉をゲーム機に投入した。


「え?……え?………んおおっ!?!んえええ!!?まじかよ!!!」


るいはなんと、片方のアームだけをうまく使い、物の見事に大袋のお菓子を取り出し口へ落としたのだ。


「キャー!うまーい!!!」

「お兄さんすっごくお上手ー!!!」


るいがお菓子を落としたその瞬間、背後から甲高い声が聞こえてきた。るいはあまりの騒がしさに眉をグッと顰める。

その声の主は、先程喧嘩をしていたギャル3人だった。うわー、こりゃえらい人に目をつけられたもので。

サラリとギャルの言葉をスルーしたるいは、しゃがんで取り出し口からお菓子を取る。

はい。と渡され受け取るが、意外と重い。


「これ結構でけえな!?」

「いっぺんに食べんなよ。」

「くれんの?」

「俺食わねーし。」

「キャー!るいきゅんイ・ケ・メ・ン」


俺は大袋のお菓子を抱き締めて、スタスタとギャルの前から背を向けて立ち去ったるいの後を追った。

背後でギャルたちの「ええー!?シカトぉ!?」という声が聞こえる。残念だったな、ギャルさんたちよ。これは俺とるいのおデートなのだから、邪魔されちゃあ困るんですよ。


スタスタ。るいは自然な流れで出入り口へ向かおうとしていたようだが、俺はそこでるいに待ったをかけた。


「ちょとまてーい!!!」

「は?なに?」

「俺あと1つだけやりたいのある。」

「なんだよ。」


それはねえ?ふふふふふ。言ったら絶対断られるから、何とは言わず、るいの腕を引っ張って方向転換した。


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