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「んっ!やばいこれ超うまいわ!!!」

「おー、よかったー。最初だから結構気合い入れて作った。」


自炊をすると決めて初日に選んだのは餃子だ。スープも用意して、りゅうに喜んでもらえた様子。


「まじ俺、倖多が入学してきてくれて良かった!うまいご飯をゆっくり食べれるって最高だな!」


機嫌良さそうに笑ってそう言ってくれる。

そんなりゅうに、俺はホッと息を吐く。


「うん、そうだな。てかりゅうの機嫌戻って良かった。なんかさっきまで機嫌悪そうだったし。」

「…え、…ごめん。」


さっき、と言うのは、生徒会の用事を終わらせたりゅうと夕飯の買い出しのために待ち合わせをした頃からだ。


「や、別に謝らなくていいけど。なんかあった?」


と、ちょっと気になってりゅうに問いかけると、りゅうは言い辛そうに視線を俺から逸らした。

そして、パクリと餃子を一口で食べる。

もぐもぐと餃子を食べた後、りゅうはまた不機嫌そうな様子を見せながら、徐ろに口を開いた。


「…会長にマジ腹立ってさぁ。」

「会長?…え、なんで?」


会長…と言ったらまず、りゅうのことが好き、ってのが頭に思い浮かぶ。それは憶測でしかないけど、俺を見るあの生徒会長の目は確かに嫉妬心を含む目だった。

そんなあの人が、りゅうに腹立たせるようなこと、…するか?


「……生徒会のことで…ちょっと…。」


なんだか話し辛そうだ。

聞いちゃダメなことだったかも。


「ごめんごめん、言い辛い事は無理して話そうとしなくていいよ。でも愚痴ならいくらでも聞くから。勿論誰にも言わないし安心して。」


せっかくの食事中に嫌な事を思い出させちゃったか?と思ってそう言えば、りゅうは箸を置いて俺の髪をグシャグシャになるまで撫でてきた。


「あーもう…。倖多ほんと良い子だな。」

「え、なんか褒められた。ありがとう。」

「…やっぱりますます会長に腹立ってきたな。」


………え?なんでそうなる。

ボソッと口にしたりゅうの呟きに、俺は無言で首を傾げた。

そこで、りゅうがパッと俺に視線を向け、問いかけてくる。


「倖多は生徒会ってどう思う?」

「…生徒会?どう…と聞かれても特になんとも…」

「入りたいか入りたくないかで言ったら?」

「えぇ?唐突だな。正直入りたくはねえだろ。役員のりゅうに言うのもなんだけど。」


と、そう答えた瞬間、りゅうの表情が何故か明るくなった。


「え、そこ表情明るくするところ?」

「いや、そうだよな、って。入りたくねえよな。あんな面倒くさいの。実を言うと成績優秀者の倖多は生徒会の勧誘候補に上がってるんだけど、嫌ですってきっぱり断わりゃいいから。」

「……これまた唐突な話だな…。」

「こっちから願い下げだ!って断ればいいからな。」

「え、なんでそんな断り方……」

「いいんだよそれで!!!」


突然、興奮気味に声を荒げたりゅうに、ビクッとしてしまった。

ここで俺は、会長に腹が立つと言うりゅう、その内容は生徒会関連のことで、続けて俺が生徒会へ勧誘候補だと話をされたから、ひょっとしてりゅうが会長に怒っているのは俺が関係しているんじゃないかと思った。


「…もしかして会長が俺の悪口でも言ったか?」


それは、俺の予測だったけど、りゅうは俺の問いかけに、答え辛そうに表情を歪めた。


これは多分、当たりだな。


会長はりゅうのことが好き。

故に、俺の存在は気に食わない。

そうすると、生徒会に俺が入ることなんて会長は望んでいないだろう。

だから会長は、俺を生徒会には入れないための言いがかりをつけたのではないだろうか。


会長の味方をするわけではないけれど、会長の気持ちを考えると、俺のことを悪く言いたくなる気持ちも分かる。

けれど何も知らないりゅうからしたら、親しくしている人の悪口を言われるのは腹が立つだろう。その気持ちもよく分かる。自意識過剰な考えかもしれないが、ここはそう思いたい。


「まあそうカリカリすんなって。あれじゃね?生徒会にカップル居るとイチャつかれるから困るとか思ってんじゃねえの?」


と俺は、面白おかしくりゅうを宥めるようにそう言うも、りゅうはいまだに不機嫌そうに口を開いた。


「…会長、倖多のこと嫌いだっつったんだよ。倖多のこと全然知りもしないくせに。」


…あぁ、まあそんなことだろうと思った。


「普通俺にそれ言うか?仮にも倖多の恋人だっつー人間に…。」


…嫉妬してるんだよ。
不器用な人なんだ、きっと。

そう怒ってやんなよ。とは言える立場ではないから、俺はそこで口を噤んだ。


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