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「隆、…あのな、新見を生徒会に勧誘することになったから。…一応、報告。」

「…あ、はい。了解です。」


休み時間、会長がわざわざ俺の元に現れた。
用件は何かと思えば、その報告らしい。

それから、俺の顔色を窺うようにチラリと視線を向けられ、なんだと思えば「…悪かった。お前の恋人、悪く言って。」と謝ってきた。


実は会長、結構気にしていたのかも?

基本的に会長は人のことを悪く言うような人じゃないから、この前のは機嫌が悪くてつい言ってしまったとか。


「いいっすよ。許します。そのかわり、倖多がもし生徒会に入ることになったら優しくしてあげてください。倖多良い子ですから。」

「……うん。わかった。」


ちょっと上から目線にも感じられるような俺の言い草に、会長は若干苦笑しつつ頷いた。

よかった、ここで反論されなくて。

俺、倖多のことになるとちょっと熱くなってしまうから、また会長と不穏な空気になり兼ねない。


「あ、勧誘はいつ行くんですか?俺も一緒に行った方がいいですか?」

「…や、悠馬に任せてあるから大丈夫。」

「は?副会長に…?」


なんか、ちょっと、

それを聞いた瞬間嫌な予感がした。





「新見、さっきの話の続きをしようよ。」


俺の前に再び、副会長が現れた。


「また新見を呼び出したとか隆に知られたら怒られそうだから黙っててくれる?」

「そう言うならわざわざ呼び出さなくてもいいんじゃないですか?」

「まあそう言うなって。」


副会長は穏やかに笑いながら、今度は俺を人気の無い空き教室へと促した。


「生徒会室じゃまた隆と出くわすかもしれないしね。」

「俺りゅうには隠し事しないので副会長との会話とか全部話しますよ?」

「ふうん?まあ別に良いけど。」


副会長はそう言った瞬間、スッと冷めた表情に変わり、俺の顎を掴んでクイッと上に持ち上げた。


「なあ、マジでお前、隆と2人で何隠してんの?」


そして、突然冷ややかなオーラを撒き散らした副会長が、俺を冷めた目で見つめる。


「…なんですか、いきなり…っ」


突然の副会長の変わり様に驚いて、心臓がドキッとした。


「なんか隠してることあるんだろ?言えよ黙っててやるから。」

「黙っててやるって、そんなの信用できませんよ。」


だってこの人、まるで人が変わったかのように別人みたいな一面を見せてきた。こんな人に、仮に隠し事があったって言おうとは思わない。

良かった、俺は副会長にりゅうとは本当は付き合ってないってことを言ってしまいそうになった。

言わなくてよかった。

やっぱり、油断しちゃいけないな。

ずっと、りゅうとの2人だけの秘密にしよう。


副会長の目の前でそう決意した次の瞬間、何故だか副会長の唇が俺の唇に重なった。


「ン…っ!?」


なに、なんだ、なんで、俺副会長にキスされてんだ…!?頭の中でパニックになりながら、副会長の胸元を両手で押して突き放そうとしたが、副会長は俺の身体に腕を回し、ギュッと抱きしめられた状態でさらに深く唇に食らいつかれてしまった。


「…ちょ…ッ、…んっ…!」


舌を入れられ、副会長の手が俺の尻を撫で回している。この人会長のことが好きなクセに何やってんだ!?

この瞬間、俺は副会長に強く不信感を抱いた。


そして、尻を撫でられていた手が今度はカチャカチャと俺のベルトを触って外そうとしていることに気付き、ゾッとした。


やばいって、まじ、何やろうとしてんだよ!?


俺は危機を感じ、もがいて、副会長の足をげしげしと踏んづけた。


その後ようやくチュッと副会長の唇が俺の口から離れていき、副会長は平然とした顔で俺に告げる。


「新見二股しちゃったねー。どうする?今あったことも隆に言うの?」

「…はい!?二股!?あんたが一方的にやって来たのに何言ってるんですか!?」

「まあ別に言えばいいけど。そんで、新見と隆の間に亀裂が入ったら俺的には万々歳だよ。新見、いつでも俺のところ来なよ。俺が新見を引き取ってあげる。」

「いや副会長がやってること意味がわかりません!なにが目的なんですか!?」

「目的?そんなの決まってるだろ。」


ああ、そっか。冷静に考えてみればすぐに分かることだ。

この人全部、会長のために動いてるんだ。

どうやら俺の存在は、まじで副会長からしたら邪魔者らしい。


「あ、そうだ忘れてた。秀が是非新見に生徒会入って欲しいって言ってたからよろしくね。」

「は!?いや忘れてたって、そっちの方が重要じゃないんですか?」

「別にそこまで重要じゃないでしょ。キミが生徒会に入ることなんてみんな当たり前のように思ってることなんだし。」

「…なにそれ…俺聞いてない……。」

「まあ仲良くやろうよ。あ、放課後迎えに来てあげるから大人しく待ってなよ。」

「えぇ…。なんか俺の意思関係なくどんどん話進んでく…。」


りゅうは嫌ならはっきり断れって言ってた。でも、副会長を前にして、いざ断ろうとしたって無理そうだ。


「じゃあまたね。」と用件だけ伝え、俺を置いてさっさと立ち去っていった副会長。…なんなんだろう、あの人…怖い。

俺はその場で力が抜けてしまって、蹲り、頭を抱えた。

りゅう…、副会長がこえーよ。助けて。


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