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『りゅう、あとでちょっと話したいからりゅうの部屋行く。』
倖多はそれだけ言って、食後、ホームルームに参加するために杉谷と共にホームルームが行われる部屋へ向かった。
話したいから、って、なにを言われるんだろう。…俺振られんのかな?それともオッケーしてもらえる?
倖多は俺をどう思っているんだろう。
食堂から自室に戻ってきて一人で居ても落ち着かないため、俺は隣の祥哉の居る部屋にお邪魔する。
「俺やっぱ振られんのかな…どう思う?」
「さあなぁ。」
「オッケーだったらすでにあの場でオッケーしてもらえてると思わねえ?」
「あーまぁそうだなぁ。」
今日もパン一で日課である筋トレをしながら俺の話に相槌を打ってくる祥哉だが、ちゃんと話を聞いてくれているのか少々疑わしい。
しかしまあ、別にそこまで祥哉に話を聞いてほしいわけでは無く、俺は多分、気持ちを口に出して吐き出したいだけなのだ。
「あぁあもう!倖多俺のことどう思ってんだよぉぉ…!」
「おいおい、あんまり騒ぐなって。副会長に壁ドンされるぞ。」
畳の上に寝っ転がって、べしべしと畳をしばきながら叫ぶと、腹筋をしながら祥哉が俺を注意してくる。
「今朝新見の大声で副会長に壁ドンされたからな。」
「まじで?」
「壁薄いっぽいしな。エッチなんかしてみろ、声ダダ漏れだわ。」
「…ハァ…。…エッチか。…やっぱ倖多は俺とヤりたいとか思わねえよなぁ。」
「隆は新見とヤりたいとか思うんだ?好きになったらそういうもん?お前ノンケだったのに。」
俺の恋話には乗ってくれなかったのに、下ネタに入った途端に腹筋をやめて胡座をかいだ祥哉が、寝転がっている俺を見下ろし、問いかけてくる。
いやもうこれは、好きになった時点でつまりそういうことだ。倖多の全部が良く見えてくるんだよな。
「もうさ、性別倖多って感じ。そこらの野郎と同じ男だと思えねえよ。」
「そこらの野郎って。今わざとらしく俺の方ジッと見て言ったよな。」
「おっと悪い、間近にそこらの野郎が居たもんだからつい。」
祥哉のゴツゴツした腕や腹筋は、どこからどうみてもそこらの野郎だ。しかし倖多の身体と言ったら…。
白くなめらかな肌は思わず舐めちゃいたいくらい綺麗だ。それから、声も。倖多を喘がしたらどんなにイイ声が聞けるだろうか。
あぁ…キスして、触って、一晩中倖多と……
「おい隆、勃ってるぞ。」
「……あ。」
祥哉に指摘され、慌てて身体を起こした。
そして股間を押さえて蹲る。
「さてはやらしい妄想したなぁ?」
「…う〜〜あ〜〜鎮まれ〜〜〜。」
俺を見てニタニタと笑っているだろう祥哉は今はどうでもいい。
必死で自分を鎮めていたその時、トントン、と部屋の扉がノックされる音がして、俺はギクリとしながらその体勢のまま固まった。
「おやぁ?新見戻ってきたんじゃね?」
……まさか。このタイミングかよ?
ククク、と笑う祥哉の声と、ガチャ、と扉が開かれる音、そして……
「あれ?りゅう?…何やってんの?」
倖多の声が聞こえた瞬間、身体を起こして正座する。不思議そうに俺を見ている倖多に向かって、祥哉が余計な事を口にしてしまった。
「隆ってば、新見でやらしい妄想して勃起させちゃってんのよ〜。」
「えっ…。」
その祥哉の余計な発言に、倖多の顔がじわじわと真っ赤に染まる。
そして、真っ赤な顔をした倖多が、祥哉に向かってある頼みを口にした。
「…あの、祥哉先輩すみません…。少しだけりゅうと、2人にさせてもらえませんか…?」
俺はそんな倖多の頼みに、この状況で?と呆気にとられた。
「おー、いいぞいいぞ。ごゆっくり〜。」
祥哉はニタニタしながら脱いでいたシャツを持って部屋を出て行く。
「…さてと、良い機会かも。」
2人きりになった空間で、倖多はそう言いながら俺の目の前に腰を下ろす。
「…良い機会?」
「うん。いずれは通る道だから。」
ちょっと、倖多の言いたいことがわからなくて困惑する。
「…男同士の関係って、実際どんな感じなんだろうな?」
倖多はそう言いながら、なんと俺の股間に手を伸ばしてきた。
「えっ…」
「あ、ほんとだ。勃ってる。」
クスッと笑って俺を見る倖多に、俺は自分が爆発しそうなほど、身体が一気に熱くなった。
俺が今どういう気持ちなのか、勿論わかってやってるんだよな?
そんな行動取られたら、俺まじで期待しちゃうんだけど…。
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