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「来んの遅い!もっと早く来れないわけ!?」
「はあ!?お前それがわざわざ来てやった奴に言う台詞かよ!」
「…別にりなはりとに来て欲しいって頼んでないから。」
「ああそうかよ、ほんと可愛くねえやつだな!!」
学校が終わってからすぐに中学校に行ってやったのにこの態度。ありがとうの一言も言えない妹に、俺は凄まじいイライラが募るばかり。
自宅への帰路を歩き始めると、俺の数歩後ろを歩くりなを尻目に、俺は目線だけ動かして周囲の様子窺う。
「……で?後ついてくるっつー奴はいんのか?」
「……わかんない。いつも途中で気付くから。」
「ふうん。まあ気付いたら絶対言えよ。」
「…わかった。」
素直に頷いたりなに俺は少しホッと息を吐き、お互い黙って歩く。
しかし沈黙の中歩いていると、突然りなは俺の着ている制服をクイクイッと引っ張ってきた。
「…りとっ、うしろにいるっ…!」
りなは俺との距離を縮め、小声で焦ったように俺にそう知らせてきた。
俺は無言でチラリと不自然にならないよう背後を見れば、確かにうしろにはどこかの制服を着た、高校生くらいの男がりなのことを見つめている。
「…あいつか。ちょっと近付いてみるか。」
「えっやだ!!りと変なことしないでよ!?」
「んじゃあどうすんだよ。このまま黙って帰んのか?」
「…今日はこのまま帰る。…りとがいるから明日は来ないかもしれないし。」
「…ふうん。分かった。」
りながそう言うなら。俺は頷き、また沈黙の中、でもその後はりなと肩を並べて、家へ帰った。
りなと肩を並べて歩いたのはいつぶりだろう。いつの間にか隣を歩く妹との身長差は結構広がっていて、小さいな。と思った。
俺には可愛くない態度の妹だけど、姿形はとても可愛い。可愛い妹は、やはり数多の男を虜にするらしい。
日頃から俺は趣味が悪いだのなんだの言ってるが、それは俺に対する妹の性格のはなしで、姿形は可愛いのだ。
怯えるように俺の制服を掴む妹に、なんだかんだ言ってこいつ俺を頼ってくるじゃねえか。と思いつつ、なんだかんだ言って俺もこいつのこと心配してんじゃねえか。とちょっと笑える。
「明日はジュースの1本でも用意して待ってろよ。」
「うっざ!誰があんたのためにそんなの用意するか!」
「じゃあもう迎えに来てやんねえぞ。」
「だから別に来てって言ってないから!」
家へ近付いたあたりでまたチラリと背後を窺うと、男はいつの間にか居なくなっていた。
明日も行って、りなと帰って、そんでその次の日も行って、また男がりなの後をつけてたら、そん時は俺がそいつをぶん殴ってやろう、と俺はそう、考えていた。
「ただいまー。あ、お母さんまだ帰ってないじゃーんお腹減ったよー。あ、そうだ、残しといたポテトチップ食べよーっと。」
「……。」
「あっ!!ない!!ポテチない!!ちょっとりと!?ここにあったりなのポテチは!?」
「…は?知らねーから。人を疑ってんじゃねえよ。」
「あんたが食べたとしか考えらんないから!!返してよりなのポテチ!!」
「知るか!そんなに食われたくねえなら自分の部屋に置いとけよ!!」
「もう最悪ー!!りとのバカー!!」
家に帰るなりうるせえ妹。やっぱりキーキーうるせえし、うざってえけど、不安そうにしながら怯えてるよりはずっと良い。
「返してよりなのポテトチップー!!」
「あーうるせえうるせえうるせえ!!」
……いや、やっぱり、少しくらいは不安そうにしててくれた方が、まだ可愛げがあるかもしんねえけど。
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