2. 兄妹喧嘩:矢田兄妹 [ 43/188 ]

「ちょっとりと!?りなが買ってきたゼリー食べたでしょ!!」

「あーそういや食ったな。だって名前書いてなかったし。」

「名前書いてなきゃ勝手に食べるのやめてよ!!あとでお兄ちゃんと食べようと思ったのに最悪!!」

「先にお兄ちゃんが食っといてやったってことで、めでたし。」

「めでたくない!!あんたなんかりなのお兄ちゃんとは認めてないから!!」

「うるせーな、お兄ちゃんお兄ちゃんっていい加減そのブラコンどうにかしろよ!」

「あんたのことお兄ちゃんって思ってない分ちゃんと均衡取れてますぅー。」

「お前バカじゃねーの、そういう問題じゃなくてお前の兄貴への態度が見てて痛いんだよ。」

「うるさいな!別にいいの!!お兄ちゃんはそんなん気にしないし。」

「ただいまー。」

「あっお兄ちゃん帰ってきた!!お兄ちゃんおかえりー!!ちょっと聞いてよ!あとでお兄ちゃんと一緒に食べようと思ってりなが買っておいたゼリーをりとが食べやがったんだよ!!ひどいー!!」



家に帰った途端、やはり俺の家ではいつも通りの兄妹喧嘩が行われていた。それはほぼ毎日のことで、りととりなが喧嘩をしない日はほとんど無い。


「そんなことだろうと思った。ほら、アイス買ってきてやったから冷やしといて。」

「アイス!!3つある!!じゃありなが2つ食べるねお兄ちゃんありがとう!!」

「あほ、俺の分だろ!人の分食べようとすんな!!」

「え?だってりとさっきりなが買ってきたゼリー食べたじゃん。」

「あーもーお前ら仲良くしろよ。りな、2個食っていいからりとにアイス1個渡しとけ、うるせえだろ。」

「えーそれじゃあお兄ちゃんの分が無いよ。りな1個でいいからお兄ちゃんあとで一緒に食べようね。」

「はいはいじゃあそうしような。」


数分後………


「あー!!お兄ちゃん!!りとがお兄ちゃんが買ってきたアイス2個食べてる!!最低!!」


ドタバタとりなが俺の元へ駆け寄ってきたかと思えば、グイグイと俺の腕を引っ張りながら、りとのことを指差した。


そこには棒アイスをペロペロと舐めて、寛いでいるりとの姿が。

俺はさすがに我が弟の行動に呆れ果て、りとの元へ歩み寄り、その頭を強くグーで殴りつけた。


「お前それはねえわ。」

「痛っ!!!」

「同じもんコンビニ行って買ってこい、あとりなのゼリーも。」

「は?やだね、めんどくせ「買ってこいっつったら買ってこい。だいたい人の分ってわかってて食うお前の神経疑うわ。ほらさっさと行け、それにお前こんな涼しい部屋でそんなもん食いまくって腹壊すぞ。ちょっと外行ってあったまってこい。」

「チッ」

「りとざまあ〜!」


ダラダラとめんどくさそうに玄関へ向かったりとだが、果たしてあの反抗的な弟が素直にコンビニへ行って買ってくるのだろうか。


「あっ!お兄ちゃん!あいつ財布置いていきやがった!!」

「……はぁ。りな、ちょっと戒めに行くか。」

「うん!!」


こうして、俺とりなはりとの後を追うように、家を出た。


数分後………


コンビニでアイスを選んでいるりとを、店の外から様子を伺う俺とりな。

財布もねえのにどうするつもりなのか。

アイスとゼリーを持ったりとがレジに向かい、そこでようやく財布を忘れたことに気付いたらしい。


そして俺とりなは、そんなりとを素知らぬふりして店内へ足を踏み入れた。


「りな、好きなもの買ってやるよ。」


そう言いながら、俺はりとの財布を見せびらかすように手元でゆらゆら揺らしていると、りとはハッとしたように俺の方へ視線をやった。

りなはそんなりとが面白かったのか、腹を抱えて笑っている。

りとは悔しそうにしながらも、お会計の場で財布が無いのは恥ずかしいのか、「兄貴!財布!はやく、財布!」と強く俺を手招きした。


財布を渡しにりとの元へ歩み寄る俺と、そして、「あ、ポテトフライひとつください!」とレジのお兄さんに言ったりな。ちゃっかりしている。

「あってめえ!」

「あーあ、暑かったねーお兄ちゃん、りとが財布忘れちゃったからわざわざりなたちも外出る羽目になっちゃってさー?」


わざとらしく吐いたりなの台詞に、りとは悔しそうにしながらお会計を済ませたのだった。


りなに恨みを買うと結構ねちっこいから、りとはこれに懲りたらりなの物は二度と食うなと念を押した俺であった。


兄妹喧嘩:矢田兄妹 おわり


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