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「貴哉さー、すげえ豪華メンバーで飯食ってるよな。まあお前も若干豪華な部類に入るんだろうけどー。」


クラスでよく共に行動する名簿が前後になったことがきっかけで仲良くなった友人が、休み時間俺にそんな話を持ち出してきた。


「まぁ…生徒会の先輩だからなぁ。」

「矢田会長と仁先輩は勿論だけど、友岡先輩も何気人気あるよなー。あの人かっこいいし。」

「あー…。ん?かっこいい?可愛い、じゃなくて?」

「はぁ?可愛い?かっこいいだろ。」


思わず友人に問いかけてしまったことに友人はおかしそうな顔をしたから、俺はそこで、『あ…余計なことを聞いてしまったな…』と思い口を閉じた。なんか、絶対喘ぎ声の所為で見る目が変わってしまってる。


「ところで矢田会長と友岡先輩、お前今日隣で飯食ってたけど2人ってどんな会話してんの?」

「ん?どんな会話?…んー、あ、友岡先輩納豆ねばねば平安京とか言ってたよ。」

「は?それ平城京じゃね?」

「そうそう、だから矢田会長が平城京だろ、って突っ込み入れてた。」

「えー…なんか気ぃ抜けるわー…。矢田会長がそんな話に付き合ってあげてるとか泣けてくる。」

「んで矢田会長、友岡先輩の納豆食べてた。」

「うわー、え、ひょっとして矢田会長って甲斐甲斐しいの?」

「んー。可愛いからついつい甘やかしちゃうんだろ。」

「え、いやだから可愛いって…友岡先輩が…?可愛い、のか?かっこいいだろ。」


友人は心底理解できない、というような表情を浮かべていたが、俺にはやっぱり友岡先輩は可愛いんだろうなぁとしか思えなかった。

見た目どうこうの話ではなく、こう、なんて言えばいいかわかんないけど、…可愛い。


「あーでもエッチするとなったらやっぱ友岡先輩が下だろ?そしたらやっぱ、可愛くて仕方ないのかねぇ?

…っておい、なにお前顔赤くなってんの?」


友人はふと俺の顔をまじまじと見ながら突っ込みを入れてきたから、俺は口に手を当てて顔を逸らした。そういう話をするのは思い出してしまうからやめてほしい。勿論、友人にそれを言えるわけないけれど。


「え、ひょっとして貴哉って下ネタ苦手?」

「…いや、そんなことは…。」

「えー、じゃあなに?友岡先輩でヤラシイ妄想したとか?……あ、当たり?」

「……うるさいな。」


友人はニヤリと笑って俺を見るもんだから、俺は友人から完全にそっぽ向いた。

友人の言ったことは、…大当たりだ。


だって仕方ないだろ?実際の声聞いちゃったんだから。…でもそんなこと友人が知るはずもなく、まるで俺がエロいこと考えてる変態みたいな見られ方をするもんだから、俺はたまらず友人に話してしまったのだ。

隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてしまった話を。

すると友人は、とても面白い話を聞いたとでも言いたげに、「まじで?」とニヤニヤ笑ってきた。


「お前しれっと羨ましい部屋に住んでんなあ。だいたい矢田会長の隣の部屋ってだけで凄いのに喘ぎ声聞こえるってやばすぎだから。」

「誰にも言うなよ!?」

「言わない言わない、で?頻度は?毎晩?やっぱ激しい?あの2人見かけるたびにイチャついてるからなー。」

「そんな頻繁じゃねーよ!つーか興味津々で聞いてくんな!俺だってそこまで聞こえてるわけじゃねえんだから!」


あまりに友人がグイグイ聞いてくるもんだから、俺はこれ以上聞かれてたまるか!と友人からそっぽ向く。

友人は面白くなさそうに「貴哉のケチー」と言ってくるが、俺は別にそんな話がしたいわけではないのだ。


「あ、ひょっとして貴哉、友岡先輩のこと好きになっちゃったとか?」

「は!?なってねえよ!!」

「えー、でもなんか聞かれんの嫌そうにしてるから。」


最悪だ、突然この友人はなにを言い出すのかと思えば。気になってるよ?確かに気にはなってるけど、好き、はねえよ。

だって好きっていうほど喋ったことも関わったこともねえし。それに、…矢田会長とラブラブだし。

…考えただけでもやっとするけど…

でも絶対、恋なんかではないはずだ。


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