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「るいきゅんのお部屋〜。」
ショッピングモールから帰ってきた俺は、るいの部屋に再び戻り、絨毯の上に大の字で寝そべった。
エアコンのスイッチを入れてくれたるいは、ジー、とそんな俺に視線を向けてくる。間もなく涼しい風が室内に吹き始め、部屋は徐々に涼しくなる。
夏休みに入って早々、楽しい楽しいるい宅お邪魔の二泊三日のプチ旅行。俺はこの日が来るのをずっと楽しみにしていて、るいのお母さんどんな人だろう、とか妹どんな感じかな、とか想像していたけど、どちらもやっぱり予想してたくらい美人なお母さんで、可愛い妹だった。
「るいもだったけど、りなちゃんもすげえ声かけられてたよな。学校の知り合いだろ?二駅先のショッピングモールで普通あんなに知り合いには会わねーだろ、まじすげえ知名度だな。声かけられてたの、あれクラスメイトの男子かな?男子控え目すぎて超ウケたんだけど。りなちゃんもやっぱモテんのなーりなちゃん可愛いもんなー。
…って……え、なにびっくりした…」
何を思ったのか突然るいは、俺の腹の上に跨って乗っかってきたからびっくりした。そのまま胸倉を捕まれ、身体を起こされる。
「…るい?」
両手を絨毯についた体勢になった俺がるいの名を呼んで顔色を窺うと、るいは口を開いた。
「…お前さー、女好きだな。」
「え、…そうか?わりと普通かと…。」
「じゃあさっきからりなりな言ってんのいい加減やめろよ。」
…ん?…おや、…もしかして嫉妬か?
「だってりなちゃんまじかわじゃん?」
それとも可愛い可愛い妹に興味持たれるの嫌とか?お兄ちゃんの心境は複雑なのかな?ん?
「言ってるそばからそれかよ。」
「るいの妹だから2倍増しで可愛い。」
「は?」
「るいに似てるから余計に可愛い」
言ってる意味わかるかい?
つまり、俺の中心はるいってことだ。
ニィ、と笑ってるいに言うと、るいはちょっと唇を尖らせてそっぽ向いた。その隙に俺は顔を寄せて、「チュッ」とるいの唇にチューしてやった。
るいは一瞬パチリと驚いたように目を見開く。…が、その直後なにかスイッチが入ってしまったかのように、るいは俺の身体を押し倒して、俺の口をるいの唇で塞いできた。
すぐにるいの舌が俺の唇を割って、口内に入ってくる。
俺は、その舌をすぐに絡め取った。すると、るいの舌もまた俺の舌に吸い付くように絡まってくる。
お互い舌を絡ませ合っている状態では呼吸し辛く、お互いの息が唇の隙間から漏れる。
なんかすげえ、興奮してきた。やばいかも。るいの家で、るいのお母さんや妹が居んのにやばい、止まんなくなる。
でもるいが俺の身体から退かない限りこの行為は続くけど、こんな俺たちの姿を見られちゃまずいのはどう考えたってるいなのに、るいは俺の口周りに溢れ出た唾液を舐めとったりして、約数分間そんな行為は続いたのだった。
「ハァ、ハァ…」と荒い息遣いの俺たちは、ゆっくりと唇が離れたあと、暫く見つめ合った。頭が熱くなってるから部屋が涼しくなっててよかった。
ちょっと火照ったるいの顔、なんかすげえエロいけど、俺も大して変わんねえ表情してんだろうな。
「やーべー、すげえ興奮する。」
ヘラリと笑いながら言うと、るいはそんな俺を暫くジー、と見つめてから、最後にもう一度俺の唇に「チュッ」とキスをしてきて、俺の身体から退いたのだった。
「愛されておるな。おれ。」
「うるせえ。」
「ツンデレか。」
「は?」
また大の字で寝っ転がっている俺のすぐ側で胡座をかいでいるるいの頬はちょっと赤い。先程の行為の名残だ。
「るいかわいー、りなちゃんも可愛いけどるいもすんげえ可愛いよー。」
腹から息を吐き出すように、天井に向かって言った俺の言葉に、るいは更に顔を赤くした。
「キモイこと言うな!」
これはあれだ、照れておるのだ。
「お兄ちゃーん、お兄ちゃんたちも夜ご飯までにお風呂入ったら?ってお母さんがー…え、お兄ちゃんどうしたの?」
大の字で寝転がっている俺の側で、不自然に顔の赤いるいに、るいの部屋の扉を突然開けて現れたりなちゃんは、ちょっと不思議そうにしながらるいに問いかけた。
るいは「…別に。」と答えながら立ち上がった。タンスの引き出しに手をかけ、バスタオルを取り出す。
「お前先に風呂入る?」
「どっちでもいいよ。」
「じゃあ先に入ってくる。」
「はいよー。」
タオルと着替えを持って部屋を出て行ったるい。りなちゃんはそんなるいの様子をジッと見守ったあと、素早く部屋に入ってきて扉を閉めた。
「ねえお兄ちゃんどうしたの!?なんか凄く顔赤かったけど!!」
りなちゃんはるいと入れ違いに、俺の側までやってきて腰を下ろす。
「ん?…あー、実はちょっとした暴露大会をやっておりましてな?」
「えっ!暴露大会!?お兄ちゃんなんか暴露したの!?なに暴露したの!?」
よしよし、我ながらうまい嘘をついたな。
「それは残念ながら言えねーな、おにーちゃんの秘密だから。」
「えー!気になる!!」
「りなちゃんはお兄ちゃん大好きだな。」
「うん!だいすき!!」
可愛い笑顔で頷くりなちゃん。
こんなに可愛い妹に好かれたお兄ちゃんはさぞかし幸せ者だろう。…とそんなことを思っていると、また部屋の扉がバタンと開いた。そこにはむっとした表情のるいが立っている。
ずんずんこちらへ歩いてきたるいは俺の腕を強引に引っ掴み、「やっぱお前風呂先入れ」と何の心境の変化か俺を風呂場まで引きずった。
「え、お兄ちゃん突然どうしたの?」
不思議そうにるいを見るりなちゃんに、るいはまた「…別に。」とそっぽ向くだけだった。
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