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隆くんに呼び出され、気合い十分で向かった自習室。そこには、にこやかな笑みを浮かべた隆くんが僕を待っていた。
僕が隆くんの元へ駆け寄った瞬間、隆くんは、間も無く口を開ける。
『有坂先輩、俺とセックスしたいんすよね?
いいっすよ、セックス。しましょうか。』
いつも断られてばかりだったから、この誘いには絶対に裏があると思った。僕にとって、こんなに都合が良いことはない。
さらに隆くんは僕に言う。
『有坂先輩がなかなか俺のこと諦めてくれないから1回ヤったら満足かなって。』
1回ヤったら満足?
そんなわけないでしょ。1回ヤってしまったら、もっともっと、って欲が出るに決まってる。
隆くんは、たった1度だけの行為で僕が満足すると思ってるの?僕は、隆くん自身が欲しいのに。
目の前に立つ隆くんにそっと手を伸ばし、僕は隆くんの胸に抱きついた。
隆くんが何を考えていようと、このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
ドクン…、ドクン…、一定のリズムで動いている隆くんの心臓を肌で感じて、僕の胸はやたらとドキドキする。
見上げると隆くんは僕を見下ろしていて、僕が恋した隆くんの綺麗な顔が近距離にあることに僕はたまらなくなって、隆くんの頬に手を伸ばし、僕は隆くんにキスをしようと唇を近付けた。
けれど隆くんは、僕の唇を避けるように顔を引いた。僕は意地でも隆くんとキスがしたくて、隆くんが逃げないように隆くんの頭に手を回して、もう一度唇を近付けた。
僕と隆くんの唇が合わさる。夢のような瞬間だ。
少しカサついた隆くんの唇に潤いを与えてあげたくて、僕は隆くんの唇を舐める。身体が少し、興奮でゾクゾクと震えた。
次に僕は、隆くんと舌を絡めたかったけれど、隆くんの口は固く閉じている。
「口開けて?隆くんと舌絡めたい。1回させてくれたら満足するから。」
その言葉は嘘だけど、僕はどうしても、と願うように隆くんに告げる。
すると、何か言おうとした隆くんの口がうっすら開き、僕はその隙に舌を忍ばせ、食らいつくように隆くんの首に腕を回してキスをした。
僕はその行為だけで十分に興奮してしまい、僕の股間は膨らみ、今すぐにでも隆くんとセックスがしたくてしたくてたまらない。
僕は急かすように隆くんの股間をズボンの上から撫で回し、ベルトを外して、隆くんのパンツの中に手を入れる。
僕のモノとは真逆に、隆くんのモノは、さすがにキスだけじゃ反応していないようだ。
「今僕が、気持ちよくしてあげるね。」
僕はこれからが本番だという思いで、隆くんのモノを手に取り、刺激を与えるように上下に扱いた。
チラリと隆くんの表情を伺うように見上げると、隆くんは無表情で何も言わずに僕を見下ろしている。
「気持ち良い?」
「…そうでもない。」
隆くんは僕の問いかけに、ぶっきらぼうな態度で答えた。
正直に気持ち良いって言えばいいのに。
ここを触られて気持ち良くならない人なんていないでしょ。
僕は自分自身のそんな考えにだんだん調子に乗ってきて、隆くんのパンツの中のモノを取り出して、口を寄せ、チュッと音を立てながら先端に吸い付いた。
すると、隆くんの表情がピクリと変化したことに気付く。僕は少しだけ手応えを感じた。
全体を舐めるように顔を動かして、舌でねっとり舐め上げる。そして、口で咥えて、喉の奥まで入れて、出して、それを何度か繰り返す。
この時、僕の中では順調だった。
このまま隆くんも、徐々に興奮してくれると思っていた。
けれど、隆くんの僕を見下ろす目はずっと冷めていて、隆くんが興奮している様子は微塵も感じられない。
ここで僕は、自分一人だけが興奮していたことに気付く。
ひどく虚しい。望んでいた行為のはずなのに、このまま隆くんとセックスできたとしても、きっと僕は満たされない。
遣る瀬無い気持ちで僕の手は止まっていた時、不意に教室の扉が何者かによってガラリと開かれた。
その音に僕は驚き、振り返る。
そこには、顰めっ面の新見 倖多が立っていた。
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