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翌日の朝から、さっそくりゅうは「や。」と爽やかに片手を上げて俺の目の前に現れた。


「おはよぉ〜ふぁ〜…。」


新生活の初日はとても疲れたため、朝起きるのが結構辛い。

大きな欠伸をしながらりゅうの元へ歩み寄ると、りゅうは「おはようのチューする?」と冗談か本気かわからないことを言ってきたが、別にいちいちする必要もないと思う。


そんなに頻繁にキスするカップル居ないって。と思いながら「はいはい。」とりゅうの発言を軽く流して足を進めていると、突然グッと腕を引かれ、身体が引き寄せられた。


「うわっ!?」


驚いて声を上げたその直後、「チュッ」と唇に柔らかい感触が。


「やっぱ一発やっとくべきっしょ。」


近距離でそう言われ、目の前にはニッと笑ったりゅうの顔。


周囲には、食堂へ向かう生徒がチラホラ。

俺たちのことをまじまじと伺っている様子。


どうやらりゅうは、結構ノリノリで俺との関係を楽しんでいる。


「クッソー、お前これで俺にキスすんの何回目だぁ?」


小声でりゅうに問いかけると、「いやぁ俺ら熱々すぎて参っちゃうよな。」と笑い声を上げるりゅうに、俺はなんだかおかしくて釣られて笑った。


「お似合いだけどっ…!でもなんか納得いかない…!!」


ふと、そう言って悔しそうに俺を見ている生徒と目が合い、ギクリとする。


「…なぁ、これほんとに大丈夫か?」

「ん?なにが?」

「今なんか納得いかない!って聞こえたんだけど…」

「あぁ、俺らの関係?そんなの知らねーよ。俺にだってプライベートってもんがある。」

「…なんか芸能人みたい…。」

「まじでそれな。俺なんか普通の高校生だっつーの。巨乳よりCカップくらいの女の子が好きな男子高校生だっつーの。」

「あー分かるー。小さすぎずでかすぎずのとこが良いんだよなー。」

「おっ、まさかの好みまで合う感じ?」


気付けば2人揃ってニヤニヤと女の子の胸の話になっていて、俺はハッとする。


「ってダメダメ。もーりゅうったらー俺の良いところを語ってくれなきゃぁー!」

「おっとそうだったそうだった。」


なんだかんだ言って俺も結構ノリノリじゃねーか。とひっそり思いながらも、りゅうとの会話が楽しくて、俺たちは学校に着いて別れるまで、ずっと笑って会話をしていた。

だから、俺とりゅうの関係は、あっという間に学校中に広まっていた。



りゅうは不慣れな俺を教室まで送ってくれた。ぶっちゃけまだ校舎の造りを把握できてないからとてもありがたい。

入学早々りゅうと知り合えて良かったと思った。


1年の教室がある廊下をりゅうと歩くのはとても目立つ。まあどこを歩いても目立つけど。


「じゃあまたね。」と笑顔で俺に手を振って立ち去ったりゅうに、なんだか俺の方が彼女みたいじゃね?という不満を感じながら教室に入ると、その瞬間新しいクラスメイトにザッと囲まれてしまった。


「新見くん瀬戸先輩の恋人ってマジ!?」

「つーかキスしてたよな!?」

「いつから付き合ってんの!?瀬戸先輩ってノンケって噂聞いてたけど!」

「てかどっちが抱かれんの!?新見くん!?」


いやちょっと待って。いっぺんに話しかけられたって聞き取れねえから。


俺は口々に俺に問いかけてくるクラスメイトには返事をせず、にっこりと愛想良く笑顔を浮かべる。どの問いかけにも答える気はまったくない。


若干タイミングができた隙に、俺は口を開いた。


「ないしょ。」


困った時の“内緒”だ。

俺はこの内緒をひたすら活用していきたい。

なに聞かれても『内緒』だ。


「うわー新見くんその笑顔は反則だよー…。」

「マジかっこいいよね。残念だけど瀬戸先輩なら許せちゃうなー。」

「くそー、なんで彼氏持ちなんだよー!」

「僕新見くんタイプの顔なのにー!」

「瀬戸先輩は反則だろー!」


……う、うん。あの、そんなに残念がられるとは思わなかったぞ。逆に俺に彼氏いなかったらこの人たち俺をどうすんの?

言っとくけど俺は可愛い女の子が大好きなんだぞ。いや、これ言っちゃダメだけど。だって俺彼氏居るもんな。


………はぁ。彼氏…か。変なの。


「…友達、ほしいなぁ。」


りゅうの存在はさておき、同じクラスで友達がほしい。

ついついポロリと小言を漏らしてしまったら、「はいはい!僕友達立候補する!」「俺も俺も!」と周囲のクラスメイトは言ってくれるんだけど、なんか違うんだよなぁ…。


…まあ、居ないよりはマシか。

ってことで、俺は「うん。よろしく。」と彼らの申し出に頷いた。


何人か自己紹介してくれたけど、誰一人覚えられなかった。


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