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「ねぇ、早見くんの連絡先教えてよ。」
きっと甘党なのだろう。よくあんな甘ったるい卵焼きをもぐもぐ食べれるな、と思って見ていると、小池くんは突然想の連絡先を聞いてきた。
「え、無理。」
「即答!!?」
俺には分かる…、これで勝手に想の連絡先教えたら暫く想に口聞いてもらえなくなる。
「小池くん、想は俺のラインも既読無視するようなやつだから連絡先知っても無駄だと思う。」
「はぁ…、そっか。………この難攻不落な感じ、たまんないなぁ。」
小池くんはそう言いながら、うっとりし始めた。………わー、こりゃ想も大変だぁ。
想が自分に落ちるまでなんとしてでも引き下がらなさそう。
「ねぇこのお弁当早見くんに渡しといてくれる?」
「…え、やめた方がいいって、卵焼き超まずかったし…」
………って、良かれと思って正直なこと言ってあげたらまた睨まれた。人の意見聞けよぉ。
「じゃあさ、小池くんはさ、この弁当想が食ってゲロマズ〜!って吐かれてもいいの?」
「僕が作ったお弁当まずいわけないじゃん。」
「……はぁ。小池くんもさー、けっこう頭あれだね。」
あれって言うのはあれだ、なんつーか、言葉には言い表せないけど痛いかんじのやつ。
って言ったものの、聞こえてないのか聞いてないふりでもしてるのか、無反応でお弁当を食べている。
「小池くーん、シカトでーすかー?」
小池くんからの反応を求めるために呼びかけると、小池くんはチラリと俺の方を見て、何も言わずに「はぁ。」とため息を吐いた。
「卵焼き一個でしかものを見れない矢野くん可哀想。」
「え、もしかして憐れまれてる?」
「この野菜炒めなんかカレー味で自信作なのに。」
そう言いながら小池くんは、箸で一掴みした野菜炒めを差し出してきた。
食えってこと?…嫌だな。
しかし嫌とも言えずまたパクリと野菜炒めを口に入れると、その瞬間口内に襲ってくる強烈なカレー粉味。
「キィェェエ〜!!!!!」
辛い!不味い!お茶飲みたい!いろんな感想を口に出さずに変な声が出た。
思わず教室で叫んでしまったから、教室で飯を食っていた奴らの視線が一斉に突き刺さる。
「…え、矢野どした…?」
「まずっ、茶ぁくれ!誰か!!!!!」
「…お、おう。」
ぐびぐび、隣の席のクラスメイトからお茶を貰ってがぶ飲みしていると、小池くんは真っ赤な顔で唇を噛んで俺を睨みつけていた。
いやいやそんな顔して睨まれても。
口で言ってわからねえなら、態度で分かってもらうしかねえだろ。
小池の作る弁当はまずい!!!
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