1. 兄弟喧嘩:友岡兄弟 [ 42/188 ]
「航ー、俺のアイロン知らねー?」
「は?兄ちゃん自分のアイロンとか持ってんの?女子力たけえな。俺のシャツもアイロンかけといてーシワシワすぎてこの前先生に怒られた。」
「はあ?嫌だし。ってか俺はアイロン探してんの!お前のシャツなんかどうでもいいの!」
「あ、そー。俺知らねー」
チッ、クソ兄とくだらない会話をしてしまった。今日はロクなことがねえわ。
リビングで漫画を読んでいた俺の周りをウロウロと。アイロンを探している兄ちゃんがうっとおしすぎる。
「あーもー!自分のアイロンなければ母ちゃんの部屋にあるやつ使えよ!うざってえなウロウロしやがって!」
「は?お前なに言ってんの?母ちゃんはアイロンなんか持ってねえよ。」
「は?お前がなに言ってんの?たまあに母ちゃん気が向いたらアイロンかけてくれてんじゃねえか!母ちゃんはアイロン持ってんべよ。」
「たまあにすぎんだろ。もっとアイロンかけてくれって母ちゃんにお前から頼んでくれよ。」
「は?なにお前、今さっき母ちゃんアイロン持ってねえとかほざいてた奴が母ちゃんにアイロンかけてもらおうとしてんなよ。」
俺の発言に兄ちゃんは、あれ?とそこで首を傾げた。
そして、「なんか矛盾しているな?」と言った兄ちゃんは、そこでハッとしたように言ったのだ。
「お前分かってんの?俺が言ってんのはヘアアイロンのことだからな。」
そう俺をバカにしたように言ってきた兄ちゃんに、俺は勿論苛立ちを覚えた。
「はあ!?なら最初からそう言えよ!!」
「いや、言わなくても普通わかんだろ。」
「わかんねーよ!しかも紛らわしいことグチャグチャ言ってきやがって!そもそも男がヘアアイロンなんか使ってんじゃねえよ!」
「お前、そんなこと言ってっからそんなダサい頭なんだよ。兄ちゃんを見習えよ、このストレートな前髪」
「別に全然かっこよくねえわ!!!」
「はっ、僻みか。弟よ、醜いぞ。」
「お前もう黙ってろよ!?どこまで読んだかわかんなくなったじゃねーか!!!」
「漫画ばっか読んでねーでたまには服でも買いに行けよ。」
「おめえが服買いすぎな所為で足りてるわ!!!」
「あっ良かったな、センス良い俺のお下がり着れることに感謝しろよ。」
「全然俺の趣味じゃねえよ!なんなんだよあのボロボロのジーンズ!!!」
「あ、お前ダメージジーンズ知らねえの?だっせ。」
「うるせえよもうお前黙ってろよ!!!」
俺はあまりに兄ちゃんがウザすぎて、持っていた漫画を兄ちゃんの顔面に向かって投げ付けた。
狙い通りに兄ちゃんの顔面にぶつかった漫画がバサリと床の上に落ちる。それを拾い上げ、兄ちゃんは目をかっ開きながら叫んだ。
「俺の高い鼻がぺちゃんこになったらどうしてくれんだよ!?!?」
「勝手に美容外科行ってこいや!!」
「お前が行くべきだろ!!」
「ああもう返せ俺の漫画!!」
立ち上がり、兄ちゃんから漫画を奪い取って、俺はドスドスと足を鳴らしながら、自室にこもることにした。
そもそも兄ちゃんが家にいる休日に、リビングで漫画を読もうとしたことが間違いなのである。
兄弟喧嘩:友岡兄弟 おわり
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