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【 同性を惚れさせる方法 】

【 男が男を惚れさせるには 】

【 男が男を落とす方法 】


スマホの検索履歴にどんどん残っていく文字に、どんだけ必死なんだ俺…って、ちょっと疲れてスマホを布団の上に放り投げた。


夕飯後、1年生は約1時間程度のクラス別ホームルームが行われたため、他学年生徒会役員で用無しの俺は、先に部屋に戻って一人の時間を過ごしていた。


倖多を惚れさせる。

そうと決まれば行動あるのみ。

…ってとこまでいって、俺はふと気付いてしまった。


男の落とし方が…、

同性の落とし方がわからない。


小学生の頃は、ちょっと女の子に優しくするとすぐ告られた。中学生の頃は、そもそもイケメンだ頭も良いと持て囃され告白されまくった。

高校生になって、男にまで告白された時は正直引いた。そう、俺は彼らに“引いた”のだ。

そんな俺が今、彼らと同じ状況に立っている。

ただ『好きだ』と告白するだけじゃダメな世界に立っている。今までの恋愛経験なんて経験値にもならない世界だ。


どうしよう、どう攻める?

いや、根本的に男女の恋愛と同じと考えていいだろうか。“この人が良い”と思う部分があるから、その人に恋をする。

俺は、“倖多が良い”と思ったから、倖多に恋をした。

よし。つまり倖多に“俺が良い”と思ってもらえるような言動を取らねば。

そうと決まればさっそく決行だ。


……いや、だからなにを?

それを考えているのだ。

しっかりしろよ瀬戸 隆。

男なら、当たって砕けろだ!

…いや砕けちゃいけない。

男なら、当たって砕けない!


「…はぁ。課題でもするか。」


実は2、3年の生徒会役員用に、最低限これだけは空き時間を使ってやるようにと渡されていたプリントがある。

鞄の中からプリントと筆記用具を取り出し、気晴らしにプリントの問題を解くことにした。


「祥哉んとこ行くか。」


あいつも今部屋で一人のはず。とプリントと筆記用具を持って部屋を出る。

隣の部屋のドアノブを回すと、鍵はかけられておらず扉が開いた。無用心だな。


「祥哉一緒にプリントやろうぜー…って、筋トレかよ。」


祥哉はパンツ一丁で腕立て伏せをやっていた。


「てかパンイチやめろよ!倖多帰ってくるだろーが!」

「ん?おぉ、隆か。」

「服着ろよ!!!」

「俺の筋トレスタイルはいつもこうだぞ?」

「そんなもん知るか!倖多帰ってくるまでに服着ろよ!」


なんでこんなことで敏感に反応しないといけなくなるのか。パンイチだからなんだというのだ。以前の俺なら、男のパンイチなど気にもならなかったのに。

パンイチ男と倖多を対面させるのがなんか嫌だ。

もしも、このパンイチ男のムキムキの筋肉を見て、倖多がうっかりときめいてしまったりとかしたら。

ああ、嫌だ嫌だ。
倖多は俺が惚れさせるんだから。


祥哉の近くに脱ぎ捨てられていたシャツとジャージを拾い上げ、腕立て伏せのポーズをしている祥哉に向かって服を投げた。


「ちょい待ち、着るから!あと10回!」


服が背中に乗ったまま、1回、2回、と腕立て伏せを続ける祥哉。そんな時、ガチャ、と部屋の扉が開かれる音がする。


「ただいまー、戻りましたよーって、りゅう来てたんだ。祥哉先輩?筋トレですか。」


予想外なほど早く、倖多が部屋に戻って来た。


「おぉ…、倖多早かったな。」

「うん、明日の予定聞いて登山の感想書いてすぐ終わった。」


倖多は祥哉を一見したものの、興味無さげに目を逸らし、鞄の中に筆箱をしまった。

まあ同性の先輩に対する興味関心なんて普通にこの程度か。祥哉がパンイチだからと言って、なにも心配する必要は無かった。

言いかえれば、仮に俺がパンイチになったとしても別に倖多からすればどうってことのないこと。

…ここで、男女の差が出るな。と思った。

きっとこの場にパンイチの女の子が居たら、倖多は赤面してるだろう。


………どうすれば、どうすればいいんだ。

同性を惚れさせる方法が、全然わかんねえ。


俺は、倖多を前にして途方に暮れた。



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