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「どう考えても秀が悪いよ。わかってるよね?」

「………。」


そんな泣きそうな顔今更されてもねぇ。

自業自得ってのはまさにこのこと。

恋人を貶されたら誰でも嫌な気持ちになるに決まってる。

新見は成績優秀者ってだけで生徒会役員候補に上がっているだけの話なのに、それで新見を悪く言うのはお門違い。私情を挟むのはよろしくない。

隆が秀に怒るのも仕方ないことだし、ちゃんと反省して謝った方がいい。そうしなければ、隆の秀への信用が無くなってしまう。


「俺は逆に新見を生徒会に入れちゃえば?って思うけどな。ポッと出の新見を俺はぶっちゃけまだ怪しんでるから。新見の実態を知るためにも、あいつを近くに置いてみたらどうか?ってね。」

「じゃあそうする。」

「…え、えらく素直に聞き入れるね。意気消沈しちゃった?」

「…別に。」


口数は少なく、眉間にしわを寄せてへの字でそっぽ向いている秀。

自分の失言に後悔してんの…かな?


「じゃあ明日もう一度話しよう。秀、隆に1回謝っときなよ。」

「…わかった。」


おお、秀がまた素直。

隆に取られた態度が相当ショックだったのかも。

その日の秀は、ずっと物静かで落ち込み気味で、元気の無い生徒会長をどうかしたのだろうか、と心配している生徒は多かった。



翌日、俺と秀が食堂へ訪れたところに、新見と一緒にいる隆とすれ違った。

隆からの挨拶は無かった。
隆の目は、一目も秀を見ようとはしなかった。ああ、昨日のことまだ怒ってるんだ。って悟った時、秀はまた泣きそうな顔をしていた。

秀、情けないからそんな顔すんな。って思っていた時、俺は見てしまった。

隆と新見にすれ違った後、新見が苦い表情でチラリと秀に視線を向けた瞬間を。

なんとなく気まずそうな新見のその表情に、俺は少し疑問を感じてしまった。


なんでお前が、気まずそうな顔をする?

隆に想われている余裕から、秀のことを憐れんでいるのか?


それとも、

なにか後ろめたいことでも…?


その時俺は、もっともっと新見をつついて、あいつのことを探ってやりたいと思ってしまった。



「新見 倖多くん、ちょっといい?」


思い立ったら即行動派な俺は、ちょっと新見と話をしようと休み時間に新見の元へと赴いた。

俺の顔を見た瞬間、新見はめんどくさそうな顔をした。可愛げの無いやつ。

ちょっとは周囲を見習って俺のことチヤホヤしろよ。


「えっと、…副会長でしたっけ?」

「うん、そうそう。」

「…あの、俺に何か…?」

「さっきあからさまにめんどくさそうな顔したよね。俺のこと嫌い?」

「え、いや、そんなことは…。」

「じゃあなんでめんどくさそうな顔したの?」

「…え、えっと、…人気そうな方が俺を訪ねてきたから、じゃないですかね…。」

「え〜?キミ何言ってんの、隆と付き合ってるくせに。」


新見の発言に対し、人気者の扱いには慣れっこでしょ?という意味を込めてそう返せば、新見はジッと黙って俺を見つめてきた。


あ、この目。この目は俺を探る目だ。

言っとくけど、探りたいのは俺の方。


俺はにこりと笑って新見の次の出方を待っていると、新見は不意に目線を下に落とし、ちょっと困った顔をした。


「…え、新見どうしたの。」

「……なんでもないです。」


え、なに、今何か言おうとしたよな?

新見は困った顔で、一度開いた口を閉じた。


「言いたいことあったら言いなよ。」

「……隆と、会長は、仲が良かったんですか?」


言おうか言うまいか悩んだ様子で、新見は俺にそんな質問をしてきた。


ん?キミがなんでそんなことを知りたいの?


「仲良かったっていうか、秀が…あ、会長のことね。秀が隆を可愛がってたんだよ。隆も秀を頼ってたから仲は良かったって言うのかな。」

「…そうですか。…ありがとうございます。」


新見にそんな話を聞かせてやると、彼は何故か、とても落ち込んだような様子を見せた。


………今の話でまさか、嫉妬?

ではない気がするのは俺の勘。


知りたい。彼の、思うこと。


「ねえ、もうちょっとだけ話そうよ。」


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