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アキちゃんは、たまにすげえいじわるになる。

るいのことが嫌いだと本人に直接言ってるほど、アキちゃんはるいのことが嫌いなようで、俺とるいが喋ってたら結構な確率で邪魔してくる。


そんなアキちゃんのいじわるが、まさに今発動してしまい、俺はギクリと身体を固まらせた。


「ねえねえ矢田くーん」


アキちゃんはにっこり笑って、俺の元に来ていたるいの名を呼びかけた。


無言でアキちゃんに視線を向けたるいは無表情で、るい自身もまたアキちゃんのことをよく思っていないことが十分伝わる。


アキちゃんは無表情のるいを気にもせず、話しかけた。


「矢田くんはさ?航のファーストキスの相手知ってるの?何回聞いても教えてくれないから僕気になって仕方ないんだけど。」

「!!!アキちゃん!!!キミって子は!!!るいになにを聞くのかね!!!」

「ん?なあに?聞いたらまずかったかなぁ。」


…確信犯だ…!!この子絶対確信してるぞ!俺のファーストキスの相手が会長ってこと…!!


焦る俺だが、るいの表情は変わらない。それどころか、次の瞬間るいが発した台詞に俺は、思い出した。


「会長か…?」

「!!!そうだった、俺会長とキスしてるとこるいに見られたことあるんだ…」


しかしそれは2度目の会長とのキスの話。


「チッ…なんだおもしろくない。」


……アキちゃん…キミって子は…。

舌打ちをしながら、その話にはもう興味が失せたように立ち去った。

かわいいアキちゃんは何処へ。


はい、じゃあアキちゃんもこの話題に興味が失せたところでおしまいおしまい。と思っていた俺だが、るいは俺の顔をジッと見つめてきた。


「……ん?」

「マジでアレがファーストキスなわけ?」

「……ん?…いや、あれは多分3回目…」


……ハッ!

俺なに馬鹿正直に答えてんの!?


「は?お前会長と3回もキスしたの?」

「え、ちがうちがう」


……あれ、否定してみたものの違わない…気がする…?俺、多分3回以上会長とキスしたな。


と過去の記憶を引っ張り出しているあいだ、るいはずっと俺のことを見つめていた。


ハッとしてるいに視線を向けると、るいはちょっと唇を尖らせている。


やだ、るいきゅんが拗ねてる。
矢田 るいきゅんが拗ねてる。
おっとダジャレを言ってしまったな。


「ふふふ」


そんな自分に俺は一人笑いがこみ上げていると、るいは俺の胸倉をガシッと掴んできた。


「えっ、ちょ、えっ」

「なんかすげえむかつくな」

「え、ごめん」


胸倉を掴まれた状態で身体を引き寄せられたので、るいの鋭い視線がジッと近距離で俺を睨みつけている。え、こわ。


一人ダジャレを言って笑ったことにお怒りだろうか。と思っていると、るいは俺を睨みつけたまま俺の唇に噛み付いた。


そう、噛み付いたのだ。

いやマジで。

下唇を一瞬マジでギリっと噛み付かれ、ピリッと痛みが走り、俺は「んっ!!」と声を上げながら目を強く瞑った。


ここは教室で、周囲にはクラスメイトもたくさんいるのに、このお方なんてことをするのかね!?


案の定、周囲はわっと盛り上がる。


「矢田くんからのキス!羨ましいぞクソ航!」だなんて声が聞こえるが、待て、よく見ろよ噛み付かれてるんだぞ!?


痛いよ!!!!!


しかし噛み付かれたのは一度だけで、その後すぐにペロリと俺の唇を舐めたるいは、バシンと俺の頭を強く叩いて、掴まれてた胸倉はドン!と強く押しやられながら離された。


乱暴!!!すげえ乱暴!!!


トッ、トッ、と俺はバランスを崩さぬよう踏み止まる。


るいはそのままなにも言わず、不機嫌面のまま教室を出て行った。



「………え………。」


俺は唖然として、暫くそこに佇んでいた。


もしやこれは………

別れの危機というやつだろうか…!?


俺は何も言わず立ち去ったるいに、とてつもない焦りを感じたのだった。


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