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休み時間、C組の教室前を通ると、早見くんが話しかけてくれた。

外で昼ご飯を食べようと誘ってくれたのに、小池の存在がチラついて嬉しいのに素直に喜べない。

早見くんとご飯を食べたい。

でも小池と関わりたくない。

今早見くんと関わると、小池にチクチク何か言われそう。

でもやっぱり早見くんとは関わりたい。

あれとこれとで揺れ動く自分の中の天秤がグラグラして嫌になる。小池の存在なんか、無視できたらいいのに。


「咲田さぁ、お前ほんっと目障りだね?」


先程早見くんに見せていた笑顔を一瞬で消して、冷ややかな表情で俺を見る。

人前でコロコロ表情も態度も変えれてすごいな。周囲には良い顔しているのに、なんで俺だけ…。


「あ〜あ、早見くんと仲良くするのやめてほしいなぁ。ほんっとに目障り〜。」


言いたいことは言い切ったというような態度で、小池は俺に背を向け立ち去っていった。

仲良くするのやめてほしいって、まるで小学生みたいなわがままだ。


『どこで誰と食おうが俺の勝手』


俺もほんと、そう思うよ。早見くん。

先程の早見くんとの会話を思い出す。

俺、小池の言動に振り回されてバカみたい。

小池の存在なんか、知るかよ。

俺も、自分のやりたいようにしたい。


…いや、しよう。うん。する。


だってやっぱり、早見くんに近付きたいもん。



4時間目の終了のチャイムが鳴り、担当教師が教室を出て行ったと同時に、俺もお弁当を持って外へ出る。


チラリと教室を出る直前に横目で小池の様子を伺うと、隣の席のクラスメイトと談笑しているようだった。


駆け足で中庭に行くと、すでにそこにはベンチに座っている早見くんの姿があった。


「早見くん早いなぁ、俺もすぐ走ってきたのに。」

「ちょっと早めに終わったから。」

「あれ?矢野くんは?」

「教室に置いてきた。」


早見くんは俺の問いかけに、そう答えてニヤリと笑った。ちょっとやんちゃな早見くんが見え隠れする。

そんな早見くんの態度に、矢野くん置いてきて良いのかなぁ、って思いつつ、2人なのがちょっと嬉しい。こんなこと言ったら矢野くんに申し訳ないけど。


クスリと笑いながら、早見くんにお弁当を差し出す。


「おう、サンキュー。トマト入ってる?」

「入ってる。」

「やった。」


嬉しそうにお弁当を広げる早見くんに思わず見惚れる。眼鏡の奥の、瞳を観察するのがクセになってるな。早見くんの目は綺麗だ。


「てか昨日咲田来なかっただろ。あいつに近付きたくないのはわかるけど俺を2人にすんなよなー。」


…耳が痛い。早見くんから不満そうに告げられる内容に、「ごめん」と謝ることしかできない。


「別に咲田に怒ってねえけど。今日はあいつが来たら冬真に相手してもらう。」

「…矢野くんには、なんて言ってここにきたの?」

「早退するって。」

「わあ、すごい嘘!」


思わず笑ってしまうと、早見くんも「昨日の仕返し」と言って笑った。


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