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「あれ?早見くんは?」
「早退だってー。」
昼休み直前、元気に教室を飛び出してったやつが早退だと?と不審に思いながらも、なにか聞く暇も無くいなくなったから渋々一人で弁当を食べていた。
咲田くんも来ねえしつまらん昼休みを過ごしていた時、俺の前に現れたのは最近よく想にちょっかいかけに来るこいつ。ええっと、名前はなんだっけ。
「早退〜?嘘、なんで?」
「知らねーよ、俺が聞きたい。」
あ、この冷凍の唐揚げ美味しい!
ぱくりと唐揚げを食べ、結構イケる唐揚げに満足していると、目の前の人が眉を顰めて「やけに茶色い弁当だね。」と言って俺の弁当を見下ろしてくる。
唐揚げ、ミートボール、焦げた卵焼き。
「あー、今日卵焼き失敗しちゃったからなぁ。」
「いやそういうことじゃなくてね。矢野くんってかっこいいけど中身はあれなのかな?」
「あれ?」
「まあいいや、」と俺の机に弁当を置いて、近くの空席を引き寄せ、腰を下ろすええっと、名前なんだっけ。
「ごめん、名前なんだっけ?」
「小池だよ。A組。よろしくね。」
「小池くんね。ところでその弁当一個想の分?」
「そうだよ。早見くんほんとにどこいったの?」
うーん、多分君から逃げてるんだろうね。
嫌がってたし。普通に話してる感じだと別に悪いやつじゃなさそうなんだけどなぁ。
「てか小池くんまじで想のこと好きなん?」
「うん、好きー。かっこいいよねー。あのダッサイ眼鏡が早見くんの顔台無しにしてるよ。」
「あー、それもっと言ってやって。あいつ割れるまで多分あの眼鏡使い続けるだろうなぁ。」
「へー、じゃあ割っちゃおうかなぁ。」
小池くんはにっこりと満面の笑みを浮かべながら、そんな物騒なこと言い出した。
いやいや、さすがに冗談だろ。
反応に困り、白ご飯を大量に口に含む。
俺がもぐついてるあいだ小池くんは、弁当の蓋を開けてお箸を取り出している。てかここで食うんだ。
まあ俺はいいけど。暇だったし。
ぱかっと開かれた弁当の中身は普通に美味そうな弁当だ。
「おー、咲田くんといい小池くんといい料理うまいなぁ。」
そんな感想を口にした時、小池くんの目の色が変わった。
途端にムッと不機嫌そうな顔になり、あれ?なんかまずいこと言った?と思ったら小池くんはすぐに表情を変え、「僕の方が美味しいよ。」と卵焼きを箸で掴んで俺の口元に持ってきた。
食っていいってこと?
そのままパクリと卵焼きに齧り付くと、口に広がる甘い味。
「うわ、この卵焼きめっちゃ砂糖入ってね?もうちょい減らした方が、…あ、いや、ごめん…こういう味付けなんだ、ね?」
やっべー、超にらまれた。
プライド高そ〜、否定的な意見は断固として受け入れなさそう。
「あっ、でも想に食わす前でよかったんじゃね?あいつ絶対まずいって、……言いそ、………。」
ふふふ、小池くんの睨み顔こわすぎて逆に笑いそうになっちゃった。
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