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「おいちょっと待て。」

「いやーん。」

「まさかアレやろうとか言わねえだろうな。」

「えぇ〜?」


徐々に近づいてゆくそのコーナーに、るいの足取りは重くなった。

小学生、中学生、高校生、大学生、さまざまな年齢の女性客が多く、チラホラ見かける男性客は可愛い女の子を連れたカップル。あと5、6人の男グループもいたり居なかったり。

そのコーナーとは、プリクラコーナーのことだった。


「絶対やらねーぞ。」

「そう言わずに!!ラブラブなの撮ろう。」

「あほか。」

「お願い。」

「嫌だ。」


くそぅ。やはり断られたか…。

まあるいがノリノリでプリクラ撮ってる姿なんか想像できねーけど。でもここは意地でも撮りたい。るいとプリクラ。今日の記念に。


だから俺は、かつて無いほど強引にるいの腕を引っ張った。しかし反対にるいの足は思いっきりブレーキをかけており全然進まない。


そのおかげであの人ら何やってんだという視線を向けられて居た堪れない。しかも方や超絶イケメンだ。「あの人イケメン」という声は当たり前のように聞こえる。


「るいきゅん、あんたってやつはもったいねーな!イケメン時代をプリクラで残しとかねーとおっさんになったら後悔するぞ!」


俺はるいとプリクラを撮りたいがために、あれこれふっかける。


「別にそんな後悔しねーよ!」

「おっさんになってもイケメンとは限らねーんだからな!」

「だからなんだよ!」

「俺との高校時代の思い出を残しておきたいとは思わねーのか!」


おっと我ながらなかなか恥ずかしいことを言ったな。しかしこれで『うん』と頷かれたら悲しいところ。でもるいは、その後無言で俺の顔をジッと見るだけだった。


「……はぁ。じゃあ1回だけな。」


ため息をついたかと思えば、るいは観念したようにそう言う。…まじで!?


「やったあああああ!!!!!」

「うるせえ!!!」


痛たたた。喜びのあまりにバンザイしながら叫ぶと頭をしばかれた。しかしこんなのへっちゃらである。なんてったって、るいきゅんとプリクラが撮れるのだから!


「どれで撮る〜?」

「どれも一緒だろ。」

「違うしぃー。これなんか美脚で撮れるって書いてあるしぃー。」

「お前は女子か。」

「よし!美脚のにしよう!」

「はいはい。」


るいは半ば疲れたように頷いた。

しかし俺は次の瞬間、あることに気付く。


「あれ!?これも美脚って書いてあるぞ!?」

「美脚はどうでもいいだろ!早く入れよ!!!」

「おわっと!!!」

「「「キャー!!!!!」」」

「へ!?!?ごめんなさい!!!おいるい人入ってんじゃねえか!!!」

「あ、すみませんお邪魔しました。」


どかっとるいに背を押され、勢いよくプリクラの囲いの中に入ると、そこには女の子が3人キメポーズを取って撮影しているところだった。
大変申し訳ないことをした。
俺は慌てながら彼女たちに謝罪し、るいに向かって非難する。

すると、しれっとした顔でぺこりと頭を下げたるい。


「えっあっあの、いえ全然!」

「大丈夫です!あの!謝らなくていいので写ってって下さい!」

「はい?」

「お詫びはそれで結構です!」

「いやいやいや」


そこで慌てた表情を浮かべたるいだが、彼女たちはとても強引だった。

「やだ早くしないと撮影終わっちゃう!」と俺たちを無理矢理中に引っ張り、何故か俺とるいは彼女たちとプリクラを撮らされたのだった。


「「「ありがとうございましたー!」」」ときゃいきゃいはしゃぎながら出て行った彼女らに、るいはぐったりした様子でその場にしゃがみこんだが、すべての原因はるいであるため責めるなら自分を責めていただきたい。


「はあ…。俺女子ちょっと苦手…。」

「チヤホヤされすぎて?」

「お前みたいに雑に扱えたら楽なのに…。」

「え、ひどい。女子には優男ってか!」

「泣かれても困るだろ。」

「俺泣いちゃおっかな〜。」


……よし。プリクラ撮るか。

俺の発言にるいはジトリとした目を向けたので、俺は無言でジャリンジャリンとプリクラ機に100円玉を投入した。


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